REPORT2026.07.30

京都アート歴史教育

学生と子どもたちがアートでつながる ― 第16回上賀茂神社アートプロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

夏休みの子どもたちに文化芸術の魅力を幅広く伝えることを目的に、2026年7月18日(土)〜20日(祝・月)の3日間、世界文化遺産・上賀茂神社で第16回「上賀茂神社アートプロジェクト」が開催されました。

上賀茂神社の夏の恒例行事となっている本プロジェクトには、京都芸術大学美術工芸学科の学生たちが参加。子どもたちに芸術の楽しさを届けました。
会場では、美術工芸学科の学部生・大学院生10名による作品展示のほか、柊野小学校で学生が指導した行灯の展示や、学生が講師を務めるうちわ制作のワークショップを実施。
この記事では、その様子をお届けします。

 

地元小学生とのつながり - 行灯の展示

6月19日、美術工芸学科の学生たちが地元の柊野小学校(京都市北区)を訪れ、3年生の図工の時間に行灯の絵付指導を行いました。
授業では、「京野菜」と「夏といえば」をテーマに、瑞々しい野菜や、夏らしい景色がが生き生きと描かれました。

柊野小学校での絵付指導風景。小学生たちが思い思いに「夏」のイメージを描いた

子どもたちが一生懸命作った行灯は、アートプロジェクト当日に馬場殿前の芝生へ展示されました。ナスやキュウリ、花火やかき氷など、力強い筆遣いで描かれた力作が並び、馬場殿には学生たちが描いた行灯が展示されました。

子どもたちへの指導を担当した学生は、「野菜をどんなふうに描くか、手本などを見せながら教えていきました。小学3年生にどう言えば伝わるのか考えながら教えるのは大変でしたが、絵を描く子供たちを見て、自分も絵が好きなんだな、と気付かされました。また、野菜というシンプルなモチーフを描くことが最近はなかったので、忘れていた感覚がよみがえってきました」と語ります。


子どもたちに教えるという経験を通して、学生たち自身も絵を描く楽しさや表現の原点を改めて見つめ直すことができたようです。

芝生には小学生の作品が、馬場殿には大学生の作品が並び会場を彩った

 

舞台は世界文化遺産 - 学生作品の展示

上賀茂神社の境内にある、重要文化財施設「庁屋」の中に、本学の学部生・大学院生による10作品が展示されました。
中に入ると、日本画、油画、染織テキスタイルを学ぶ学生たちの作品が室内を彩っています。現代的な表現を用いたものから伝統的な技法を生かしたものまで、多彩なラインナップとなりました。

カーテンのようにかけられた染織テキスタイルの作品には、来場者も「涼しげでいいですね」と感想をこぼしていました。また、それぞれの作品の隣には作品を制作した学生が立ち、来場者との会話を楽しんでいました。

「祭り前日」を制作した懐芽(なつめ)さん(大学院 芸術専攻 芸術実践領域 1年)。
上賀茂神社を舞台に、人型が集っている様子が描かれています。

「この人型は、ピンクの妖精なんです。今は色が塗られていないんですが、色を塗るとピンクになります。等身大の人間を描くと、リアリティが強くなってしまうので、ピンクの妖精を描きました」
ピンクの妖精たちは、上賀茂神社の境内を自由に歩き回っています。中には、屋根の上で座っている妖精も。
「優しくて丸い世界を描きたくて、こういうふうに描いています。ピンクの妖精も、それぞれ違う動きをしています」
この「祭り前日」は、今後は彩色を施した作品も展示される予定とのこと。ピンクの妖精が彩る上賀茂神社から、目が離せません。

また、「色彩を内包するもの」シリーズを制作している宇田和花さん(大学院 芸術専攻 芸術実践領域 2年)にもお話を伺いました。
「私はモチーフをもっていなくて、いつも作品に自分を教えてもらっています。色々と色彩を詰め込んでいる感じですね」

作品を見てみると、色とりどりの抽象画が並びます。「モチーフを持たない」という言葉の通り、内包されているものはさまざまです。
「美しさを求める、みたいなところから逸脱したいんです。美と醜さの“いいとこどり”をしたいと思っています」
鑑賞者によって感じ方が変わるであろう色彩。このシリーズではさまざまな色彩が展開されているそうで、いつか違う色彩とも出会ってみたい、そう思わせられます。

今回紹介した作品のほかにも、学生たちの個性あふれる作品がずらりと並んでいました。展示を見た子どもたちも、さまざまなアートに触れ、感性を刺激される時間になったことでしょう。

 

子どもたちと作る創作の時間 - ワークショップ

上賀茂神社の客殿では、学生たちによる子ども向けのワークショップが行われました。
段ボールや糸など、さまざまな廃材をうちわの上に自由に並べ、上からスプレーを吹きかけることで、世界に一つだけのうちわを作るワークショップです。使用した廃材は、学生たちの制作過程で生まれたものです。

子どもたちは、「この模様かっこいい!」「これがいい!」と、思い思いに廃材を選んでうちわに並べ、好きな色を吹きかけながら、うちわを作り上げていました。
完成したうちわを手に、「いいのできた!」と嬉しそうに保護者へ見せる子どもたちの姿も見られました。保護者の方も、「家ではなかなかできないから、ありがたいですね」と楽しそうに子どもの様子を見ていました。

学生たちも子どもたちの発想を大切にしながら、一人ひとりの制作をサポートしていました。どうですか、と聞けば、「私たちも楽しいです!」と笑顔で話す学生たち。子どもたちと一緒に作品をつくる時間は、学生たちにとっても充実したひとときとなったようです。

 

ひらいていくアートのかたち

本アートプロジェクトの総括・堀川三恵子さんによると、元々は箱根ガラスの森美術館の展示から着想し、上賀茂神社の芝生を使って展示ができないかと考えたところ、それが実現し、形を変えながら、今日の16回目開催までたどり着いたそうです。


京都芸術大学が協力したのは4年前のことです。本学の理念である「藝術立国・文芸復興」にも通じるこのアートプロジェクトでは、上賀茂神社と協力しながら、芸術の魅力を子どもたちへ届けています。

世界文化遺産という特別な場所で、京都芸術大学の学生と子どもたちが交流し、作品づくりや鑑賞を通して芸術に親しんだ3日間。
作品を「見る」だけでなく、「つくる」「伝える」ことを通して、アートが人と人をつなぐ力を感じられるイベントとなりました。


「まだまだ頑張ります!」と笑顔で語る堀川さん。その言葉の通り、上賀茂神社アートプロジェクトはこれからも地域と芸術を結び、多くの人へ創作の楽しさを届けていくことでしょう。

 

(文=文芸表現学科4年 千葉美沙希)

 

 

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