2月3日の節分。山から鬼が出てきそうなこの日。朝からこどもたちと先生が焼きイワシの頭に、山から届いたヒイラギの枝を刺して玄関にぶら下げました。焼きイワシのその匂いを鬼が嫌うらしいと聞いての作戦です。
4歳児ウメ組さんは、自分が作ったお面で変身して鬼を惑わせようとしています。1歳児クリ組さんや2歳児マツ組さんは、保育室の窓にいる鬼の面をめがけて「鬼は外!」と新聞紙を丸めた豆を当てて「やったー!」と退治した気分になっています。ところがーーー鬼が姿を現しました。「ぎゃー」と泣き出し、先生にしがみつく乳児さん。
窓越しに姿を現した鬼を追いかけて園庭に出てきた幼児さん。「ウォー」とこどもを睨みつける鬼に「鬼は外。鬼は外。福は内」と、声を奮い立たせて豆を投げつけていると、その豆の痛さに鬼がよろけて体を震わせ、山の方へ逃げるように帰って行きました。すると…。
シャランシャランという鈴の音と共に、水色の着物を着た誰かがやってきました。今までの騒動とは打って変わっての静けさに、こどもたちもシーンと静まり返り、その所作に吸い付けられるように見入っていました。なんと、その人は福の神様でした。みんなは鬼を退治して福の神が瓜生山にやってきたことに、ほっとしました。
その数日後の2月7日に、子育て講座「創作の時間」を実施しました。京都芸術大学の先生を講師に迎えて、親と子が一緒に活動する幼児クラスの講座で、年に3回実施しています。三密回避作戦としてLive配信の挑戦です。情報システム室の職員さんや講師の中山博喜先生に助けてもらい、オンライン会議システムのZoomを活用して開催しました。テーマは、「瓜生山ってどんな山?」。撮影用の大きなバック紙に、あらかじめ中山先生が撮影した写真が何枚か貼ってあります。そこからイメージを広げて、こどももおとなもクレパスで描いていきます。
そうして遊んだあとは、みんなで写真タイムです。
ぐんぐんと絵を描き、黙々と向き合うその姿から、中山先生も私たちおとなも互いに刺激を受ける、すがすがしい空気が流れていました。
「鬼が出てきたり、中山先生がパシャパシャとシャッターをきっていたかと思うと、こんなことを考えてたんだなぁ…。“瓜生山ってどんな山?”って照れちゃうなぁ…」と、頬を紅梅にして瓜生山が、はにかんでいます。
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鍋島 惠美Emi Nabeshima
1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき