COLUMN2021.02.26

京都教育

如月 つながる季節 ― 瓜生山でこどもが笑う#4

edited by
  • 鍋島 惠美

 如月。節分の日には、大豆を食べて厄払いをして、鬼が嫌うサンマの頭を、山で採ったヒイラギに刺して玄関に飾ります。ところが、その日には山から鬼が出てきそうです。こどもが投げる豆に逃げていくのでしょうか。そして、福の神は来てくれるでしょうか。ぞくぞくします。

山で採ったヒイラギにサンマの頭を刺して飾りました

 そして当日。「うぉー」とおどろおどろしい声が山に響き渡りました。その声と姿を見つけた4歳児ウメ組と5歳児サクラ組のこどもたちは、一瞬身を引くものの、次にはなんと豆を手に、投げ始めたではありませんか。鬼も負けていません。豆が当たってたじろぐも、園庭からこちらを見据えて威嚇をしてきます。「先生、豆投げて」と、自分の豆を手渡し先生の後ろにしっかり隠れて退治しようとする3歳児モミジ組のこどもと、そのこどもの願いを受け止めた先生が果敢に鬼と対峙して豆を投げつけます。鬼は「うおー、うおおー」と、こちらを威嚇をし続けます。しかし、当たった豆が痛かったとみえて、身をくねくねねじらせつつ山へと帰って行きました。

おどろおどろしい声をあげながら現れた鬼たち
豆を片手に闘う園児たち

 その姿を見据えて行方を追っていると、鬼が帰っていった反対側、南南東の方から、シャラシャラシャラという響きとともに、美しい姿の人物が現れました。一瞬にしてこどもたちの表情が和らいだかと思うと、その人は「わたしは福の神。これをどうぞ」と、手にしていたきれいな袋をこどもに手渡し「福豆ですよ。これを食べたら、幸せになりますよ」と伝えて静やかにふくよかな笑顔で手を振って帰っていきました。本当はみんなに分けていただきたいところですが、誤飲事故防止のため4、5歳児ウメ組とサクラ組で数え年の数だけ、一粒一粒ポリポリとみんなで食べました。

福の神がやって来るとこどもたちに笑顔が戻りました

 1、2、3歳児クラスのこどもは、大豆の煮豆を頂きました。給食も節分にちなんだメニューで、恵方巻とイワシのかば焼きです。それも4、5歳児クラスのこどもは自分たちで焼きのりにご飯をのせてクルクル巻いて“My 恵方巻”を食べます。給食室の職員の力も借りての挑戦です。

手伝ってもらいながら“My 恵方巻”を作ります

 

 2021年。With コロナの新たな生活様式のなかで、厄払いをして元気に、こどもと共に私たちも、そして学園の皆さんも瓜生山に守られて過ごすことができることでしょう。
さてさて、山へ帰っていった鬼さんや福の神さんは、定期テストも済んでほっと一息。大学内の舞台芸術学科で安堵して暮らしているかもしれません。

 

 さて、新しい道具のお目見えです。芸術大学ならではの市販品ではない学生さんの手作りで「感染防止スタンド」ができないものかと思案しました。昨年度、創作の時間でお会いしたプロダクトデザイン学科の大江孝明先生に相談したところ、「あんしんお昼ご飯プロジェクト」が有志の学生さんたちと立ち上がりました。何度も試作を重ねて、こどもの使う様子を観察しながら完成しました。はじめはこどもが扱うには難しいかと思いましたが、収納するスタンドも作っていただき、こどもたちに出し入れの仕方も丁寧に教えていただいたおかげで、次の日から自分たちでしっかりと取り扱えるようになりました。そして、ニコニコあんしんお昼ご飯をいただいています。

新しい道具がやってきました
うまくはめられるかな
プロダクトデザイン学科のお兄さん、お姉さんに扱い方を教えてもらいます
ニコニコあんしんお昼ご飯をいただきます

 

 2月13日は、第2回「こども発表の日」です。秋の「親子運動の日」や「こども造形展」と同様に、保育の中でこどもと先生が一緒に楽しんで遊んで創ってきた表現活動を、おうちの皆さんに観てもらいます。コロナ下での開催ですので、去年とは違ってクラスごとの発表を楽しんでいただきます。絵本や日々の生活で楽しんできたイメージの世界を紡いだお話づくりや、歌声が響いています。さてさてどんな一日になるのか今から楽しみです。瓜生山も毎日ニコニコと見守って楽しんでいます。


 いま、瓜生山には、こどもの知恵や工夫が響きわたっています。

 

追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、2月号に掲載したものに加筆修正をしています。

 

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  • 鍋島 惠美Emi Nabeshima

    1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき

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