REPORT2026.05.01

教育

幸せな緊張感と希望を胸に1,191名が学びの扉をひらく―― 2026年度 京都芸術大学 通学課程 入学式

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  • 愛知 はな

暖かく穏やかな陽気の4月3日、桜も満開の京都芸術大学で、2026年度通学課程の入学式が挙行されました。少し緊張した面持ちの新入生たちが同じスタートラインに肩を並べ、新しい大学生活へと踏み出しました。

今回は、2026年度通学課程の入学式の様子をレポートします。

晴れ着に身を包んだ新入生の入場が完了すると、開会の辞ののち、本学教員の中村順平先生により、本学の理念「京都文藝復興」が朗読されました。

続いて、佐藤卓学長による新入生への式辞です。佐藤学長は、本学のシンボルマークのデザインも手掛けた現役のグラフィックデザイナーでもあります。さまざまな分野でクリエイティブな世界へ足を踏み入れることを決意した新入生たちの新しい価値観がこれからの社会にもたらす変化に期待を寄せるとともに、入学の祝いの言葉を贈りました。

「生まれ、生きる時代によってやるべきことは変わります。私は、高度経済成長期の社会がどうなっていくのか考え、環境問題に立ち返り考えなくてはいけないという信念のもと、デザイナーの道を選びました。現在、混沌とした時代を迎え、遠い国の戦争、石油の問題が、日常、そして創作活動にも深く関わりを持っています。アートやデザインの力が不確かであると思わされることもあるでしょう。それでも、こんな時代だからこそ、みなさんの世代の新しい価値観が社会にもたらす変化に、私は大変興味があります。これからの4年間で経験するすべてを糧に、みなさんが見つける独自の芸術の社会へのアプローチに期待しています」

そして、情報が溢れ、AIの活用が進む現代社会において、人間の「身体性」こそがその突破口であることを示し、創作において、身体を使った実験がこれからの芸術の発展の糸口であると述べました。その実験を繰り返すうちに立ちはだかる、「自身の才能」や「自身の個性」への不安で、創作の手を止めることなく、作品の制作に没頭し、にじみ出るそれぞれの個性に自信を持ってほしいと、新入生を勇気づけました。
そして、最後に佐藤学長が新入生に贈った言葉は「アートは思い、デザインは思いやり」。この言葉に込められた思いとともに、新入生たちへのこれからの学生生活への励ましの言葉で、式辞を締めくくりました。

「世の中をアートの力でいい方向に変えたいという思い。社会のためになにをするべきか、考えて実行することがデザインであり、思いやりである。『アートは思い、デザインは思いやり』、この言葉だけでも覚えて帰っていただけたらと思います。そして、混沌としたこの世界でも、希望だけは持ち続けてください。私含め本学の教職員は、希望を持ち続けるからこそ、みなさんを今日ここでお迎えできています。上手くいくこと、いかないこと、楽しいこと、悲しいこと、どんな経験もそのすべてが人生の糧に、必ずなります。この4年間という貴重な時間を送ってほしいと思います」


次に、本学の創設時から姉妹校である東北芸術工科大学学長中山ダイスケ先生から、来賓を代表し、祝辞をいただきました。本学は文藝復興を、東北芸術工科大学は東北ルネッサンスを提唱し、協力して藝術立国を目指した教育活動を行っています。

祝辞は、新入生への入学の祝いの言葉から始まり、不安定な社会の状況について触れ、会場である直心館講堂を包む緊張感が、「幸せな緊張感」であることを強調し、入学のきっかけにもなったであろう、コンテンツとの関係性、そこへの意識が入学式のその日から劇的に変化するということを伝えました。
「これからみなさんは、今日から京都芸術大学の一員です。『なんとなく好き』と作品を享受する無防備な受信者ではなく、新しい価値を生み出す側、つまりコンテンツの贈り手の一員となります。そのコンテンツの背景には、どんな工夫がされているのか、どうして自分がそのコンテンツを好きになったのか、客観的に考えるその姿勢は、みなさんの作品制作に必ず繋がります」
中山先生は、これまでの人生で挫折や悲しみを味わい、芸術大学にたどり着いた学生に、今までにも多く出会ってきたと言います。そんななかで、その挫折、悲しみ、トラウマは、クリエイティブの世界では、創作のエネルギーとなる宝であると、その感情の再認識を呼びかけました。日々抱くさまざまな感情を作品という形に変えることで、それまでの自分を癒すとともに、世界のどこかにいる、同じ状況の他者を救うクリエーションへたどり着くことができると述べました。

最後に、失敗を恐れできなかったという後悔が残らないよう、大学生活のなかで一度は挑戦をしてほしいというメッセージとともに、京都という国際都市の新入生たち独自の楽しみ方、面白さを4年間で見つけ、学生生活を思い切り楽しむように、学生たちへ創作の心構え、そして楽しい学生生活のためのアドバイスを贈り、祝辞を締めくくりました。

続いて披露されたのは、和太鼓「悳(しん)」による和太鼓の演奏です。「和太鼓 悳」は、1994年に結成した和太鼓サークルで、瓜生山学園の学生により構成されています。技術だけでなく、『心、技、体』をテーマに、メンバー全員がお互いの気持ちを理解し合い、自分自身への挑戦を掲げて、日々練習に励んでいます。

新入生の入学を祝し、明るい未来に向け、笑顔を絶やさず、日々前向きに物事を捉え、進んでいけるよう、そして、自然、芸術、人の想いに対して響く心を持ち、仲間と共に学生生活を満喫できるようにという願いを込めた「一会(いちえ)」という曲目を演奏しました。

新入生にとっては先輩である在校生たちの奏でる和太鼓の音が会場を包み、華やかなパフォーマンスが入学式の喜ばしい雰囲気をより一層盛り上げました。

和太鼓の祝奏に続くのは、入学の辞。新入生代表、情報デザイン学科の堀井佐紀さんが、コロナ禍で体験した、学生生活の変化、芸術の変化を振り返り、これからの本学での学びへの意気込み、決意を表明しました。

暖かな春の日差しに包まれ、花々も美しく咲き始める季節となりました。本日、私たち新入生のためにこのような素晴らしい式を準備してくださった関係者の皆様方には、新入生を代表して心から御礼申し上げます。
私たちは、学生時代の多くをコロナ禍の中で過ごしてきました。学校行事の中止や外出の制限など、それまで当たり前だった日常が大きく変わった時間でした。そのような状況の中で、特に大きな影響を受けたものの一つが文化芸術でした。展覧会や演劇、コンサートなどの文化活動は、生活に必ずしも必要なものではないとされ、感染予防の観点からも避けるべきものとして扱われることが多くありました。活気が薄れていく日々を過ごすうちに、私は、「芸術が社会に存在する意味」について考えるようになりました。芸術を学ぶことに対して、不安や迷いを覚えることもありました。
そんなとき、多くの制限の中でも、表現することをやめない人たちの姿を目にしました。数多の制限さえも新しい発想に変え、これまでにない表現を生み出していくその姿に、私は大きな希望と憧れを抱きました。制約や困難を創造のきっかけへと変えていく力。それこそが、芸術の持つ大きな可能性なのではないかと感じています。
これからの社会を生きていく中で、さらに多くの変化や予想できない出来事に直面するかもしれません。コロナ禍が世界にとって大きな危機であったように、私たち自身にもさまざまな困難や制限が訪れることがあります。その困難をどのように新しい表現や価値に変えていくのかを考え続けることが、これからの芸術を学ぶ私たちにとって大切な姿勢なのだと思います。
AI やテクノロジーなど、さまざまな技術が発展し続ける今、それを扱う私たちもまた、問い続け、成長し続けていく必要があります。入学のご縁をいただいたからには、本学での出会いや経験を大切にしながら、仲間と共に考え、表現し、新しい芸術の可能性を探究し続けて参ります。教職員の皆様や先輩方には、何卒、ご指導、ご鞭撻のほど、心よりお願い申し上げます。
最後になりますが、これまで私たちを支え、見守り続けてくださった全ての方々への感謝の気持ちを忘れず、歴史と文化が息づく京都の地で学ぶことができる喜びを胸に、充実した学生生活を送ることを誓い、入学の辞とさせていただきます。

2026年4月3日 情報デザイン学科 ビジュアルデザインコース 堀井佐紀

堀井さんによる入学の辞を受け、在学生代表、プロダクトデザイン学科3年生丸山和夏さんによる在校生歓迎の辞が送られました。

丸山さんは、会場の新入生たちを前に、2年前の自身の入学式の日に実感した緊張感、そして「初めて」の瞬間に、痛みや違和感が伴うことがあるというその日の気づきについて振り返りました。
そして、『生命、微動だにせず』(青土社、2018年、郡司ペギオ幸夫著)の中で示されるプログラムされた地図を持つAIにはない、自らの手で「地図のルールそのもの」を根本から書き換えることができるという「生命」特有の力について触れ、本学の先輩として、初めてのことに挑むうえでの心構えについて述べました。
「今日ここにいるみなさんが手にしている「地図」の色や形は、一人ひとり違うはずです。 この大学を本命として、ワクワクしながら鮮やかな地図を広げている人もいるでしょう。一方で、2年前の私のように、思い描いていた進路とは違う結果になり、予定外の空白がある地図を持ってこの場に座っている人もいるはずです。でも、それでいいのだと私は思います。これからの学校生活の中で、『ここは少し違うな』と違和感を覚えたことも、『ここはすごくいい場所だ』と心が動いたことも、全部その地図に書き込んでいけるからです。
一度引いた線も、ルールごと何度だって書き直すことができます。どうかみなさんには、この瓜生山に聳え立つ、京都芸術大学という場で、存分に輝きを持って、自分だけの地図を大胆に書き換えていってほしいと願っています」
これからさまざまな挑戦をする新入生たちに、丸山さんの見つけた学生生活の歩み方が示されました。

そして、新入生、在学生、それぞれの決意、励ましを受け、学校法人瓜生山学園の徳山豊理事長から歓迎の辞が贈られました。

徳山理事長は、新入生に「命を大切にするとはどういうことか」を考えることを、卒業までの課題として提示しました。学生たちが日々の学びや制作に没頭するなかでもこの問いを常に頭の片隅におき、学びを深めてほしいと伝えました。
そして、よく耳にする「命を大切にする」という言葉のその本当の意味が、イマジネーションとクリエーションをするなかで見出せるはずだと述べ、次の言葉を贈り、歓迎の辞を締めくくりました。

「自らの命を大切にするのはもちろんのこと、ありとあらゆる命を大切にしてほしい。みなさんも命をいただき、命を繋いでいます。命というのは大切なんです。本学で創作に励み、学びを進めていくうちに、その意味に気が付く人もいると思います。そういうクリエイター、創造者にみなさんには成長してほしいと思います。ぜひ、みなさんからの課題に対する答えが提出される日を楽しみにしています。みなさんの前途を心から祝し、一緒に学べることを心から感謝し、お祝いの言葉とさせていただきます。本日は誠にご入学おめでとうございます。頑張ってください」

式典の最後は、学園歌「59段の架け橋」の斉唱。新入生、教職員、全員による学園歌の斉唱により、2026年度、京都芸術大学芸術学部入学式が締めくくられました。

2026年4月3日、1,191名の学生が、新たに京都芸術大学通学課程に加わり、学びとクリエイティブの扉を開きました。
新入生のみなさんのこれから始まる京都の地での4年間の学生生活が、楽しく充実したものになるよう願っています。
ご入学おめでとうございます!

 

(文=愛知はな、写真=白井茜)

 

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  • 愛知 はなAichi Hana

    2000年岐阜県生まれ。2025年度、京都芸術大学文芸表現学科卒業。

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