COLUMN2020.12.17

京都教育

師走 挑戦する季節 ― 瓜生山でこどもが笑う#2

edited by
  • 鍋島 惠美

 瓜生山が美しい紅葉を迎える季節になりました。園長室の窓から見上げると、日に日に紅く染まるモミジや満開の真っ白なサザンカの花が目に飛び込んできます。赤に白に緑と自然の彩りが、クリスマスカラーのようです。ひょっとすると、サンタクロースがこっそり夜にのぞき込んでいるかしら…?!と。

紅く染まるモミジ
真っ白なサザンカの花

 

 先日、学生さんとサイアノタイププリント(日光写真)でつくった“青い鳥”を園庭の木々に飛ばしました。夕日に照らされると、さぞかし美しいだろうという園長の企てです。

それに気づいた5歳児がやってきて、「青い鳥や!あそこにいるやつやなぁ」と。あそことはどこなのかしら…と思いきや、それは保育室内に飾っている大きな日本画です。2005年の「こども芸術大学」設立時に、瓜生山学園前理事長であり初代校長徳山詳直先生の願いを受けて、本学美術工芸学科日本画コース教授の松生歩先生が描かれた「青い鳥」です。

 

松生歩作《青い鳥》

“本物”をこどもの暮らしの身近な中に取り込み、こどもが“本物”に触れることを大事にしたいという熱い思いから、認可保育園になってもこの絵を飾りたいと移設を懇願して実現できたものです。2年間ここで暮らす中で、こどもたちが目にして体やこころを通して“本物”を感じる心を培っている、と実感した瞬間でした。「素晴らしい!!」と、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。

 

 さて、師走初日から5日間「第2回こども造形展」をホールで開催しました。

第2回こども造形展

日頃の保育の中で生み出されたこどもの造形活動、ひとり一人のあるがままの表現を、観る人が十分に感じて味わってもらえるように、先生たちが趣向を凝らして美しくホールに飾り展示していきました。先生たちの個性が光る瞬間です。一人の個性がもう一人の個性と重なり多様性を生み、より良い工夫が生まれていきました。その努力は、ご覧いただいた保護者や大学関係者のみなさんにしっかりと受け止められ、いただいた“気づきコメント”にもそのことが反映されていました。先生たちひとり一人の努力が実り、みんなの心が高まるありがたく、うれしい時となりました。

一方、当のこどもたちは、自分がつくったものにはひとしおに愛着があり、お父さんやお母さんに見せたくて仕方がなかったようです。そして、見てもらえたことが一番うれしかったようで、こどもたちにとっても幸せな時間が流れました。

 

 今日も肌に寒さを感じつつ、太陽の光が射す園庭では、切り株に石と枯葉を使ってレンジをつくり、その上にフライパンにまつぼっくりをいっぱい入れて、太めの枝をヘラにしてぐるぐるかき混ぜながら、ごちそうづくりが始まっています。使わなくなった台所用品や自然物を使っての遊びです。うまく見立ててとり合わせていくものです。

お山の畑では、夏野菜収穫後はなかなか冬野菜まで手が及ばず、硬くなった土を掘って水をためたり、丸めるのにいい塩梅の土を見つけて泥団子をつくったり、掘り返して出てくる石を採集して偶然に割れた面の色や光具合に不思議を発見したりと土と水と石を遊びの素材にして没頭しています。その傍らで、草の生えたプランターの手入れをしつつ、春の花やチューリップの球根を、こどもたちが一つ大きくなって進級するころに咲くのを楽しみに、こどもたちや先生と一緒に植えました。植え終わって片づけていると、「園長先生、滑り台見るか!」と、2歳児さんに声をかけられました。「うん、見たい!どこどこ?」とついて行くことにしました。発見!!山の斜面がつるつるに光っている一角。キャーキャーと滑っては上り、滑っては上り、楽しそうです。「あーあ残念。今度は私もジーンズをはいて挑戦しようっと」。

 

フェンスの先を眺めるこどもたち
石が割れた面の色や光具合に不思議を感じる
山の斜面すべりを楽しみます
思わず笑顔


 いま、瓜生山には、こどもの知恵や工夫が響きわたっています。

 

追記: 毎月発行する園だよりに「瓜生山でこどもが笑う」と題して、園長の気づきや思いを綴っています。この文章は、12月号に掲載したものに加筆修正をしています。

 

 

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  • 鍋島 惠美Emi Nabeshima

    1951年京都に生まれる。1974年京都教育大学幼児教育科卒業、西宮市立幼稚園に勤務。1976年神戸市立「聞こえとことばの教室」に勤務。言葉の発達に困りを抱えるこどもの治療保育に携わる。1979年京都教育大学附属幼稚園勤務。2003年京都教育大学大学院修了。泥だんご学会創設者・加用文男教授のもとで学ぶ。その間「ニューヨークこどものくに幼稚園」で研修する。2012年京都教育大学附属幼稚園定年退職。2014年縁あって、京都光華女子大学で保育者になりたい女子学生とともに学びあう。また臨床発達心理士として、京都市保育園連盟の巡回相談に携わる。2019年またまた縁あって、認可保育園こども芸術大学の園長になり、こどもたちと暮らしている。幼稚園で務めていたころから、実践記録をこどもたちと一緒に絵本にして遊んでいる。夢だった実践の絵本創りに、これまた縁あって旧京都造形芸術大学の卒業生の友達に絵を描いてもらい絵本を創る。『こえをかじったネズミ』ぶん:なべしま えみ、え: きんばら きみずき

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