ゴールデンウィーク明け、子どもと先生たちによる夏野菜の栽培が、山にある畑で始まりました。新しい土や腐葉土を山の畑まで運んで、混ぜ込んで、耕運機の力も借りて、掘り起こされる土の柔らかさやふわふわ感を心ゆくまま味わった後に、苗を植えつけました。日ごとに生長する姿を友達や先生と一緒に見守って育てていきます。楽しみにしているのは、私たちのほかにも山に住む生き物たちがいます。作物(実)をめぐる攻防、両者の知恵比べがこれから展開していきます。
園舎のある未来館東側のベランダでは、5歳児サクラ組さんが、昨年度のサクラ組さんがやっていたように、“田んぼづくり”に挑戦しようとしています。昨年度より一歩進んで、籾種(もみたね)を土に入れたものと水に浸したペーパーの上にのせたものとの生長の違いを比べています。その生長の様子を絵で表現して記録しています。それが面白い! その芽の出方だけでなく、そこに水をやる如雨露(じょうろ)や“わたし”自身の姿も描いているのです。その時の心情がジンジンと伝わってきます。
もちろん土づくりも始めます。昨年度の田んぼの古い土をふるいにかけてサラサラにして、その感触もたっぷりお尻と足で味わって、次は新しく買った土と混ぜて調合します。それから水を入れてかき混ぜて…、腕も足もおまけに顔まで、そのおいしい土をつけて大奮闘です。
やっとできた田んぼの土を一人ひとりのバケツに入れて、そこが“My 田んぼ”となります。育てた苗と先生が育てた苗とを使って田植えが始まりました。さてさてどんな育ちやハプニング、発見や驚きが始まっていくのでしょうか…。ワクワクドキドキします。
先月(皐月)、雨の降るなか瓜生山荘から出てきた宝物(不要となった器)をいただいてきました。こどもの遊び心を誘う花器はさっそく山の花を活けて床の間に飾りました。湯のみ茶碗や小鉢や小皿は、5歳児サクラ組さんのままごとに使うことにしました。ほんまもんの食器を使ってのままごと遊びです。手触りや重みを感じて食事の盛り付けをしてほしいと思います。みんなの楽しみが増えました。
もう一つのいただき物も活かされています。それは、併設校である京都芸術大学 大学院の学生さんが昨年度の修了展に使用されていた少々粗目の"真砂土(まさつち)”です。膨大な量の真砂土を未来館の1階から同館4階の園内まで自力で運びました。山の畑のそばに"園長秘密プロジェクト”と称してコツコツ始めていた「木陰の砂場づくり」にもその土を入れることにしました。これは、さすがに自力では難しく、大学の施設課の方に頼んで軽トラックで5往復もかけて運んでもらいました。畑の粘土質の土とは感触が違い、遊びつつその違いを感じて選んで遊び始めています。造っては遊び造っては遊びの連続性…、楽しみのひとつです。
植物が生長する季節、遊びが豊かになる季節。瓜生山から「がんばれ」とエールが響いてきます。
追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、6月号に掲載したものに加筆修正をしています。
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鍋島 惠美Emi Nabeshima
1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき