もったいないことが世の中には溢れています。
例えばそう…

こんにちは、八羽と申します。

八羽(はっぱ)
京都芸術大学卒業。工作や雑貨の制作を行うほか、Webメディア「オモコロ」などでライターとして活動している。
鰹節は、温かいお好み焼きの上に乗せると、くねくねと踊りを披露してくれますよね。
私はあの姿が、なんとも朗らかで楽しげで好きなんです。
でも、鰹節が踊るとき、大抵主役になるのはお好み焼き。
鰹節が踊ってくれてる間も、私たちは気もそぞろに、その下にある粉もんのことを考えてしまうのです。
そこで今回は、鰹節がちゃんと主役になれる、専用のステージを用意したいと思います。

どうぞよろしくお願いします。
というわけで、

鰹節を…
ホットプレートに置いて…






失敗です。
鰹節の踊りを見たかったのに、ホットプレートの上で鰹節が踊ることはついぞありませんでした。
なんで!?
もう鰹節なんて、こりごりだ〜〜〜!!!
皆さんも、鰹節を踊らせるときはお気をつけください。


八羽「……ということがあったんですよ。こういうときって、どうしたらいいですか?」

職員さん「えーっと、それって僕に聞いてますか?」
八羽「はい。初対面で突然すみません。大学の職員の方って、大抵なんでも知ってらっしゃるので……。鰹節がホットプレートだけで踊らないときって、どうすればいいですか?」

職員さん「……」

職員さん「水分……が必要なんじゃないですかね」
水分!?
なるほど。鰹節がお好み焼きの上で踊るのは、お好み焼きから発生する水蒸気の動きや、鰹節自体が水分を吸収して変形することなどが関係しているそうです。(※1)
(※1 あくまで私が理解した範囲の話です)
熱だけではなく、水分も重要というわけですね。


というわけで、作りました。
鰹節専用のダンスステージです。
ミラーボールと階段もつけて、気合いはバッチリ。

中に熱湯を入れることで、その湯気で鰹節を踊らせよう、という魂胆です。
鰹節を踊らせる
というわけで、やってきました。

春秋座です。

春秋座は、京都芸術大学の中にある本格的な劇場です。歌舞伎の公演ができる花道や廻り舞台、せりまで備えていて、これまで歌舞伎や能、現代演劇、ダンスなど、数えきれないほどの一流の舞台がここで上演されてきました。
「いつかあの舞台に立ちたい」と憧れる場所であり、立ちたくても立てなかった人の方がずっと多い場所でもあります。
そんなところで鰹節を踊らせたいと、大学の職員さんに「せっかくの鰹節の晴れ舞台だから、100%でやりきりたい」と切実な事情を説明したところ、関係各所に交渉いただき快く許諾してくださいました。

ありがとうございます。

なにぶん箱が立派すぎて…
期待や歓喜を凌駕して、「こんな場所でやっていいことか?」という疑問と緊張に苛まれます。
しかし、私のそんな気持ちを置き去りにして、開演時間は刻一刻と迫ってきました。
……それでは、鰹節に登場してもらいましょう。

今度こそ……




果たして、鰹節は踊っているのでしょうか?


あっ!




舞台に対して鰹節が小さすぎて双眼鏡がないとわかりませんが、確かにくねくねと揺れ踊っているのが見て取れます!

小さなミラーボールと、歌舞伎の舞台をも照らす本格的な照明。
その光を一身に浴びて、鰹節はいつもの何倍も生き生きとして見えました。

こんなに小さな背中に、なんてものを背負っているんだ。
初めて立つ大舞台。その胸中は計り知れません。

せめて勇気づけたいと、鰹節色のペンライトで応援です。
鰹節、すごいね。人間の私でもこんな舞台に立ったことないよ。
頑張って。

843席の前で踊るなんて、そのプレッシャーは気が遠くなるものでしょう。そんな席数のお好み焼き屋さんないだろうし。

心の中でわあわあ騒いでいると、あっという間に終演の時間。

ステージは、大掛かりなせりを使って舞台の下へと消えていきました。

素晴らしい!素晴らしい!
生きてるうちにこんなもの(※2)を見ることができるとは思わなかった!
(※2 春秋座での鰹節の晴れ舞台)
今日は素晴らしい1日でした。
ありがとう!鰹節!ありがとう!春秋座!
と、思っていると…





アンコールが始まりました。

なんと、お好み焼きに乗って再登場。
先ほどまでの専用ステージとは打って変わって、いつもの鉄板にお好み焼き。
その上に鰹節。

そうか……。
今回、よかれと思って鰹節のために専用ステージを用意しましたが、やっぱり鰹節の本来の姿はこれなんですね。

いつものお好み焼きの上へと舞い戻り、照明の方のご厚意で情熱的な赤色に照らされた鰹節は、先ほどの本編よりも俄然勇ましく、一度乾かして削ったと思えないほどの生命力に満ちていました。

本来の形を取り戻したその姿を前に、
鰹節との浅く短い思い出が次々と蘇り、私は少し泣きました。
皆さんも、ぜひ一度春秋座に足を運んでみてはいかがでしょうか。



一仕事終えたお好み焼きは、食文化デザインコースを監修している小山薫堂副学長に召し上がっていただきました。
食文化デザインコースは、京都芸術大学通信教育部で「食」を文化芸術として学ぶ、完全オンラインのコース。日本と世界の食文化、食の美学などを、通学なしで学べます。
▼食文化デザインコースの詳細はこちらから
https://tenohira.kyoto-art.ac.jp/foodculturedesign/
春秋座は、京都芸術大学のキャンパス内に設けられた、本格的な劇場です。歌舞伎などの伝統芸能から現代演劇まで多彩な公演が行われるとともに、学生の実践的な教育の場としても活用されています。
▼春秋座の舞台機構が5分でわかるYouTube動画はこちらからhttps://www.youtube.com/watch?v=UJ9BMFUe7GM
▼京都芸術劇場 春秋座 studio21
https://k-pac.org/
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