REPORT2022.01.11

教育

今ある力のすべてを出し尽くす!― 京都芸術デザイン専門学校のプレゼンテーションコンテスト「ぷれこん」

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術デザイン専門学校で学ぶ将来デザイナーやクリエイターを目指す学生たちが、今ある力のすべてを尽くしてプレゼンテーションを行う「ぷれこん」。京都リサーチパークからの専門学校の学生と一緒に何かしたい、との呼びかけに応える形で2018年度からビジュアルデザインコースで始まったこの取り組みは、2019年度には全コースで開催される一大イベントになりました。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となりましたが、今年度は感染対策を講じつつ、学内でおこなわれることになりました。全コースの学生が懸命に取り組んだ中から、今回はビジュアルデザインコースの様子をお届けいたします。

 

今ある自分のすべてを出し尽くすプレゼンテーション

「ぷれこん」では、2年生のすべての学生がプレゼンテーションスキルの向上を目指し、プロの皆さんに評価をいただくことで、自身の課題点を見つけて今後の学びにつなげていきます。会場には日ごろ連携している企業のみなさまに審査員としてお越しいただき、社会人として通用するレベルかどうか、という視点で評価をしてもらいました。評価は次の4段階。
 

4.ビジネスの場面において通用するレベル
3.新卒採用として声を掛けてみたいレベル
2.これから一層の努力を期待する学生レベル
1.プレゼンテーションに対する準備・練習不足

 

視覚的にも経過時間が伝えられる

プレゼンの時間は3分間。2分が過ぎるとベルがチンと1回、2分半が過ぎるとベルが2回鳴り、学生たちは時間を意識しながらプレゼンテーションをまとめます。


ビジュアルデザインのテーマは『京都を元気にするプロジェクト』。まず、学生たちは4~5人のグループを組み、そのグループで企業を選定して撮影など協力しながら進めていきます。架空の企業やブランドなどが提示されるのではなく、実在する企業をクライアントとして選ぶ、またその企業の課題をみつける、という実践的な取り組みです。編集やどういった形で見せていくかというアウトプット、すなわち30秒のプロモーションCMはそれぞれ個人が制作。そして当日は30秒のCMを会場にいるみなさんに見ていただきながら、1人ずつプレゼンテーションをしていきました。

 

 

出来上がったCMは実際にホテルで使う?気合が入った瞬間でした

ビジュアルデザインコースの総合評価で1位となった小谷美樹(こだに・みき)さんにお話を伺いました。
 

-なぜ、ラグジュアリーホテル「そわか(SOWAKA)」さんを選んだのですか?

ビジュアルデザインコースのテーマが『京都を元気にするプロジェクト』という、コロナ禍においても頑張っておられる企業を応援していこうというものでした。一番コロナの影響を受けているのはお土産屋さんとか観光に関係ある企業じゃないかとグループで考え、そこから宿泊施設を調べ始めました。SOWAKAさんは京都らしい雰囲気を楽しめるホテルとして外国人観光客から人気があったことを調べ、海外からの渡航者が減った今、宿泊客が激減しているのではないかと思い、SOWAKAさんに連絡しました。


-SOWAKAさんとはどのようにしてコミュニケーションを取りましたか?

最初に自分たちで問題点や課題を考えてまとめたものをSOWAKAさんにメールで送らせていただきました。その後、資料をみた先方より、「ここまで深く考えていただいたので、」ということで協力していただけることになりました。実際に撮影に伺った際にも改めて自分たちの企画を説明すると、SOWAKAさんも観光客が減ってきている現状をお話ししてくださいました。出来上がったCMを見ていただいた時は「自分たちのホテルの良い点を見つけて工夫して撮ってくれて良かったです」とコメントをくださって嬉しかったです。もともと動画が完成したら広報などで宣伝用にホテル側も使用させて欲しいと言われていたので、制作には気合が入りました(笑)。


-ぷれこんではどのようなことを意識して制作しましたか?

はじめはグループのみんなと差別化するのが難しかったです。そのうち色々とSOWAKAさんを調べれば調べるほど自分自身がここに泊まりたい!って思うようになって…。だったら宿泊客のターゲットを国内の人、さらには自分と同じ大学生に動画のコンセプトを絞ったらどうかと思ってイメージを具体的にしていきました。京都市内でこんなに素敵で楽しめる宿泊施設があるんだよって、同年代に伝えたい、そんな想いを込めて制作に臨みました。


-動画制作においての工夫などはありますか?

参考動画やCMを調査している時に、ストーリー性のあるものは結末が気になるから最後まで見てしまうところがあるなと感じました。それで、映像には物語性を持たせてみんなにいいな、と思ってもらえるようにしようと、動画づくりにこだわりました。具体的には「あなたとクルマ、どんな物語がありますか?」から始まる車(SUBARU)のCMが好きで参考にしました。


-小谷さんは審査員さんの評価が1位、学生さんの評価も優秀賞だったと聞いていますが。

企業さんからの評価は以下のとおりでした(ビジュアルコース田中先生より)。

声が聞き取りやすかった。SOWAKAというところがどういった場所なのかが詳しくわかって良くわかった。ドラマ仕立てのCMが学生に響く形で作られていた。30秒という短い時間のなかで良く表現できていた。

そして企業さんからのいただいた改善点は次のようなものです(ビジュアルコース田中先生より)。

もう少し楽しい要素も必要(しっかり作り上げられていた作品だったがゆえに)。ポイントとなるところにテロップなどを入れていくと良い。コンセプトの部分でなぜターゲットが大学生なのか、もう少し具体的な理由付けが欲しい。

 

 

-ぷれこんで学んだことや考え方が変わったことは?その後の学びにどのように生かされていますか?

最後の審査員の講評がとても参考になりました。「印象に残るプレゼンをして欲しい」というプレゼンの仕方に言及されたコメントがあって、私は自分のプレゼンにはまだまだ納得できていなかったので、どうやったら大人数の中で自分の作品が印象に残るんだろうと、あらためて考えさせられました。
本題に入るまでの持ち掛け方などは人それぞれの個性があって、これが正解というのはないから、伝える人に対して色々なアプローチを考えていかないといけないな、と思いました。
映像に関しては、今まではストーリー調にする以外の考え方がなかったけど、短い時間のなかで商品の良さを強く出したり、たくさんの情報を伝えるタイプのCMも今後、勉強してつくっていけたらな、と考えています。


-K展に向けて取り組んでいるコトは?

世界のプレゼン大会みたいな動画をみて、どういう話し方が心惹かれるのか、言葉の選び方などを意識しながら、他の人のプレゼンを学ぶようになりました。K展での展示(プレゼン動画)では作品をみてもらうだけで終わりではなくて、自分の想いを伝えるところまでを意識してブラッシュアップをしていこうと思っています。


-最後にビジュアルコース田中先生、コメントをお願いできますか?

小谷さんのつくった映像は物語があって心を動かされました。このCMがテレビで流れていてもおかしくないと感じました。プレゼンで出てくる商品は実際にホテルで売られているものなので、今回とは別の角度で(ストーリー調ではなく)これをもっとアピールする方法を身につけていくとさらに良いですね。小谷さんはどこに出しても恥ずかしくない学生です。

 

ビジュアルデザインコースで優秀学生に選ばれた小谷美樹さん

 

インパクトがあって印象に残る、それが大事

朝からの部と昼からの部、一日かけて行われた「ぷれこん」。すべてのプレゼンテーション終了後に審査員のみななまから講評がありました。
 

すべての学生のプレゼンに真剣に評価してくださる審査員のみなさま
プレゼンが終わるたびに一人ずつに評価表を書き込む審査員。そこには学生の成長を促すためのアドバイスの記入欄も


最初に講評された審査員からは「午前中からの審査で30秒の動画作品を40本以上みせていただきました。その中で5名の方の作品が記憶に残りました。内容として記憶に残っているのは3名、プレゼンの仕方では2名です。いかにインパクトがあって印象に残るか、記憶に残るように工夫するかが大切です」と語られました。

次の審査員は「BGMに無関心な作品が多かったです。音割れは論外で評価の対象にならないと考えました。CMの終盤にも音に神経を使って欲しい。画像と一緒に音が切れてしまうという作品が多かったですが、フェードアウトするなり、最初から曲の終わりを計算して気持ちよく画像と音とが一緒に終わる気遣いが欲しかったです。上手にフェードアウトしたり、絵と音がマッチングして終わっていたのは1~2点だったと記憶しています。BGMがフェードアウトしたところでお店の名前を出すなど工夫するだけで、かなり印象が変わってきます。今日見た感じでは映像は非常にこだわって手の込んだ作りのものが多かったので、それだけに音の扱いが残念でした。選曲も工夫されていて良かったので、その音の扱いに気を配れると同じ作品でもグッと良くなります。また、商品そのものを持ち込んだ人がいましたが、やはり現物を見せることに勝るものはないので、実際に商品を見せてプレゼンテーションをすると説得力が増して良いと思います」とアドバイスがありました。

そして最後の審査員。「今回のコンセプト“京都を元気にする”と自分の作ったCMがどう結びつくのか論理的に説明できている人が少なかったと感じます。たくさんの人のプレゼンの中、自分の作品が印象に残るためにはどうしていったら良いか、就職において面接において自身をプレゼンテーションしていくわけだから、よく考えていって欲しいですね」とお話しがありました。

 

すべての学生に向けて総評を

 

K展に向けて

最後に田中小次郎先生より「企業さまからのコメントは総括です。それぞれ個別に評価をいただいているので、後期に向けて改善して伸ばしていけるように頑張っていきましょう」とお言葉があり、締めくくられました。

2年間で学生を社会に送り出す専門学校。教職員からは入学と同時に就職を見据えた指導が行われます。学びの集大成であり2月に開催されるK展に向けて学生たちは、今回のぷれこんで改善点として指摘されたことを見つめなおし、評価されたところはますますのブラッシュアップを目指していきます。

ぷれこんで頑張ったみなさま、お疲れさまでした。K展でみなさんの成長した姿を楽しみにしています。

 

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