REPORT2024.05.01

みんなで輝く、これからの4年間――2024年度 京都芸術大学 通学課程 入学式

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  • 京都芸術大学 広報課

桜の花がまさに満開を迎えようとしていた2024年4月8日(月)、京都芸術大学は京都・瓜生山キャンパスにて通学課程の入学式を執り行いました。

この記事では、通学課程入学式の様子をレポートします。

 

入学式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、全国・全世界にいる新入生やそのご家族のみなさまに向けて、ライブ配信されました。また、保護者の皆さまは別教室のスクリーンにてライブ配信動画を投影し、式典の様子をご覧いただきました。

▼式典のアーカイブ配信はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=fgQibLleuUg

新入生の皆さんの入場が終わると、開式の辞とともに式典がはじまりました。
はじめに、本学の理念「京都文藝復興」を本学教授の松平定知先生が朗読されました。

つづいて、吉川左紀子学長による学長式辞です。吉川学長は、京都芸術大学は「常識を変える大学」であると語ります。

折しも春秋座で開催されていた「京をどり」は「普段はお座敷でしか見られない舞妓さんを、広く外国の方に見てもらおう」という画期的なアイディアから1871年の京都博覧会ではじまったものでした。それから約150年、昨年春秋座で開催された京都鴨川音楽祭2023「小林幸子コンサート」を、吉川学長は「常識を変える大学」の「面目躍如のプロジェクトだった」と評しました。

いまだ新規偏重、大量消費、そして欧米優位の価値観が残るなか、芸術の世界はそうした世の常識とは異なる価値観が保たれてきました。それは、「小さくて繊細なもの、この世に1つしかないものを持つ価値」。これからの京都芸術大学で学ぶ4年間は、新入生の皆さんが、「知識を吸収する人」から「表現をする人」に変わる4年間です。

吉川学長の考える「表現する人」に必要なもの。それは、「新しいものを作り出す技術」「信頼できる情報」「意志の力」の3つなのだそうです。

 

技術というのは、手を動かすこと、時間をかけることで誰でも身につけることができます。
信頼できる情報は、信頼できる人から得ることができます。信頼できる人は大学にはたくさんいます。 これから皆さんが出会う多くの先生たち、 そして皆さんの学生生活を支える職員の人たちから得られる情報を存分に活用してください。意志の力、これは皆さん1人1人、自分自身の中から生まれるものです。皆さんの心と体には意志の力が備わっています。

 

そして、規則正しい生活と適度な運動・休養を心掛けることの大切さにも触れ、最後には夏目漱石『草枕』の冒頭をはなむけの言葉として朗読されました。

山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降(くだ)る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊(たっ)とい。

 

来賓を代表し、東北芸術工科大学学長 中山ダイスケ先生から、現役のアートディレクターとして活動されながら学長を務める「クリエイターの先輩」として、芸術大学でどう過ごしたらよいかというお話をいただきました。


そして、多くの人が悩むであろう「個性を出せない」という問題について、中山先生は「食わず嫌い」を克服することが大事だと説きます。つまり、自分の苦手なことを決めつけたり、鑑賞するものを狭めたりするのではなく、「とりあえず何でも食べて、口に合わなければたくさん吐いてみる」ことがクリエイティブの学びの基本ということです。

あっという間に過ぎてしまう4年間のうちに、喜怒哀楽を精一杯体験してほしい。東京一極集中の状況のなか、世界中誰もが知っている京都で学ぶことを誇りに思ってほしい。そして、自分の専攻を飛び越えてたくさんの仲間を作ってほしい。――中山先生から新入生の皆さんへの、熱い激励でした。

つづいて、京都芸術大学の学生サークル「和太鼓 悳(わだいこ しん)」が祝奏を披露しました。

「和太鼓 悳(わだいこ しん)」は瓜生山学園の学生により構成されている和太鼓サークルです。技術だけでなく「心技体」をテーマに、メンバー全員がお互いの気持ちを理解し合い、自分自身への挑戦に向けて日々練習に励んでいます。

新入生の入学を祝して、明るい未来に向け笑顔を絶やさず、日々前向きに物事を捉え進んでいただけるよう、そして自然、芸術、人の思いに対して響く心を持ち、仲間とともに学生生活を満喫していただけるように、心を込めて「響(さん)」を演奏しました。

 

新入生を代表し、ローン・インイーさん(総合造形コース)が入学の辞を読み上げました。

高校までスポーツに打ち込み、進路を模索する中で日本への留学を決意したローンさん。来日準備をするなかで手作りのものを家族・友人へ贈るうち、自分の作ったもので家族を喜ばせたいという目標が出来たそうです。

しかし、最初に入ったデザインの専門学校ではパソコン操作に苦労し、自分を見失いかけそうになってしまったそうです。そんなときに出会った京都芸術大学の体験授業で、「何事にも挑戦するという初心を振り返ることができた」とローンさんは言います。悔いのないよう、やりたいことに全力で取り組んだ結果、ローンさんは晴れてこの4月から京都芸術大学に入学することができました。

京都芸術大学の仲間とともに新しい環境で知識や技術を身につけ、それぞれの夢に向かい、何事にも挑戦する姿勢を忘れず、日々精一杯努力してまいります。辛い時もあると思いますが、それでも負けずに、自分の想いを強く持ち、仲間たちとともに乗り越えたいと思います。
最後になりましたが、私たちが今日の入学式を迎えることができたのは、家族や先生方、友人をはじめ周囲の方々の支えがあってこそです。感謝の気持ちを忘れず、夢や目標に向かって日々努力し、豊かな学生生活を送ることを誓い、入学の辞とさせていただきます。

 

 

また、在学生からは歓迎の辞として、美術工芸学科の小杉 桃音さん(日本画コース・3年)が歓迎のメッセージを贈りました。

小杉さんが新入生に伝えたかったこと。それはまず、「勇気を持ち、挑戦し続けてほしい」ということでした。1年生のとき、学生のために様々な活動をする学生会に興味を持った小杉さんは、学生の代表である代議員や、その中でもイベントの運営を行うリーダーズに応募し、活動をしてきました。

勇気を持って踏み出したからこそ、失敗から学ぶことができる。失敗も成功も、結果に過ぎないのです。「皆さんの限られた時間の中で、夢中になれることや目標を持つ自分の可能性を信じて、勇気を出し、一歩踏み出してみてください」

それから、小杉さんは「出会いを大切にしてほしい」ということを新入生の皆さんに伝えました。大学で出会うたくさんの人との出会いは、小杉さんにとって「自分自身が成長するきっかけ」だったそうです。

仲間との出会いが、自分自身の強みや弱さを教えてくれます。人への思いは、前を向き続ける原動力になります。
向き合い、時にぶつかり、様々な経験をしていくことで、強く綺麗で大切な感情を知ることもあります。皆さんも多様な価値観に触れ、自分の成長の糧にしてください。皆さんの大学生活が楽しく充実した、実りあるものとなりますよう、心から願っております。

 

学校法人瓜生山学園の徳山豊理事長からは歓迎の辞として、新入生にエールの言葉を贈りました。

多くの方が中学生という大切な時期にコロナ禍をご経験された皆さん。窮屈な日常を強いられる中で大切に日々を過ごし、ようやくこの日を迎えました。徳山理事長は、「どんなに世の中が暗くなっても、皆1人1人が輝き続けることで、周りの人たちの希望の光となってください」と呼びかけました。

この大学は、皆さんと共に、皆さんのためにあります。皆さんなくしては、大学が存在する意味はありません。ですから、皆とともに、私たち教職員はこれからの皆さんの成長を見守り、そして皆と一緒に成長し続けます。
どうぞ、これから、思いっきり4年間自分の時間を過ごし、そして「輝く」ということを実践してください。

 

式典の締めくくりに、学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。京都芸術大学の正面にある59段の大階段。新入生の皆さんはこれから4年間、いろいろな想いとともにこの階段を歩くことでしょう。

 

ご入学本当におめでとうございます。瓜生通信も、皆さんの学生生活が実り多きものになるように心から応援しています!

(文=天谷 航、写真=吉見 崚)

 

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