「大人になって、こんなにも胸が躍る日々に出会えるとは」 卒業の喜びを分かち合う― 2026年度 京都芸術大学 秋季学位授与式・卒業式のご報告
- 出射 優希
2026年10月12日(月・祝)、一段と秋めく空気に包まれた京都・瓜生山キャンパスにて、芸術学部通学課程および通信教育課程の秋季卒業式が執り行われました。通学課程からは学士44名、通信教育課程からは学士114名がそれぞれ学位を授与されました。また、秋季卒業式は例年に続き対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、遠方の卒業生やご家族のみなさまと、ライブ配信を通して卒業の喜びを分かち合いました。
作品制作や研究を粘り強くつづけ、それぞれの歩みで卒業を迎えた通学部の学生たち。そして完全オンラインで芸術学士を取得できる芸術教養学科で、仕事や家事・育児と両立しながら学びを修めた通信課程の学生たち。今回の記事では、それぞれの思いを胸に次の一歩へと踏み出した晴れやかな式典の様子をお届けします。
おもしろがれる力をもって、社会へ 卒業生代表へ佐藤卓学長が贈ったエール
式のはじめに行われた卒業証書授与。今年度は、通学部から情報デザイン学科の宮城ラファエルケンジさん、通信教育部からは芸術教養学科の水川さおりさんが、佐藤卓学長から手渡されました。


つづいて、佐藤卓学長が式辞を述べました。冒頭では、73歳から絵を描き始め亡くなる81歳までに700点の作品を残した画家・丸木スマの歩みを取り上げ、好奇心をもちつづけて何事もおもしろがってほしいと語ります。
「私はデザインの仕事を続けてきて、“おもしろくない物事はなにひとつない”と思っています。おもしろくなさそうに仕事をする人はいるでしょう。しかし、仕事そのもの、それから社会の中の課題をおもしろくできるかどうかは、私たち自身の問題なのではないでしょうか。おもしろいと思う気持ちは、それ自体がすでに才能です。卒業を迎えられたみなさんも、まさにそんなおもしろがれる力をもった方々だと思います。」
また、複雑化する世界のなかへ好奇心をもって入り込み“おもしろがれる力”を発揮してほしいと続けます。
「世界では、相変わらず大変な状況が起きています。紛争や大災害、エネルギー問題、環境問題だったり、課題は尽きません。ですが、この学校で学んだ『藝術立国』という理念——芸術の力によって平和な社会を目指していくというこの理念を、みなさんは共有されていますよね。今まで学んだことを少しでも役立てていただき、頑張ってもらいたいと祈念しています。そういう私自身も現役のデザイナーとして、日々いろいろな課題に向き合っています。私自身も、みなさまとともに芸術の力で世の中を少しでもいい方向に向けられるよう、歩んでいきたいと思います。」
祝福の辞で締めくくり、同時代を生きる作り手の目線から卒業生へエールを送りました。
胸の内にしまった芸術への道をもう一度
つづいて「卒業の辞」を、卒業生代表を務めた通信教育課程芸術教養学科の水川さおりさんが読みあげました。
通信教育課程には、仕事や家事・育児と学びを両立され、生活のなかで得た視点を研究や制作に活かして活動されている方がたくさんおられます。卒業の辞では、両立の難しさに思い悩みながらも「大人になって、こんなにも胸が躍る日々に出会えるとは」と、いきいきと充実した学生生活を送られたようすが語られました。
卒業の辞
少しずつ秋の彩りが深まる頃となりました。
本日の晴れやかな卒業式にあたり、佐藤学長をはじめ諸先生方、ご来賓の皆様、ご尽力いただいたすべての皆様に、卒業生一同心より御礼申し上げます。
幼少の頃の私は、絵や漫画を描くことが好きで、将来は美術関係への進学を希望していました。しかし、さまざまな事情から別の道を歩むことになり、その思いは長く胸の内にありました。スマートフォンが生活のインフラとなり、あふれる情報に戸惑うなか、2020年の緊急事態宣言で大きな閉塞感に直面しました。私は、かつて憧れた絵を描くことだけではなく、芸術やデザインの知恵、そして複雑化する社会の本質を見極める力を身につけたいと考え、オンラインで幅広く学べる京都芸術大学の芸術教養学科に入学しました。
仕事や家事との両立は容易ではなく、苦しい時もありました。そのたびに先生方のご講評と職員の皆様の温かい支えに励まされ、一歩ずつ歩みを重ねました。画面越しでも距離を感じさせない安心感があり、同期や、airU、博物館実習で出会った学友も、大きな心の支えとなりました。 昨日まで知らなかったことを知り、昨日まで気づけなかったことに気づき、昨日までできなかったことができるようになる。大人になって、こんなにも胸が躍る日々に出会えるとは思ってもいませんでした。
芸術教養学科では、伝統や文化をたどりながら、芸術やデザインが人びとの暮らしにどのように息づいてきたのかを学びました。そして、デザイン思考によって社会の課題を多様な視点から捉え、本質を見極めるまなざしを養いました。しかし、学びが広がるほど、紛争、自然災害、貧困、地域社会の課題などが、私の中で浮かび上がってきました。 自分に何ができるのか。学びをいかに社会に還元していくのか。問い続けながら、自分の歩幅に合った一歩を重ねていくことが大切なのだと感じています。今後は、本学で得た学びを糧に、自分にできる形で社会と関わりを重ねていきたいと思います。
最後に、私たちを導いてくださった先生方、支えてくださった職員や卒業生コーチの皆様、学ぶ喜びも悩みも分かち合った学友の皆様、そして身近で応援してくれた家族に、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。
皆様のご健勝と、京都芸術大学のさらなるご発展を祈念し、卒業の辞とさせていただきます。
2026年10月12日
秋季卒業生代表 芸術教養学科 水川 さおり
大学での学びと経験が、これからの人生を後押しする
徳山豊理事長は、歓送の辞で「みなさんは入学・進学を決めたときどんな思いだったか、覚えておられますか」と卒業生へ問いかけます。
「初心忘るべからずともいいますが、入学時の気持ちをときどき思い返していただきたいと思います。他大学との比較もあれば、学び続ける自信がもてなかったり、仕事や家庭との両立であったり。でもこうして、みなさんはこの日を迎えられました。この大学で悩みぶつかり挫折もし、でも心温まる出来事もあったでしょう。ここで学んだこと、過ごした時間、経験したこと、出会った友人、それら一つひとつが、これからみなさんの力になってくれるはずです。みなさんが前に向かって一歩一歩突き進む姿こそが、後輩たちの力にもなっています。」
10月31日(土)に開催される同窓会“ホームカミングデー”の話題にも触れ、友人同士で声を掛け合っていつでも大学に戻ってきてほしいと、温かい言葉で卒業を祝福。
卒業式の終わりには秋元康氏が制作した学園歌『59段の架け橋』を斉唱し、それぞれがキャンパスで過ごした時間や学友との思い出が蘇るひとときとなりました。

卒業後もつづく横のつながり 通信教育課程、芸術教養学科の分科会
卒業式閉式後に各学科で行われた分科会。通信教育部芸術教養学科の分科会には、札幌や鹿児島、ドイツからも卒業生が集まりました。
ご家族やご友人に見守られながら、宮信明学科長より希望された卒業生お一人ずつに証書を授与。学生生活をサポートした卒業生コーチやともに学んだ在学生うちわを振って盛り上げたり、代わるがわる記念写真を撮り合ったりと、終始なごやかな笑い声が教室に響きました。




各賞の受賞者の発表、記念品の授与も行われ、互いに拍手で同志を讃え門出を祝い合う時間となりました。最後には教員から卒業生へ、はなむけの言葉が贈られました。


分科会の賑やかでリラックスした空気に、これまでの学習で築いた横の繋がりの深さが感じられました。「卒業後もairUコミュニティはつながっています」という教員からの声かけの通り、本学の通信教育課程で利用されている京都芸術大学独自のSNS「airU コミュニティ」は卒業後もアクセスし、利用することができます。また、本学には卒業後の活動や学びを支援する制度や、卒業生・教職員が集うホームカミングデーを開催し、卒業生のその後を見守り続けています。
卒業生・修了生のみなさん、本学での学びがみなさんのあらたな興味を引き出し、これからの人生を彩り続けることを祈念しております。この度はご卒業、誠におめでとうございます。
卒業生向け情報:https://www.kyoto-art.ac.jp/for_graduate/
ホームカミングデー2026:https://www.kyoto-art.ac.jp/hcd/2026/
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出射 優希Yuuki Idei
2002年兵庫県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。卒業後、ライターとして活動中。