
京都芸術大学では2025年3月14日(金)・15日(土)に京都・瓜生山キャンパスにて通学課程および通信教育課程の学位授与式・卒業式が執り行われ、通信教育課程からは修士317名、学士1400名がそれぞれ学位を授与されました。
この記事では、通信教育課程の学位授与式・卒業式の様子をレポートします。
日本全国や海外から、18歳から90代の方までが主にオンラインで受講する本学の通信教育課程。学位授与式・卒業式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、当日会場に来られなかった卒業生・修了生もオンラインで式典に参加することができました。また、全国・全世界にいる卒業生・修了生やご家族のみなさまにもライブ配信を通して、卒業生・修了生の晴れやかな姿をご視聴いただけました。
(式典のアーカイブ配信はこちら)https://www.youtube.com/live/oYo1jjJ26yc
卒業生・修了生のみなさんの入場が終わり、開式の辞とともに式典がはじまります。まずは、本学の理念「京都文藝復興」を松平定知教授が朗読しました。

次に、卒業生・修了生を代表して大学院317名・学部1400名の代表者に吉川左紀子学長から学位記・卒業証書が授与されました。
修士課程からは修了生317名を代表して、学際デザイン領域の浅村 憲郎さんが学生代表を務めました。卒業証書の授与では、4学科それぞれの学生代表に証書が授与されました。




吉川左紀子学長は、祝辞で「1998年、徳山詳直初代理事長の強い思いで本学の通信教育部はスタートしました。当時は、通信教育で芸術教育を行うことに、多くの教員が反対したそうですが、現在では学生数は17,000名を超え、学生の年齢は10代から90代までに広がっています。通信教育によって『多世代の学び』を可能にした新しい高等教育の在り方を実現しています」と通信教育部の沿革に触れ、年長者が若い人に教えるという従来的な学びのあり方だけではない多世代の学びの重要性を強調しました。

また、吉川学長自身が通学部の映画学科の卒業制作作品に出演した経験を通して、「教える側も教わる側も世代や年齢という枠組みを外して学ぶことができるのが、芸術大学の学びであり、通信教育はその最先端だ」と感じたというエピソードを話しました。
生成AI技術が発達している昨今、芸術の分野では高度に発達した技術を活用しながらも、豊かな感覚や感性をどうしたら磨いていけるのかが重要になる、と吉川学長は語ります。
そして、締めくくりに以下のメッセージを贈りました。

「本年からはじまったプロジェクト『藍の学校』の報告書の中で通信教育部の大辻都先生は『アートライティングで最も大切なことの一つは、取材対象への観察力である。単にデータを集めるだけでなく、職人の人となり、仕事との関係を伝え、そのエピソードを大事にする。そして、仕事場の様子、職人の方の口調、表情、情報のすべてを全身で受け取りにいく必要がある。感覚を総動員して観察され、書かれた文章は、人や仕事の魅力を読者にもいきいきと伝えるはずだ。報告書に収録された受講生たちの渾身の文章、そしてその場の光や空気を映す写真をぜひとも味わってほしい』と書かれていました。みなさんも、五感を使って得た感覚や感性を大切にしながら、本学で一緒に学んだ友人たちとのネットワークを大切にしてください。そして、ひとりひとり自己研鑽をさらに重ねていってほしいと願っています。芸術の学びはみなさん一人一人の過去と現在、未来を豊かにし続けます」
続いて、本学の姉妹校である東北芸術工科大学の学長、中山ダイスケ先生より祝辞をいただきました。

中山先生は「今年も通信教育課程の卒業展・修了展を見て、やっぱり特別だなと思いました。学生の世代も背景も様々で、みなさんの『好き勝手感』が半端ないです。それが一堂に介しているので、展覧会全体から生まれるシナジーは尋常ではないと思っています」と卒業展・修了展を鑑賞しての感想を述べ、展示で印象に残った作品を紹介しました。
会期中、作品を制作した学生と話すこともあったという中山先生。美容師を営みながら写真を学ぶ学生や鎌倉に移住して作品制作を行う学生との交流を通して、美しいものを作り続けてきた人の一つの到達点を見たように感じたそうです。
本学の通信教育課程の卒業・修了展は年齢も性別も国籍も超えた表現がひしめき合い、東北芸術工科大学・京都芸術大学両校の建学の理念である「藝術立国」や「文芸復興」という理想の一端が見えた素晴らしいものだったと、中山先生は語ります。
中山先生は、改めて、アーティストは生き方であると感じたと述べ、卒業生・修了生に「みなさんは受け身ではなく、ご自身の理由とタイミングで能動的に通信教育部に入学され、学ばれました。みなさんはこれからも学び続け、表現し続ける人生を送っていくのだと思います。みなさん、どうかそのまま格好よく生き続けてください。そして、クリエイティブに満ちた、本学が理想とする平和な世界を一緒に作っていきましょう」と熱く呼びかけました。
そして、学生サークル「和太鼓 悳(わだいこ しん)」が祝奏「つながり」を演奏しました。講堂に響く音色は、卒業生・修了生の今後を励ますように力強く、私たちの心に響きました。

卒業生・修了生代表として修了の辞を読んだのは、通信制大学院 空間デザイン分野フィッシュバーンアキコさん。コミュニケーションデザイン領域空間デザイン分野の一期生として入学したフィッシュバーンさんは、「この領域には年齢、経験、出身地など、異なる背景を持った方々が全国から集っており、まさに多様性の縮図といった学び舎でした」と学生生活を振り返ります。
修了の辞
令和六年度、京都芸術大学・大学院の 学位授与式・卒業式にあたり、吉川学長並びに諸先生方、ご来賓の皆様、そして、この式典を催してくださった 関係者の皆様方に、修了生・卒業生を代表いたしまして、心より御礼申し上げます。
私は、コミュニケーションデザイン領域、空間デザイン分野の一期生として、2年間学び、研究してまいりました。この領域には、年齢、経験、出身地など、異なる背景を持った仲間が、全国から集っており、まさに「多様性の縮図」といった学び舎でした。仲間たちは 皆一様に研究熱心で、彼らの意欲的な姿に、常に刺激を受け、その研究の秀逸さに、しばしば心を揺さぶられました。
修士研究のテーマを模索していた令和6年の春、私は、地元商店会の方から、10年間休止中の商店会について、相談を受けました。その「お困り相談」は、話を伺ううちに「立て直し依頼」となり、気づけば自ら、商店会再起動の旗振り役を務めることとなりました。
大変荷の重い依頼でしたが、社会課題の解決を目標とする「コミュニケーションデザイン」を学ぶ私にとって、この商店会問題は「デザインと実践」双方を行うことのできる最高の機会であると考え、この依頼自体を修士研究といたしました。
研究の過程では 様々な気づきがありました。中でも「地域の問題は地域で解決し、デザインしていくこと」が「持続可能」という観点において非常に重要であり、また、地域愛やシビックプライドを醸成する「地域教育」の必要性も、強く感じるようになりました。
地域問題の解決から始まった研究は、ご指導いただいた 素晴らしい先生方のおかげで錬成され、修士研究が終了する頃には、私の中で「地域教育」や「社会教育」への、新たな関心や目的が生まれていました。
今後は、新たに「地域教育」に関わっていきたいと考え、先日、地域のコーディネーターと称される「社会教育士」の資格も取得いたしました。
20代の頃、私は国文科の大学生で、芸術家岡本太郎の母である、作家「岡本かの子」の研究ゼミに所属しておりました。その岡本かの子の代表作「老妓抄」の中で、主人公の老妓がこんな歌を詠んでいます。
「年々に 我が悲しみは深くして いとど華やぐ いのちなりけり」
私は「学べば 学ぶだけ違う景色が見える」という学びの魅力に取り憑かれて、ここ数年、大学、大学院と学び続け、そして今、私は、この大学院に入る前とは「違う景色」を見ています。
ここでの学びや 研究があったからこそ生まれた「違う景色」、それを楽しみながら今後も進んでいきたいと思います。
岡本かの子の歌う「いとど華やぐ いのち」、それは「もっともっと違う景色が見たい」という、年齢を重ねても止むことのない好奇心のことなのかもしれません。
最後に、ご指導いただいた先生方、研究を応援してくれた家族や友人に、心からの敬意と感謝の意を表するとともに、京都芸術大学が、多くの方々の 生涯にわたる「学びの羅針盤」として、一層発展していくことを祈念し、修了の辞とさせていただきます。
令和6年度修了生・卒業生代表
京都芸術大学修士課程 コミュニケーション領域 空間デザイン分野
フィッシュバーン 暁子
最後に、徳山豊理事長が歓送の辞を述べました。徳山理事長は卒業式開始前に卒業生・修了生が記念写真を撮る姿を見て、通信教育部の卒業制作展はオリンピックに似ていると気づいたと話します。

「育った地域も、住んでいる場所も違う。バックグラウンドも年齢も服装も違う。そうした人々が一つの種目、一つの競技の中で一緒に戦い、一緒に汗をかく。一緒に頂点を目指すオリンピック選手の姿と、みなさんの卒業展・修了展の光景がリンクして見えたんです。ただ、みなさんの卒業展・修了展がオリンピックと違うのは、オリンピックはそれぞれの競技で世界一を目指すけれど、みなさんは自分の限界を越えることを目指すところだと思います」
学生たちのクリエイティブに向けるエネルギーが、さらに次の世代のクリエイターたちの光になると徳山理事長は話し、「みなさんも卒業で終わりではなく、次のステージにステップアップして、光り輝き続けてください」と卒業生・修了生にエールを贈りました。
式典の締めくくりとして学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。


卒業式の閉式後には各学科ごとに分かれて分科会を行い、卒業生・修了生一人一人に証書を授与しました。卒業式・分科会の終了後には、学内のあちこちで記念撮影が行われていました。これまではオンラインで繋がって切磋琢磨してきた通信教育部のみなさんも、集合写真のときには互いに声をかけ合い、卒業を祝い合っていました。



通信教育課程では卒業後も、卒業生・修了生全国公募展、airUコミュニティ、通学課程と連携した同窓会など、様々な芸術と繋がる仕組みやイベントが用意されています。卒業生のみなさんが今後も地域社会や職場、家庭で芸術活動を続けられることを祈念して——。卒業生・修了生のみなさん、この度はご卒業・修了、誠におめでとうございます。
(文=上村裕香、写真=高橋保世)
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。