葉月。セミの鳴き声を聴き木立の葉から透ける日差しを浴びて、プールや水遊びが始まりました。自然の中で楽しめる水遊び、日を重ねるごとに、こころとからだがひらかれていくときを、こども一人ひとりの表情と動きから感じています。
園庭テラスのプール(乳児用)はそのクラスの先生が、屋上テラスのプール(幼児用)は朝7時出勤の先生が、気温25度以上水温22度以上その差が5度以内の検温に、危険なものがないかをしっかり確かめて水張りをしています。さらに、入る直前には安全な濃度で消毒液を混ぜての衛生管理や、先生が必ず一人は絶えず監視をして、安全なプール遊びを楽しんでいます。
お山の畑では、梅雨期に植えた夏野菜の収穫が始まっています。「園長先生、どうぞ」と、今日は、収穫したての太陽の光を感じるミニトマトをごちそうになりました。届けてくれた子どもたちの頬は、山道を歩いて水やりをしてきた暑さがみなぎっています。
1歳児クリ組さんは、保育室の身近なテラスにプランターで夏野菜を育てています。お部屋から、そのままテラスに誘うようにゴザが敷かれています。「あっ、あっ」と、指さす先には、大きなキュウリが実っています。先生と一緒に収穫を喜んで、そして「クリ組です。お料理してください」と、お隣の給食室までもっていきます。2歳児になると、自分たちで育てた喜びは大きいようです。手にしたとき、触って重さや大きさを感じ、匂いをかいで、食べて、味わうときの表情は見ているこちらまで一緒に食しているような感覚になります。
さてさて、断続的な大雨が降るこの頃です。雨の勢いで園庭から土がテラスに流れています。大学の施設課の方にもお世話になり、安全管理に気を付けつつ、瓜生山の自然とともに暮らしています。
大雨の後の朝、園庭からテラスに流れ落ちた土をお山に返そうとしていると、5歳児サクラ組さんから「なにしてるの」と声がかかり、早速手伝ってもらうことにしました。「わかった!!」と出てきた彼らは、私が使っている掃除道具と同じものを手にとってお手伝いを始めました。ところがそのうち、それらの道具を彼らなりの思いで使い始めました。大人用のちり取りを手にしていたKちゃんは、ちり取りをショベルカーに変身。箒を手にしたYちゃんは「オーライ、オーライ」と誘導係に。しゃがんだSちゃんは、とがった枝を使ってテラスの床の隙間に詰まった土を取り除く係。水が流れるようにきれいに土を取り除くと、その隙間から下を覗くことができる楽しみがあります。こどもたちは何でも遊びにして没頭していきます。そんなこどもと一緒にいると心も体も軽やかになり楽しいです。
大雨が続く中、瓜生山から「守ってやるよ」と頼もしい声が聞こえきます。
追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、8月号に掲載したものに加筆修正をしています。
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鍋島 惠美Emi Nabeshima
1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき