瓜生山に春が訪れています。桜の花が咲き春雨とともに花びらが舞い落ちて、ツツジのつぼみが膨らみ始めています。鳥のさえずりが天高くこだましてきます。
認可保育園こども芸術大学となって、はじめての卒園式を3月27日土曜日に挙行し、8名のにこやかで誇らしげなこどもたちを小学校へと送り出しました。
感慨深くしっとりとした”こころもち”に浸るのもつかの間、保護者の皆さんに休園を協力していただき、3月30日と31日は新年度の準備です。職員会議をしたのち、先生たちは保育室の環境を工夫して整えたり、一人ひとりのこどもの顔を想いうかべ、名前のシールを靴箱やロッカーに丁寧に貼ったりと大忙しです。
シールにもこだわりがあります。5歳児クラスのこどもたちが自分の顔を鏡に映し見つめて描いた自画像を描き、先生がシールに加工します。これは、前身のこども芸術大学から引き継いだ文化のひとつです。毎日持ち物を片づけるときに、これからずっと自分の顔に向き合っていきます。
新年度が始まるのに合わせて、こども芸術学科の有志の学生さんが、絵本を置いてあるコーナーの環境作りに挑戦してくれました。たくさんある絵本と本棚を、こどもが好きな絵本を選んで読めるようにと、知恵を絞ってくれました。
そして迎えた4月1日。令和3年度入園式と始業式です。みんなピカピカの顔でやってきました。進級したこどもたちは、ひとつ大きくなって憧れていた新しい保育室に、にこにこ顔と共にやや緊張した様子です。
5歳児クラスには“さくら”、4歳児クラスには“うめ”、3歳児クラスには“もみじ”、2歳児クラスには“まつ”のクラスサインを印刷した園長手作りの「進級おめでとうカード」が一人ひとりに渡されます。こどもたちはここでもにっこり。新しい風が瓜生山に流れ始めています。
4月1日は保育室も先生も変わり、ひとつ大きくなって迎える朝です。5歳児として初めて登園したこどもたちが、その部屋の新しい様子に気づき、お家ごっこが展開されました。その遊びからパーティ―へと発想が広がり、園長は進級おめでとうのカードをもって寄せてもらいました。
新たに入園した2歳児さんは、朝方お母さんと離れるのが悲しくて泣いていましたが、初めてのお庭でちゃんと遊びを見つけています。
新年度を迎えた保育室は、ままごと遊びのお道具はどこに置こうか、窓辺におもちゃの家を置いたらごっこ遊びが楽しめるかな?玩具はジャンルごとに分けて、こどもたちが好きな遊びが選べて楽しめるようにしたいなあ。また、こどもたちが落ち着いて遊べるように美しい布を天蓋風に吊るして天井を低くしたり。そんなふうに先生たちはいろいろと保育室環境を工夫をしました。
その整えられた保育室の一つからは、まだ保育園に慣れていない1歳児クラスのこどもたちのいっぱいの泣き声が響いています。
お向かいにある京都文化日本語学校は、さぞかしうるさかろうと恐縮していると、校長先生が、「元気な声が聞こえてきますね」と、にこやかに受け止めてくださり、ありがたいなあ…。
こうしていつも学園の皆さんに見守られていることに感謝です。
追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、4月号に掲載したものに加筆修正をしています。
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鍋島 惠美Emi Nabeshima
1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき