REPORT2024.04.25

青春の日々を走り続けて―2023年度 京都芸術大学 通信教育課程 学位授与式・卒業式

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学では2024年3月15日(金)・16日(土)に京都・瓜生山キャンパスにて通学課程および通信教育課程の学位授与式・卒業式が執り行われ、通信教育課程からは修士170名、学士1,073名がそれぞれ学位を授与されました。

この記事では、通信教育課程の学位授与式・卒業式をレポートします。

 

日本全国や海外から、18歳から90代の方までが主にオンラインで受講する通信教育課程の皆さん。式典の様子は大学公式のYoutubeチャンネルにて中継され、当日来場できなかった/されなかった卒業生・修了生の皆さんもオンラインで式典に参加することができました。

会場での参加を選択された卒業生・修了生のみなさんの多くは、キャンパスに来ることもクラスメイトと会うのも久しぶり。もしかしたら、はじめて、という方も少なくないかもしれません。

そう思うと、晴れ着に身を包んだみなさんが「もっと歩きやすい靴にしておけば!」と口々に言いながら講堂への階段を昇る光景も、なんだか尊く感じられます。

 

卒業生・修了生のみなさんの入場が終わり、開式の辞とともに式典がはじまります。まずは、本学の理念「京都文藝復興」を本学教授の松平定知先生が朗読しました。

 

つぎに、卒業生・修了生を代表して大学院1名・学部4名の代表者に吉川左紀子学長から学位記・卒業証書が授与されました。

学長祝辞では、今年度は通信教育課程開設25周年かつ芸術教養学科開設10周年を迎える節目の年であり対面での記念事業を実施できたこと、そして開催中だった卒業・修了制作展のクオリティの高さを称えました。

また、「触覚」をトリガーとするコミュニケーション研究が進んでいる状況に触れ、通信教育での芸術教育も従来の「視覚」「聴覚」分野や2024年4月に開学する「味覚」分野の「食文化デザインコース」に加え「触覚」「嗅覚」の領域まで広げることができるかもしれないという未来を語りました。そして、締めくくりに以下のメッセージを贈りました。


卒業生の皆さん、一緒に学んだ友人たちとのネットワークをぜひ大切にしてこれからも歩んでください。一人一人の自己研鑽を、さらに重ねていってほしいと願っています。芸術の学びは、皆さん1人1人の経済の過去、そして未来の時間を豊かにしてくれます。

私たちはこれからも様々な工夫を重ねて、本日卒業される皆さんの芸術への情熱を末永く応援し続ける大学でありたいと思っています。
通信教育課程修了生、卒業生の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。


つづいて、本学の姉妹校である東北芸術工科大学の学長、中山ダイスケ先生より祝辞をいただきました。

やっぱりここの通信教育課程の卒業展・修了展っていうのは、格別です。種類も多いですし、こだわりの範囲がとにかく広い。みなさん、ほんと好き勝手にやってる。やりきり感が半端ないといいますか。

その感じっていうのは、やっぱり人生の中で「自分から学ぼう」としていらっしゃるからなんだと思うんですけど、それが一度に集まることのシナジーみたいなものって、ちょっと他の卒展にはないんですよね。

 

中山先生は展示で印象に残った作品を紹介し、卒業生・修了生の皆さんに「豊かな社会、本当にクリエイティブな社会を作っていきましょう。本日はおめでとうございます」とエールを贈りました。

つづいて、学生サークル「和太鼓 悳(わだいこ しん)」の祝奏「響(さん)」を演奏しました。講堂に響く音色は、卒業生・修了生の今後を励ますように力強く、私たちの心に響きました。

卒業生・修了生代表として修了の辞を読んだのは、通信制大学院 美術・工芸領域 日本画分野を修了された津久井浩子さんでした。

津久井さんは6年前に通信教育課程 日本画コースに入学され、大学院に進学されたのちは『自然を描く、「祈り」としての創作活動』をテーマに制作活動に励まれてきたとのことです。

支えてくれた家族や、あたたかく見守ってくださった先生方。そして、大人になってからできたあたらしい友人たちは一生の宝物となったと語ります。

「京都芸術大学で学べてよかった、夢を諦めなくてよかった。今の率直な気持ちです」

最後に、徳山豊理事長から歓送の辞がありました。

理事長になってから9年間、今まで見た通信教育課程の卒業・修了制作展の中でいちばん見事だったと皆さんを称えました。

大学も、皆さんとともに青春を走り続けます。どうぞこれからも健康に気を付け、目標に向かって、そして好奇心を持って学び続けてください。心から応援いたします。本日は誠にご卒業・修了おめでとうございます。ありがとうございました。


式典の締めくくりとして学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。

 

卒業式の閉式後には各学科ごとに分かれて分科会を行い、卒業生・修了生お一人お一人に証書を授与しました。授業やイベントのことを懐かしんだり今後のことを話し合ったりと、お世話になった先生方や学友たちと過ごす大切な時間となりました。分科会の様子をお届けします。

 

今回は特別取材ということで、今年度はじめて卒業生を輩出する美術科・書画コースの様子をお伝えします。

書画コース、はじめての卒業生

 

京都芸術大学通信教育課程には、書と水墨画を完全オンラインで学ぶことができる日本初の書画コースが2年前に開設されました。

中国に古くから伝わる「書画同源」という考え方(「文字(書)」と「絵画(水墨画)」は本来切り離すことのできない、筆墨によって生み出される表裏一体の芸術である)に基づき、「書画」の歴史と技法を両輪で学ぶカリキュラムは国内でも唯一無二のもの。

今回ご卒業されたのは、開設時に3年次編入学をされた皆さん。2年間の学びを終えて晴れやかな表情をした皆さんが教室に集まると、書画コースの分科会がはじまりました。

暗くなった部屋に投影されたのは、2021年の10月ごろに撮影された書画コース開設のお知らせ動画。

「なんか真面目な顔でしゃべってますねえ」
「でもなんだか塩見先生のほうが顔がつるっとして、変化度が高いですよ」

 

 

映像が終わるなり、書画コース講師の桐生眞輔先生(「書」担当)と塩見貴彦先生(「水墨画」担当)さながら漫才コンビのような掛け合いがはじまりました。会場の盛り上がりは、オンラインでご覧になっていた卒業生の皆さんにも伝わったことでしょう。

書画を専門として学ぶ4年制課程というのは類例があまりなく、その上「書画コース」は完全オンラインで学びを完結するカリキュラム(「手のひら芸大」)。先生方にとっても、教えを受ける側である学生のみなさんにとっても、はじめての試みでした。

先生方は卒業制作について「どの作品も大変素晴らしかった」と卒業生の皆さんを称え、塩見先生からは「お互いに学びを0から産み出すという苦しみの中で、ここまでついてきてくださったことに感謝します」、桐生先生からは「皆さんの成長を感じた2年間。この教育に携わることができて本当によかったと感じています」とのお言葉がありました。

オンラインで視聴している皆さんを含む全員の卒業名簿を読み上げたのち、代表者に卒業証書が授与されました。


つづいて、卒業制作における書画コースのコース賞である「黎明賞」の授与がはじまります。

と、思いきや? またもや映像が投影されました。桐生先生と塩見先生が老舗の墨・書道用品メーカーである墨運堂さんを訪問し、コース賞の記念品である「にぎり墨」を作成しているところの動画です。

※にぎり墨職人によって円筒状に延ばされた墨を手のひらでにぎり記念品として持ち帰るアクティビティ。


墨というものは、作りたてはほかほかでやわらかいのだそうです。それを先生方が握り締め、桐生先生がこのために制作したという「藝」の判子を捺し、完成です。

記念品の製造過程を確認し終えたのちに、塩見先生から「黎明賞」に込められた想いをお話いただきました。

 

『黎明』というのは、夜明けから明け方に移り変わるときの、少し明るくなってきたような状態。皆さんも、明るい方向に向かって行ってください。自分が進みたい方向はどこなのか、明るい方向というのはどこなのか、と模索することが大事です。誰かの指示を風のように受けてあちこち方向を変えてしまうグライダー人間ではなく、ぜひ自分の進みたい方向に進む飛行機人間になってください

 

つづいて桐生先生からは在学の記念となるように企画したという記念筆セット「翔架」に込めた意味や制作時の裏話をご説明いただきました。

 


一人の卒業生の方が、元気よく「先生! 『架』の字の縦棒が右に寄っているのは、『翔』の字とのバランスを取るためなのでしょうか」と質問をします。

すると途端に、桐生先生は授業モードになり、どんな意図をもってこの「書」を構成したかを解説してくださいました。卒業生のみなさんは「なるほどー!」「おおー!」と大盛り上がりで、書道をやったことがない私も思わず楽しくなってしまいました。


これが皆さんの2年間だったんだ、と思うとなんだか羨ましくなってしまう、そんな素敵な時間でした。


学科賞受賞者 菅原さんへのインタビュー

卒業制作作品「光が書く -2024.01.14-」で学科賞を授賞した菅原捺未さん。当日は、1歳になるお子さんとご家族の方とともに、分科会に参加されていました。

― ご卒業・ご受賞、おめでとうございます。3年次入学ということは、いちど別の大学をご卒業されたんですよね。2回目の大学卒業式、いかがでしたか?

「なんだか不思議な感覚です。母もまさか『一度は社会人になった娘の卒業式にもう一度出るなんて』って感じですよね(笑)」

 

― ご入学のきっかけは。

「会社員になってからも自分なりに書道を学んではいたのですが、たまたまインターネットで書画コースが開設されるっていうのを見かけて。パートナーに相談したら『いいじゃん、入りなよ』って快く背中を押してくれたんです」

パートナーの方(※お隣でインタビューを見守ってくださっていました)「どうぞどうぞ、って応援する気持ちでした(笑)」


― 実際に学ばれてみて、いかがでしたか。

「1年目は楷書・篆書・隷書等の書体をいちから丁寧に指導していただき、基礎をしっかり学ぶことができました。それで、2年目は卒業制作が中心だったのですが、本当に自由にやらせていただいて、楽しかったです」

「書道という枠のなかでここまで表現を自由に追究させていただくのは、京都芸術大学でしかできなかったと思います」


― すばらしいですね。もうひとつの特徴は「完全にオンラインで完結する学び」にあると思いますが、実際に受講をしてみていかがでしたか。

「最初は確かにどうなんだろうと思ったんですけれども、今ではオンラインで家で手軽に気軽にできるのが魅力だと思っています。通学するとそれだけで時間が掛かりますが、オンラインなら家で先生の丁寧な指導を動画で見ることができる。子育てのこともあり、オンラインだったからこそ2年間続けられたんだと思います」

ご家族の方「結婚をして子育ても始まってしまうとなかなか大学で学ぶことは難しいと思うんですが、オンラインならそれが可能なんだと思います。書画コースは書道を体系的に学ぶことのできる日本でも珍しい学科で、本人の希望にも合っていました。入ってからも楽しそうに学んでくれていたようで、よかったと思います」


― お子さんは先月1歳になったばかりとお伺いしましたが、子育てと両立しながら卒業するのは大変だったのでは。

「入学してから家族が増えることが発覚したので、1年目に単位を集中して取得したりと工夫しました。寝かしつけたあとに課題に取り組んだりでも、夢中になって取り組んでいたので、楽しかったです」


「明るいほう」へ向かって

分科会のほうでは懇談会に入る前に、皆さんで記念写真を取りました。

書画コース第1期卒業生となる皆さんがご卒業後も明るいほうに向かって「書画」の活動を末永く続けていかれることを、大学一同心より応援します。

(文=天谷 航、写真=吉見 崚)

 

京都芸術大学 通信教育課程 公式サイト

 

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