REPORT2026.03.14

京都デザイン教育

企業と連携して生まれたデザインを、人の生きる社会に照らして提案する。2025年度社会連携展が開催!

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  • 出射 優希

2025年度社会連携展がみやこめっせにて開催!

2026年2月6日(金)・7日(土)に、京都芸術デザイン専門学校の作品展「社会連携展」が、京都市勧業館(みやこめっせ)にて開催されました。

京都芸術デザイン専門学校では、「design for happiness」というスクールコンセプトのもと、授業を通じて企業・自治体・団体などの多様なパートナーと連携し、世の中をより良くするための解決策を提案・発表することに学生主体で取り組んできました。本展では、全6コースの1・2年生が1年間取り組んできた社会連携活動の成果や過程の展示、企業の方をお迎えしてのプレゼンテーション、などが行われました。本記事では、展示や授賞式の様子をご紹介いたします。

入場してすぐ左手に展示されていたのは、包括連携協定を結ぶ株式会社ルピシアと共同で行われた「京都・地域限定茶缶デザインコンペ」の受賞作・応募作。126名の案の中から、京都・地域限定茶缶には、松下結渚さん(ビジュアルデザインコース|1年生)のデザインが、タップカーは島﨑花夏さん(キャラクターデザインコース|2年生)のデザインが採用されました。

京都・地域限定茶缶のデザインが採用された松下結渚さん
タップカーのデザインが採用された島﨑花夏さん

今回デザインされた3つの味の京都・地域限定茶缶はすでに販売されているほか、タップカーは本社のある北海道を中心に、イベント出展等で活躍しています。

コンペ開始時にはルピシアの皆さんがキャンパスまでお越しくださり、学生たちへ、商品の説明や試飲をご提供いただくなど、一貫して丁寧に学生たちと向き合ってくださいました。
代表取締役社長の伊藤 晶さんは、創業時からすべて自前で商品の買い付けやデザイン、広報などを手がけ、熱量を大切に商品を届けてきた一方で、前例主義にも陥りやすくなっていると語ります。そんな中で、「社内のデザイナーからは出てこないような視点もたくさん拝見させていただいて、刺激になったし学びも多かった」と、学生の作品を深く受け止めてくださいました。

ビジュアルデザインコースの展示では、滋賀県の魅力を発見発掘するための滋賀ファンプロジェクトや、外食企業向けに食品の受託生産を手がける株式会社サンフーズジャパンの2030年を見据えた企画・プロモーションの提案などを行いました。

サンフーズジャパンとの連携では、低アレルゲン製品の提案や、企業のこれまでとこれからを伝える博物館、既存商品をレンジ調理に対応させる一般家庭向けの商品など、実際に製造工場を見学させていただいたからこそ見える企画が並びます。

2年生が取り組んだ滋賀ファンプロジェクトでは、たぬきの絵付け体験をはじめ、滋賀県の文化や、地域に眠る価値に着目した体験型の企画提案が並びました。2年生ならではの丁寧な展示構成も光ります。

次はコミックイラストコース。京都の伝統産業工芸品のプロモーションや、認知度向上を目的としたリーフレットの制作を行ったほか、宮川町芸妓組合・宮川町お茶屋組合と連携した推し活プロジェクトや、祇園祭について遊びながら学べるカードゲーム、滋賀ファンプロジェクトと、幅広い連携事業に取り組みました。

宮川町との連携では、芸舞妓をモデルにした缶バッジやトレーディングカードなど、組合のみなさんに監修いただき、簪の花の種類や下駄の形まで、ディテールにもこだわったイラストでグッズを制作。推しを見つけ、楽しみながら花街の文化を深く知ることができます。

伝統文化の背景や積み重ねられた歴史、作り込まれた細部を、現場の職人や関係者にもリサーチを重ねて作られた学生の作品には、楽しく文化を学んでもらいたい、という思いがあふれています。

続いてファッションクリエイトコースでは、株式会社ニッセンとのアップサイクル・アパレル雑貨デザインや、ブックオフコーポレーション株式会社との古着リメイクプロジェクトなど、学生たちはファッション業界が抱える環境問題と向き合い、廃棄予定だった商品サンプルや古着などを素材に、新たなブランドと商品の企画・制作を行いました。

子ども服へのアップサイクルを考案したグループや、同世代の女性をターゲットにしたオーダーメイドブランドなど、古着や廃棄予定のサンプルをどのように活用し、誰に、どんなふうに着てもらいたいのか、各グループの視点が光ります。

また、隣り合うハンドメイドコースでは、秀和株式会社の新商品企画を想定し、がま口を使用した財布・バッグの制作や、株式会社エンドレスのアップサイクル雑貨デザインとして、同社が運営するパーツクラブで不良品として販売できなくなったハンドメイド資材を活用した雑貨制作を行いました。

そして、ずらりと建築模型が並ぶインテリアデザインコースでは、梅小路ポテルと連携して行われた“京都に住み続ける”を考えた建築空間の提案や、“地域とつながるこれからの宿泊”をテーマに株式会社拓宅と取り組んだ宿の企画・空間デザインが展示されました。

京都で学生生活を過ごす学生ならではの視点で、京都の文化的な魅力や、土地のつくりなどをリサーチ。対象とする敷地をまちの中から見つけた、宿、飲食店、仕事場が一体となった複合施設の構想など、その空間の役割を固定せず、暮らす人のスタイルに合わせて作り替えるられる寛容な建築物を提案したグループもあり、まちや人の姿を丁寧に見つめた痕跡がプレゼン用のボードに表れています。

キャラクターデザインコースは、株式会社チェリオコーポレーションのプロモーション動画を制作。自販機の中でも、安価なドリンクを購入できるチェリオのターゲット層「10代顧客の拡大」のため、SNS想定のショート動画およびプロモーション企画を提案しました。また、IT業界のパイオニアであるBIPROGY株式会社と協働し、キャラクターとテクノロジーで動物園の新たな魅力を創造するプロモーション企画の提案も行いました。

企業の感じている課題に対して、キャラクターデザインを用いた解決策とともに、テクノロジーでアイデアを形にする力や、動画を制作する技術が掛け合わされた提案の数々。イラストを描く技術だけでなく、そのイラストをどうみせるかという部分まで、学生自身で考えます。会場内には実物のチェリオの自販機が置かれ、学生の提案を受けてドリンクを購入することもできます。

社会連携展では、各コースごとに「ビジネスタイム」という企業の方へのプレゼンの時間が設けられ、学生から社会に向けて自分のデザインを提案します。
始まる前は緊張した表情の学生たちも、プレゼンがはじまると提案するデザインについて、制作の経緯やプロセス、ねらいについてしっかりと語ることができ、思考の深さが話す言葉にも現れていました。

また、会場内には今回コースごとの展示だけでなく、他にも行われてきた連携活動の様子をお伝えするスペースや、展示に関連した商品や学生たちの個々の世界が垣間見えるグッズ売り場も。

テーマ設定からリサーチ、企画、制作、そして発信まで。教室の中だけでは完結しないプロセスを通して、学生たちは「誰のためのデザインなのか」「社会にひらかれた表現とは何か」を問い続けます。完成されたアウトプットだけでなく、試行錯誤の軌跡や対話の積み重ねも含めて紹介される本展は、1年生にとっても、就職を控える学生にとっても、進学を予定する学生にとっても、自身の学びを振り返り、社会に照らしてデザインを見つめ直す機会となりました。

 

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  • 出射 優希Yuuki Idei

    2002年兵庫県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。卒業後、ライターとして活動中。

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