REPORT2021.11.02

教育

教室が光り輝く海の世界に。― 京都芸術大学附属高等学校のねぶた制作

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  • 京都芸術大学 広報課

真っ暗な教室に響く、カウントダウンの声。「点灯!」の合図とともに、普段使っている教室が海の世界に様変わりしました。光り輝くねぶたに照らされた、京都芸術大学附属高等学校の生徒の顔に笑顔が浮かびます。

京都芸術大学の名物プログラムである「瓜生山ねぶた」を京都芸術大学附属高等学校の生徒たちにも体験してもらおうと、高校2.3年生を対象に高大連携科目として毎年ねぶた制作の授業が開講しています。指導を行うのは、ねぶた制作のプロフェッショナルである芸術教養センターの森岡厚次先生。加えて制作のサポートには、プロジェクト経験が豊富なLA(ラーニングアシスタント)の沖綾乃さん、澤山圭佑さん、坪久田千春さん、松田花さんの大学生4名が参加と頼もしい顔ぶれです!

瓜生山ねぶた

2007年度から始まった「瓜生山ねぶた」制作は、さまざまなワークショップに取り組む基礎力養成プログラム「マンデイプロジェクト」の集大成。8月末からの約2週間で、与えられたテーマをもとに考えた巨大なねぶたを制作する京都芸術大学の名物プログラムです。(撮影:吉見崚)

※(参考)泣いて笑って、最後はAll Right! 「瓜生山ねぶた2021」点灯式・表彰式
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/895

最初に受けるのは大学生からのオリエンテーション。進路選択に悩む高校生にとって現役大学生からの話はとても貴重です。ねぶた制作の話だけではなく、「大学生ってこんな感じ」をテーマに大学生活の紹介を行う時間もありました。


「瓜生山ねぶた」は青森市の伝統行事「青森ねぶた」を基礎とし、針金の線や和紙の表情を活かす表現に工夫を重ねて、あえて色彩を省いた白いねぶたとして独自の発展を遂げてきました。高校生たちは「瓜生山ねぶた」が発展してきた歴史を学び、ねぶたの制作に挑みます。


そしていよいよ制作テーマの発表!今年度のテーマは…「海の生き物」
新型コロナウィルス感染症の対策のため、今回は個人制作で学校机ほどのサイズのねぶたを制作することになりました。
事前課題として、一人ひとりが作りたいと思う海の生物のデザイン画を起こす宿題が与えられ、なぜそれを作りたいのか、何を気に入っているのかを考えて宿題を提出しました。

後日返却された宿題をみてびっくり。一人ひとりのデザインシートには大学生からの丁寧なアドバイスが!「書いてくれている作り方のイメージで大丈夫!完璧です!」「針金を曲げるときはマークを付けるとやりやすいよ」などなどねぶたの作り方に対するアドバイスはもちろん、それぞれが選んだモチーフについてのコメントも。「なまこのねぶた…無気力な感じが良い!出来上がりが楽しみ」「あざらしのぷっくり感かわいいよね。私もあざらしのぬいぐるみを持っています」。高校生は大学生からの思いもよらぬお返事を楽しそうに読みふけっていました。

一人ひとりに書かれたアドバイスは嬉しいですね。
作り方を図示してくれています。


ねぶた制作の授業が行われたのは2021年9月6日(月)~2021年9月14日(火)。たった6日間でねぶたを仕上げます。作業は針金制作→和紙貼り→柄制作の順番で進み、各段階では森岡先生や大学生からレクチャーが行われます。

スライドで図示。わかりやすいです!
実演を交えながら説明します。


まずは針金を切る作業から。実はこれが結構な力が必要なのです。最初は針金を切るのにもひと苦労でしたが、ペンチを使うコツを習得して、だんだんとスムーズに切れるようになりました。
針金を切った後は、タコ糸で針金をつなげながら生き物の形に近づけていきます。やわらかな曲線で表現するところが多く、形作るのが難しいところもありましたが、大学生から個別にアドバイスを受けながら進めます。


和紙貼りの段階では高校生のみなさんの器用さに驚きました。面に合わせて紙を切って、針金に紙を貼る時の顔つきは真剣そのもの。面にぴったりと和紙が合わさり、だんだんねぶたらしくなっていきます。
「瓜生山ねぶた」は色を使わない真っ白なねぶたであることが特徴ですが、京都芸術大学附属高等学校で作るねぶたは色とりどり。折り紙を使って模様をつけたり、中には自発的にアクリルガッシュを持参して表情を描いた生徒もいました。


実はこのねぶたは本来文化祭で点灯・展示することを目標に制作していました。しかし、京都府内における新型コロナウィルス感染症拡大の状況を踏まえ、残念ながら文化祭は延期に。点灯も見送られるものと思われましたが、出来上がった素晴らしいねぶたたちをなんとかお披露目しようと、森岡先生と大学生が教室を展示室にして点灯式を開催してくれました。青や緑のイルミネーションを使って装飾された教室に海の生き物が展示され、まるで教室は海の中のよう。それぞれ個人で作っていたねぶたが、一つの大きなインスタレーション作品に生まれ変わりました!

ねぶたを制作した生徒は、「ねぶた点灯式後、教室で作っていた自分の作品と違って見えて、とても綺麗でした。文化祭が延期になって作品展示が出来なくなったのは残念だったけど、こういった形で作品を完成させることができて良かったと思います」と嬉しそうに語ります。

お、お寿司…!
くらげやイカが空間を漂います。
勢いを感じさせるお魚も。
ぽてっとしたフグがかわいらしい。


空間演出デザイン学科3年生の松田花さんは“せっかくねぶたの授業を選択してくれたのだから絶対楽しい6日間にしたい!”と思い、積極的に高校生とコミュニケーションをとり、みんなが楽しく制作ができる空気づくりを心がけたとか。

制作をサポートする松田花さん。

「高校生のみんなが日を重ねるごとに自分の作るねぶたに対して愛着を持って、積極的に質問をしたり、丁寧に作ってくれるようになったことがとても嬉しかったです。すれ違った時には、“あ!”と気づいて手を振ってくれる子がいたりもして、“可愛すぎる…!”なんて思ったりしていました」と嬉しそうに高校生との時間をふり返る松田さん。頑張っている高校生を見て素敵な展示空間をつくりあげたいと思いました。
「イルミネーションプロジェクトで使用していた青と緑の電飾を借りて、海の中を再現した展示空間にしました。点灯式では高校生のみんなが笑顔になって、自分のねぶたや友達のねぶたの写真をたくさん撮ってくれていて本当に嬉しかったです。みんなが“私、こんなこともできるんや!”と思うことができた6日間になっていたらいいなと思います」と語ります。

 

一人ひとりが思い思いにつくった海の生き物。一つの空間に集合することで、より個性が輝くようでした。授業時間だけでなく、休み時間や残って一生懸命にねぶたを制作していた高校生のみなさんの姿が印象的です。学園祭での一般公開は叶いませんでしたが、瓜生通信でこの海の世界をお届けできれば幸いです。

 

★京都芸術大学附属高等学校公式HP
https://shs.kyoto-art.ac.jp/

 

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