去る2月中旬に「第3回こども発表の日」をホールで開催しました。お家の人に見てもらうことを楽しみに、先生や友達と一緒に創ってきた表現遊びです。「これ、どう?」とポーズを考え、「こう言ってみたらどう?」と一人ひとりの思いを言葉にして伝えあい、イメージを共有しようとする5歳児サクラ組さん。先生の楽しい雰囲気に誘われ、まねっこしてニコニコ体を動かし舞い踊る1歳児クリ組さん。日々の暮らしの中から紡いできている遊びです。保護者の方は、VTRや写真撮影を遠慮してほしいという保育士の願いに寄り添って、温かい拍手とニコニコ顔で参観の時が流れました。
ひとつ大きくなって進級するこどもたち。26日には、「認可保育園 こども芸術大学 第2回卒園式」が挙行されます。園長のわたしも5歳児さんたちと共に卒園します。
「認可保育園 こども芸術大学」からの開設3年間を振り返ってみようと思います。
「瓜生山でこどもが笑う」- そんな保育園をと願い、先生と共に暮らしてきました。そして、自然と芸術に囲まれた伸びやかなこどものありのままを瓜生通信で伝えてきました。
芸術大学の中にある保育園で暮らしたからこそ、学生さんや先生方との出会いもいっぱいありました。2019年園長就任直後に情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコースの学生さんから、「働く」をテーマにしたインタビューを受けました。インタビューのことばがポスターになって、ずっとその作品に見守られて過ごしています。
2020年度からは、こども芸術学科からインターンシップや保育実習の学生さんの受け入れが始まりました。連携がしっかりと絆となってきています。初々しい学生さんとの出会いは、こどもたちも私たちも大きな学びです。
舞台芸術学科 学科長 平井愛子先生との出会いから有志の学生さんに、保育士が作った面を着けて鬼や福の神を演じてもらっています。瓜生山が野外舞台となり、おどろおどろしさが増して圧巻です。
一方で、だれもが予期していなかったコロナ禍に遭遇。その対策のひとつとして「あんしんお昼ご飯プロジェクト」をプロダクトデザイン学科の大江孝明先生に立ち上げてもらい、飛沫防止スタンドを作ってもらいました。作り手と使い手とで話し合い、作り手の思いを受け止め、使い続けていく知恵の対話が生まれました。
ちょうど昨年の今頃、映画学科の学生さんから短編映画「よごれ」の出演オファーが…。ドキドキしつつ、真剣な皆さんの情熱に巻き込まれて熱く演じきれました。生まれて初めての挑戦。届けてもらった短編映画「よごれ」の試写会を5歳児と共に、監督はじめスタッフの皆さんを招待して、こども芸術大学のホールで開催。それが縁で、今度は私たちを映画学科のある高原校舎に招いてもらいました。
出会った皆さんがさわやかで、純粋で情熱的です。保育園で暮らすこどもたちも、「文藝復興」を体現するような、こんな青年になってほしいと願っています。
瓜生山の四季とともに育んでいく保育は、こどもにとってかけがえのない心の原体験になっていきます。
「瓜生山 私の夢を聞いてくれますか?」
「いいよ 夢をきかせておくれ」
今、瓜生山が両手を大きく広げて「おいで」と…
投稿する機会をくださった皆さん、読んでくださっていた皆さん、本当にありがとうございます。ご縁に深く感謝して。(ペンを置きます)
認可保育園 こども芸術大学
初代園長 鍋島 惠美
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鍋島 惠美Emi Nabeshima
1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき