京都芸術大学では2026年3月13日(金)・14日(土)に京都・瓜生山キャンパスにて通学課程および通信教育課程の学位授与式・卒業式が執り行われ、通信教育課程からは修士328名、学士1,569名がそれぞれ学位を授与されました。
この記事では、通信教育課程の学位授与式・卒業式の様子をレポートします。
日本全国や海外から、18歳から90代の方までが主にオンラインで受講する本学の通信教育課程。
学位授与式・卒業式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、当日会場に来られなかった卒業生もオンラインで式典に参加することができました。
また、全国・全世界にいる卒業生やご家族のみなさまにもライブ配信を通して、卒業生の晴れやかな姿をご視聴いただけました。
通信教育課程の卒業生にとって、卒業式は共に切磋琢磨した仲間と顔を合わせる貴重な機会となります。久しぶりに会う学友と話を弾ませながら入場を終えた後、開式の辞と共に、式典が始まります。
まずは本学の理念である「京都文藝復興」を本学の中村淳平教授が朗読します。

本学創設者である徳山詳直氏が本学に込めた願いを、卒業生が改めてひとつひとつ静かに受け取る時間となりました。
次に、卒業証書の授与が行われます。
卒業生を代表し、4学科それぞれの代表が佐藤卓学長より卒業証書を授与されました。




芸術学科からは杉村 由里さん(和の伝統文化コース)、美術科からは板東 麻美さん(日本画コース)、デザイン科からは出張 宏明さん(ランドスケープデザインコース)、芸術教養学科からは佐谷 洋子さんが代表を務めました。
続いて、佐藤学長は、式辞で、自身の経験を通じて、通信教育課程の教育の変化について触れました。

「わたしは、学生時代にロックバンドをしていましたが、4年生になってもミュージシャンになりたいという夢をあきらめきれませんでした。しかし、音楽の基礎を勉強していないことに気づき夢を叶えることの難しさを感じました。ただ、今の時代であれば、デザインの仕事をしながら音楽を続けることもできたのではないかと思います」と話し、自身の経験をもとに、ひとつの道に縛られず、学び続けられる環境としての通信教育の可能性を示しました。
また、仕事や生活と創作の両立について、このように語ります。
「長年デザインの仕事をしてきて、今では仕事と遊びの境目がなくなっています。周りからは『大変ですね』と言われることもあるんですが、好きでやっているからこそ続いているんです」その実感から、通信教育で学ぶ人々についても、仕事と学びが重なり合うことで充実した時間を過ごしているのではと話します。
さらに、これからの社会に向けて次のように話しました。
「仕事を辛くて苦しいものとして考えるのではなく、クリエイティブに生きる大人の姿を、若い世代に見せていくことが大切だと思います」
そして、卒業制作については、時代の変化にも触れました。

「私たちの時代は自己表現が中心でしたが、今は社会性のある作品が多いと感じます。様々なことが社会で起きているこの現代では、必然的に社会性を持った作品が多くなるのではないかと感じました」
現代の社会状況が、学生の表現にも影響していることを示唆しました。
最後に卒業生に向けてメッセージを贈りました。
「仕事や子育てなど、様々な環境で学ばれたみなさんは、充実した時間を過ごされたのではないかと思います。これからもその想いや好奇心を忘れず、創作を続けてください」
学長の式辞に続き、本学の姉妹校である東北芸術工科大学の学長中山ダイスケ先生から、祝辞をいただきました。

中山先生は、一般的な大学生活とは異なる環境で学びを続けた、通信教育で学ぶ学生たちに、深い敬意を込めて言葉を贈ります。「私は一人の教育者としても、クリエイティブを志す仲間としても、深い敬意をもってここに立っています。通信教育で学ぶということは、単に知識を得るだけでなく、自分自身を律し続けるという極めて強靭な意志の証明だったと思います」
仕事や家庭など、それぞれの事情を抱えながら学び続けてきた卒業生たち。その集大成ともいえる今日この舞台に対し、中山先生は語ります。
「どうしてそこまでして学ぶのかと周囲に問われたかもあったかもしれません。しかし、その問いに対し、みなさんは自らの作品と、今日という日をもって、見事に答えを出されました。本当におめでとうございます。生活と芸術、クリエイティブを切り離すのではなく、生活の中にクリエイティブを力ずくで手繰り寄せてきた。その学びの筋力みたいなもの、それがきっと最大の財産なんじゃないでしょうか」

また、中山先生は、卒業生の出した答えのひとつである卒業制作を鑑賞して興味深く面白い作品がたくさんあったと振り返りました。会場には、静かに佇む作品、インパクトの強い作品、その隣にある別の表現を醸し出す作品、全ての作品を同じ熱量で、異なる視点で見つめながら、その魅力を卒業生たちに伝えました。
そして、芸術やデザインに携わる人たちが持つ力について、「誰かのサイン一つで明日が変わってしまうかもしれない、そんな予測不可能な社会ですが、僕は芸術とデザインで世界は平和になると思っています。世界中の人々がアーティストでデザイナーで、明日つくりたい作品があれば、戦争なんて絶対に起こらないと思います」と力強く述べました。
最後に、これからそれぞれの歩みを進めていく卒業生に次のメッセージを贈りました。
「これからみなさんが、芸術を伝えていくことで、世の中を明るく変えられていくんじゃないかなと思います。僕もみなさんに倣って、何歳になっても勉強したいと思います。明日からニコニコ生きてください」
そして祝辞が締めくくられ、その後、学生サークル「和太鼓 悳(しん)」が祝奏「弾(だん)」を披露しました。それぞれ違った軌跡を辿り、今この日を迎えた卒業生。卒業という新たな門出を迎えられる今日の日に、力強い和太鼓の音色が講堂に響き渡ります。ひとつひとつの音が心に重く伝わり、背中を力強く押してくれるような演奏でした。

卒業の辞を読むのは、芸術学科 歴史遺産コースの中野 秀行さん。2017年に入学した中野さんの9年間の学生生活には、コロナ禍という大きな出来事もありました。一方で、比叡山延暦寺での2泊3日のスクーリング授業など、印象深い学びの機会もあったといいます。そうした経験を振り返りながら、学生生活について言葉を紡ぎました。
【卒業の辞】
3月の柔らかな風が、学び舎の窓を叩く季節となりました。
大きな志を抱いて、このキャンパスの階段をのぼった私たちが、本日、晴れて学位を授かり、卒業の日を迎えられましたこと、これ以上の喜びはありません。私たちの門出を祝う素晴らしい式典の場を設けていただき、佐藤学長はじめ、諸先生方、事務局の皆様、並びにご臨席賜りましたご来賓の皆様に、卒業生一同、心より御礼申し上げます。
私が大学に入学した年は2017年、今から9年前のことです。
学生生活において、最も印象に残っているのは、2018年、スクーリング科目で訪れた比叡山延暦寺です。2泊3日の間、山にこもり世界遺産延暦寺について、広く深く学ぶ時間となりました。
全国から受講のため、大きな荷物をもった仲間が集まりました。
共に写経すると思いのほか上手に書け、共に精進料理を食べるとさらに美味しい。それは、同じ志をもった仲間たちがいるからだと、実感する時でした。
朝、まだ夜が明けない寒い空気の中、私たちは境内に集まり、その時を待ちました。比叡山、山中の闇の中から、段々と近づいてくる、修行僧の気配を感じると、私たちは一列に座り気を静めました。目の前を足早に過ぎていく修行僧、この一瞬の時間を体験できたことは一生忘れることはありません。
このように学友にもめぐまれ、充実した学生生活を送っておりました。
しかし、2020年、その姿が一変しました。
新型コロナウイルス感染症が流行し、社会全体で、外出が自粛され、密をさける3密回避という言葉も日常で使われておりました。当たり前だった対面講義もなくなり、戸惑いもありました。
そのような変化の激しい社会の中でありましたが、私たちが安心して学びに励み、今日という日を無事に迎えられたのは、大学関係者の皆様の、手厚いご支援があったからこそだと感謝しております。
本日、こうして一堂に会し、互いの顔を見ながら、卒業の時を分かち合える喜びは何物にも代えがたいものです。
私がはじめて「生涯学習」という言葉を知ったのは、今から35年程前のことです。地元のお寺のご住職が、法話の中で申されました。「これからは生涯学習の時代であり、学びには、年齢や時間に制限はない。」そのように教えられたと記憶しています
学びたい時に、学びたいことが、学べる場所、いつでも本物が学べる場所、それが京都芸術大学であり、私は、本学を学びの場に選んだことは、間違いなかったと今、確信しております。
今年は、オリンピック、ワールドベースボールクラシック、サッカーワールドカップの開催年です。日本で学び、技術を身につけた勇ましい選手たちが、果敢に世界でチャレンジし活躍している。そのような姿を、目の当たりにできるすばらしい年です。今日、卒業していく我々も、本学にて文化・芸術を学び、知識・技を身につけ、それぞれの世界でチャレンジし、活躍していく決意であります。そして、芸術を通して、人の心に豊かさを届けられる人になれるよう、自分自身励んでまいります。
最後になりますが、御指導頂きました先生方、様々なサポートをして頂きました職員の皆様、同じ時間を過ごした学友たちに感謝申し上げます。
そして、いつも支えてくれた家族に本当に感謝しています。
京都芸術大学のさらなる発展を祈念し、卒業の挨拶とさせて頂きます。
令和8年3月14日
令和7年度 卒業生代表
京都芸術大学 通信教育部芸術学部 芸術学科 歴史遺産コース 中野 秀行
最後に、徳山豊理事長が、歓送の辞を述べます。
徳山理事長は、自分が卒業制作展に訪れた際に感じた、展示空間自体の空気感について話します。

「一番印象に残るのは、お孫さんやお子さんが来られている様子です。小さなお子さんの目が、作品を見るとキラキラするんですよね。自分のおばあちゃんやおじいちゃん、お父さんお母さん、普段は見ない大人の作品から、なにかを子どもが感じているんだと思います。そんな力がみなさんの創作にはあるんですね」
また、卒業生たちの未来の創作について、最後に語られました。
「これから卒業しても創作を続けてください。そして、一人でも多くの人たちに、感動する心や、人の豊かさって何だろうということを考える、そういうきっかけを与え続けてください」と卒業生にエールを贈りました。
式典の締めくくりとして、学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。

卒業生の閉式後には、各学科ごとに分かれて分科会を行い、卒業生ひとりひとりに証書を授与しました。式典が終了した後には、学内で交流が生まれ、記念撮影なども行われておりました。
オンライン上で切磋琢磨し、対面で会うことは久しぶりか、初めてであることもある仲間たち。互いに声をかけあって、卒業を祝い合い、交流が盛んに行われていました。
卒業後も、京都芸術大学で得た学びや、そこで築いた友人関係を大切にしながら、地域や職場、家庭で創作を続けていかれることを、心より願っております。
卒業生のみなさん、この度はご卒業、誠におめでとうございます。
(文:文芸表現学科3年生 千葉美沙希、撮影:白井茜)
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