18歳-96歳。日本全国+海外で学ぶ社会人学生。
日本全国そして海外で18歳から96歳まで、多地域・多世代の方々が集う通信教育課程。大学では約7,500名、大学院では約220名の方々が集い、仕事や家事といった日々の暮らしと両立しながら、数多くの社会人学生が学んでいらっしゃいます(2020年5月現在)。
今回は、美術科洋画コース2013年度卒業生の石川清幸さんに、入学したきっかけや在学時のエピソード、卒業から約6年経った現在の様子をお聞きしました。
定年を前に、一度はあきらめた芸大進学への夢を叶えるべく本学へ。
― 洋画コースに入学したきっかけは?
本当は、地元の高校に通っているときにも芸術大学への進学を考えて、ギリギリまで悩んでいたんです。悩んだ結果、芸術大学に進学したとしても、卒業後に職業として画家になれるだろうかという迷いがあり進学を諦め、高校卒業後は地元から通える信用金庫への就職を決めました。
仕事をしながらも、絵を描くことはずっと好きでしたので、自分で道具を買って制作していました。定年を前に、通信制という形でこの年齢からでも学び直せると知り、これだと思ったんです。
なんでもない日常の風景も、
自分の創造力を加えることで作品にできる。
― 実際に入学した直後の感想は?
入学すると、同年代の団塊世代の方もたくさんいて。様々な出会いに元気をもらい、新たな生きがいを手にできて励みになりました。60歳で迎える大学進学に、妻も喜んで応援してくれました。
ただ、いざ学びはじめると、絵画教室のように “楽しんで描く” だけではない難しさに直面しました。「絵が真面目すぎる」と指摘を受け、どうすればいいのだろうと悩んだことも。生まれて初めての抽象画など、柔軟な発想や創造力が求められる課題に四苦八苦しましたが、一方で新鮮な魅力を感じました。それまでは、見て感動したものだけが絵になると思っていましたが、なんでもない日常の風景も、自分の創造力を加えることで作品にできるんだと気が付きました。パワフルで個性的なクラスメイトにも刺激され、少しずつ、絵に対する考え方が自由になっていきました。
学ぶことで考え方が自由になる。
その変化は作品にも表れていく。
― 特に印象に残った授業は?
共通科目の「構想デッサン」です。お題は新聞を貼り合わせた大画面で “曲” を絵にすること。先生が「大胆だね」とおっしゃるほど、のびのび自由に描けて楽しかったですね。
そして、やはり最後に取り組んだ「卒業制作」ですね。卒業制作では、庭に咲いた桜の絵を描くうちにいろんなものが見えてきて。ひたすら想うがまま筆を重ねていくと、いつしか桜は消え、キャンバスに生まれたのは無限の宇宙でした。決して大満足の出来ではありませんが、気に入らなければ思いきって変えればいい、それができる洋画の良さをあらためて感じました。先生にも “絵が変わったね” と言われたりしました。
今のレベルよりもう一歩上へ。
卒業後も、描き続ける。
― 卒業後はどのように過ごされていますか?
卒業を迎え、6年間の学びの成果を「卒業報告展」として2014年7月に地元愛知県安城市で開催しました。個展をしても見てもらえる人が少ないのでは残念という想いもあり、新聞社へも積極的なPRを行いました。載せてもらえれば非常に幸運だと思っていましたが、定年退職して、通信制の大学に進学・卒業したのちに展示をすることが注目を集め、「面白い」と地元新聞で取り上げてくれました。その新聞を見てきてくださった方も多く、展示は大盛況となりました。
気持ちが続く限り、
絵を描き続け、夢を追い続けたい。
― これからの目標はありますか?
来年7月初旬に刈谷市美術館で個展を開催する予定です。私としては、人生最大のビッグイベント。今は個展に向けて制作を頑張っています。個展では、大型サイズで造形絵画と具象絵画の両方を展示予定。大学で抽象絵画・造形絵画の教えを受けたことをきっかけに、新しい自分の形を今でも模索しています。
また、卒業後に安城文化協会の副会長(美術部門代表)に就き、5年ほど経過しました。文化協会主催の諸行事、美術展、公募展運営協議会など、半公共的な事業の企画・運営に携わっています。自分が絵を描く活動の一方で、後進を育てていく、グループをまとめていく、そういう底辺づくりをしていかなくてはとも考えています。
実生活では妻と実母との3人暮らしで、実母の介護と畑の草取りや剪定に明け暮れ、孫4人がいつも出入りする日々。とても多忙な72歳ですが、これからも気持ちが続く限り、絵を描き続け、夢を見続けていきたいです。
洋画コース|学科・コース紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/painting/
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