COLUMN2021.01.13

京都教育

睦月 つながる季節 ― 瓜生山でこどもが笑う#3

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  • 鍋島 惠美

 お正月を前に、師走の22日から保育室や事務室などの大掃除が始まりました。自分のロッカーや遊んだものは、こどももおとなも自分できれいに片付けて、すっきりしています。また、山の柿を苦心して5歳児サクラ組が採って、4歳児ウメ組も一緒に干し柿づくりに挑戦。お正月の鏡餅のお飾りになるようです。ウラジロやユズリハは、山で採ってきます。玄関を飾るしめ縄も作ります。5歳児が試行錯誤しつつ田植えに挑戦して、霜月になってから収穫した一握りの米粒を瓶に入れて棒で突いて脱穀。手間暇かけたお米は今も食べずに飾っていますが、その藁を使ってしめ縄づくりに挑戦。初めてで何度も藁が切れてなかなかうまくいかなかったようでしたが、諦めることなく、何とか形になってウラジロにユズリハに植木鉢に実った小さなユズをあしらえて完成。

ウラジロやユズリハはお山から、藁は田植えから挑戦した手作りのしめ縄

 西と東の入り口に、2020年12月28日保育終了の日に飾りました。瓜生山の園庭や北白川通に面したお地蔵さんたちにも「守ってくれてありがとう」と、お水やお花を新しく替えてお参りをしました。こうして瓜生山も気持ちよく新しい年を迎えました。

 

 2021年1月4日月曜日。今日から新しい年の保育が始まります。

 朝に届いたお鏡餅に、さっそく年末に用意しておいたお飾りを、幼児クラスのこども達と一緒に床の間に供えました。「どうぞ年神様、食べてくださいね」と、先生たちと一緒になって畳に正座して神妙に手を合わせて頭を下げていました。さてさて本当にしめ縄飾りに誘われて、年神様は鏡餅までたどり着いてきてくれるでしょうか…鏡開きが楽しみです。

先生と一緒に本を見て確かめ、鏡餅を設えていきます
お鏡餅にのせる干し柿は、5歳児サクラ組と4歳児ウメ組が一緒に作りました
餅花もこどもたちで作ります
お鼻にちょこんと粉がつきました
床の間飾りの出来上がり

 年末年始は保育園の先生たちにとって、安心してゆっくりとお休みできる時です。

 年が明けて出会うごとに、「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」と、先生方と新年のあいさつを交わす気持ちの良い時を迎えます。皆さん元気ににこやかに出勤、何よりで一安心です。

 年末には落ち葉でいっぱいだった園庭周囲が美しく掃き清められています。その続きを2歳児マツ組のこどもがしています。さらに、事務の方も加勢してみんなでさっぱりと美しい環境でスタートです。気持ち良く新年をスタートしたい思いの輪が広がるあたたかさをジンジンと感じます。

 
 そして昼食を一緒に幼児クラスで頂いていると、食べ終えた5歳児の男の子が「エビ鉄砲!エビ鉄砲!」と、両手にエビらしき作り物を持ち、銃を打つかのように突進しています。その様子を眺めていると、お片づけの時間になりました。すると、その男の子が重箱らしき折の中に今までの動きとは打って変って、丁寧に手にしたエビを詰めるしぐさと「おせち」という言葉が聞こえてきました。うむっ?! 「お・せ・ち」とその言葉の先を見に行くとびっくりです。そのお重の中身は、まぎれもないおせちでした。なんとフェルトで作られた品々です。

保育士の先生お手製のフェルトで作られたおせち

 こどももおとなも、おせち料理という日本文化に遊びの中で触れることができるのは素晴らしいですね。

 一方、松組のクラスサインに、ちょこんと乗っている「だるま」。そのおなかに「福」と書かれ、頭には角がついた折り紙作品。保護者が目にするところにも、さりげなくちょこんと置かれています。とてもユーモラスで、ついつい微笑んでしまいます。お休みの間にこどものことを思い浮かべつつ、先生たちが手作りのものをこうして保育の中に持ち込んで、新年からこどもの遊び心を誘い、おとなにもあたたかさと驚きをもたらしてくれています。

だるまのおなかには「福」や「丑」(フェルトのおせちの上に置かれただるま)と書かれた文字

きっと、それを見守る瓜生山も新年早々ニコニコしていることでしょう。

 

追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、1月号に掲載したものに加筆修正をしています。

 

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  • 鍋島 惠美Emi Nabeshima

    1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき

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