秋晴れの陽気が心地よいこの頃、2025年10月13日(月・祝)、京都・瓜生山キャンパスにて、芸術学部通学課程および通信教育課程の秋季卒業式が執り行われました。通学課程からは学士30名、通信教育課程からは学士108名がそれぞれ学位を授与されました。
本学の通信教育課程芸術教養学科は完全オンラインでどこでも学べるのが特徴。この秋季卒業式には、全国各地や海外など様々な地域からオンライン授業を受講し学位を取得された方が参列されました。
卒業式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、全国・全世界の卒業生やご家族のみなさまに向けてライブ配信されました。
アーカイブ動画はこちら(https://www.youtube.com/live/mtZRW-RMed8)。
柔軟な感性で困難を乗り越えて
まずはじめに、学位記・卒業証書の授与が行われました。通学部からは文芸表現学科の宮原拓杜さん、通信教育部からは芸術教養学科の上田靖子さんが卒業生代表として学位記・卒業証書を授与されました。


次に、荒川朱美副学長が式辞を述べました。荒川副学長は「わたしたちが歩むこれからの時代は、AIの急速な進化や地球規模の課題などが累積し、予測が非常に難しい時代です。変化のスピードが速いそんな時代だからこそ、みなさんが本学で学んだ『困難を乗り越えていく力』と、多様性を受け入れ、相手の立場に立って物事を考える『柔軟な感性』をこの先もずっと持ち続けてください」と話しました。
また、通信教育課程の卒業生たちについて「みなさんは、職場や家庭で社会人として働きながら、時間的な制約がある中で、自らの強い意思と自己管理能力を持って学業を継続されました。これは本当に素晴らしいことだと思います」とその頑張りを讃え、荒川副学長自身の11年間にわたる学生生活を振り返り、「当時は、勉強が好きというより『大学で学びたいことがたくさんあった』というほうが正しいと思います。1日24時間、1年365日をすべて自分のために使える大学での日々は、とても贅沢な時間でした。大学で学んだこと、深く考えたこと、そして出会った人たちがいまの私を作ってくれました。卒業生のみなさんにとっても、本学のキャンパスやオンライン授業で学んだ日々が、人生で訪れる困難を乗り越える、心の拠り所になることを願っています」と語りました。
最後に、卒業生全員へのはなむけとして、佐藤卓学長からのメッセージを代読しました。
佐藤学長は「卒業生のみなさんが、今後社会に出て、仕事や生きることそのものが面白くないと感じるときがあるかもしれません。しかし、世の中、面白くないことなんてひとつもありません。面白くなければ、面白くすればいいんです。なにごとも面白がれる人、面白くできる人になってください。みなさんが本学の建学の理念である『藝術立国』の精神を胸に、社会の様々な分野で活躍されることを心から期待しております」と、卒業後のみなさんの学びの、益々の発展を祈念しました。
パンデミックを乗り越えて
続いて、卒業生代表からの「卒業の辞」が読まれました。卒業生代表を務めたのは、通信教育課程芸術教養学科の上田靖子さんです。
卒業の辞

空が澄み渡り、爽やかな風が吹く頃となりました。
本日は、このような素晴らしい卒業式を開催していただいたこと、多くの方々がご臨席くださったことに、卒業生一同、心より御礼申し上げます。
私が入学した2021年は、新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変化せざるを得ない時期でした。パンデミックの直前に、愛犬の死、父の死、母の大病など、胸が潰れそうになるようなことを立て続けに経験した私は、時代の閉塞感も伴って、自分自身を見失っていました。自分が何を好きで何をしたいのかが分からなくなり、なんとか自分を取り戻したいと考え、大学に入ることを決意しました。大学生になってたくさんの文章を書くことで、頭の中を整理したかったのです。
望んでいた通り、入学してからは本当に多くの課題と向き合い、数えきれないほどのレポートを書くこととなりました。時には苦しさも伴う楽しさの中で、自分が変化していくのを感じました。学びというのは、以前の自分を取り戻すものではなく、新しい自分に出会わせてくれるものだと知ったのです。新たな眼差しでヒト・モノ・コトを観察してみると、それまで見過ごしていた美しさや面白さに気づくことができました。
芸術教養学科では、伝統文化やデザイン思考から得た知見を用いて、暮らしをより良くしていくことを試みます。自分の周りを改善していくことは、紛争、環境破壊、貧困、差別など多くの問題を抱える世界を思うと小さなことかもしれません。しかし、ひとりひとりが自分の周囲を良くするために思考を巡らせ行動をし始めたら、世界はきっと良い方向へと変わっていきます。自分の暮らしを整えながら、ひいては世の中を良くしていく人材になりたいという気持ちは、本学で学んだからこそ生まれたものだと思います。今日を境に、新たな道を行くこととなりますが、その気持ちを忘れずに進んで参ります。
最後になりますが、いつも前向きにご指導くださった先生方、真摯に学習のサポートをしてくださった職員と卒業生コーチの皆様、手を差し伸べあった愛すべき学友たち、常に支えてくれた大切な家族に感謝いたします。本当にありがとうございました。
皆様のご健康と京都芸術大学のさらなる発展をお祈り申し上げ、卒業の辞とさせていただきます。
2025年10月13日
秋季卒業生代表 芸術教養学科 上田 靖子
『私たちは今、なにができるか』を考え続ける

卒業生からの芸術への真摯な思いを受け取り、徳山豊理事長から歓送の辞が贈られました。徳山理事長は「『大学ってなんだろう』と考えました。もちろん、社会で生き抜いていくために力をつける、学ぶ、自分を成長させる場所であることは間違いありません。しかし、今の日本や世界は、幸せな社会とは言い難いのが現状です。今この瞬間も、世界中の至るところで悲しい出来事が続いている中で、新聞やニュースで見かける悲惨な状況から目を逸らすことしかできない。そう思ってしまうくらい、私たちは無力です。だからといって、なにもしなくてもいいわけではない。教育とは、『私たちは今、なにができるか』を考え続け、想像する力を身につける、そういう場所ではないかと私は思います」と教育への考え方を話し、教職員一同、建学の理念である『藝術立国』の精神を大切にして、教育に向き合っていきたいと述べました。

最後に、卒業生がこれからどのように社会を生きていくのかについて思いを馳せ、「みなさんは本学で学ぶことを通して、自分の可能性に気づいているはずです。自分のため、愛する人のため、世界のためにできることはなにか、考え続けてください。本学で学んだことを活かして、知恵を絞り、考えて、社会の荒波に出て、船を漕いでいってください」と卒業生へはなむけの言葉を述べました。
卒業式の終わりには、学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。卒業生と列席した教員、卒業生・修了生のご家族がともに声をそろえて歌い、学生生活の思い出を振り返る時間となりました。

卒業の門出を祝い合う
卒業式閉式後には、通信教育部芸術教養学科の分科会が行われました。宮信明学科長より、卒業式に出席された卒業生お一人ずつに証書を授与しました。各賞の受賞者の発表、賞状授与も行われ、互いに拍手で同志を讃え、門出を祝い合う時間となりました。



分科会の最後には、芸術教養学科の教員一人一人から卒業生へのはなむけの言葉が贈られました。






授賞式後には会場のあちこちで記念撮影が行われていました。これまではオンラインで繋がって切磋琢磨してきた通信教育部のみなさんも、集合写真のときには互いに声をかけ合い、卒業を祝い合っていました。通学部の学生にとっても、列席した学科の先生方と学生生活の思い出を振り返る時間となりました。卒業生のみなさんの笑顔は誇らしく輝いていました。
卒業生のみなさんが今後も地域社会や職場、家庭で芸術活動を続けられることを祈念して——。卒業生・修了生のみなさん、この度はご卒業・修了、誠におめでとうございます。
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。