COLUMN2020.11.20

京都教育

霜月 挑戦する季節 ― 瓜生山でこどもが笑う#1

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  • 鍋島 惠美

 10月17日に雨の中「第2回 親子運動の日(運動会)」が大学講堂で開催されました。前日まで、あの広い講堂で活動する場所や応援席、保護者席の配置など、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じ、当日を迎えました。

直心塔

 先生たちは、「親子運動の日」と書かれた看板を正面の本部席の上に掲げていましたが、それがあることで直心塔が隠れてしまいました。2019年に私はここへ初めて足を踏み入れた時、正面のガラス窓から直心塔が目に飛び込んだ瞬間の神聖さ、こどもたちが走る後ろに映る塔の美しさに感動したことを忘れられません。この思いをぜひとも皆さんに味わってほしい、との願いを先生たちに伝えました。先生たちにとっては、これで完成と思っていた矢先の願いです。私の迫力に負けたのか、何も言わずに手際よく出入り口の方に掲げ直してくれました。この時の私の熱き思いは、きっと開学記念日イベントの折の直心塔にまつわるお話の中で伝わったことでしょう。

 さて、開場の時間が迫り、私たちみんなはドキドキしてこどもと保護者の皆さんを待ちました。初めての場所に、傘をさしているにもかかわらず、親子でにこやかに「おはようごさいます」と来られ、出迎える毎にありがたく、うれしくて心弾みました。

 今年は、密を避けてプログラムを2部構成にすることにしました。

 乳児の部。「これからはじめます」と、2歳児マツ組さんのかわいい開会宣言。こどもがリズムにのって、いつもと同じように舞い踊る表現におとなも誘われ、こころとからだが開かれていく瞬間は、とても微笑ましく美しい時でした。朝、泣いていたこどもが、困っている友達にとっさに手を貸し、そのあとの二人の呼応に、観ているみんなが暖かくほのぼのとしました。

 そして、幼児の部。「これから親子運動の日を始めます」と、5歳児サクラ組さんの一味違う開会宣言。出てきたこどもの並び方や声から、ドキドキ感と頑張る気持ちが伝わってきます。

親子運動の日(2020年撮影)

 日々こどもたちがどんなふうに遊んでいるのか、この日はおとなの皆さんと一緒に楽しみたいと、こどもと先生が考えた運動的な活動に挑戦です。こどもひとり一人の挑戦におとなが重なって、より楽しく難しい技に深化するも、ユーモラスな表現や自由に挑む姿に、その子らしさが溢れました。

2019年度撮影

 4、5歳児のリレーは、ひとり一人の走る勢いと表情から、頑張りや恥ずかしさが伝わり、思わず「がんばれ!」と叫びたくなるのを、拍手とからだのアクションの大きさに託してエールを送りました。

 

 さて月が替わり11月。瓜生山から肌にひんやりした風が流れる季節になりました。山の木々の紅葉が、空に近いところから始まっています。日に日に山の彩りが変化していきます。こころとからだが開放されて、挑む力をますますつけていくにふさわしい季節です。

 3歳児モミジ組さんは、忍者になって次々必要なものを身につけて山に入っていきます。出会う学生のお兄さんお姉さんから、そのいでたちや所作に思わず声をかけてもらい、ますます忍者になっていきます。さらに進むと造園職人さんが剪定したモミジの枝をドッサリ運んでいる姿に遭遇。「かわいそう なんで切るの」と、モミジ組のこどもたちの目がとまる。すると、「みんなも散髪するやろ?モミジの木も散髪しただけやしな、大丈夫だよ」と。こどもも納得して安心してさらに進んでいきました。こどもの心に響くよう、うまい塩梅に話されたものです。

瓜生山で自然に触れるこどもたち

 いいですね…この山の木々とともに、いろんな世代のいろんな立場の人と出会い、見守られ、育ちあっています。瓜生山の懐の深さを感じています。

 

追記:毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、11月号に掲載したものに加筆修正をしています。

 

認可保育園 こども芸術大学 園長 鍋島惠美

 

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  • 鍋島 惠美Emi Nabeshima

    1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき

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