REPORT2025.09.10

教育

在学生と卒業生をつなぐー真夏の通信教育課程サマーフェスティバル2025

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  • 京都芸術大学 広報課

2025年8月17日(日)から23日(土)にかけて、本学・瓜生山キャンパスのギャルリ・オーブで「第16回京都芸術大学通信教育課程サマーフェスティバル2025」が開催されました。「サマーフェスティバル」は、通信教育課程で毎年夏の恒例行事として開催されている「卒業生・修了生全国公募展」、「アート・マルシェ」、「瓜生山懇親会」などの複合的イベントです。会期最終日の8月23日(土)には、京都大学教授の田口かおり氏(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)による特別講義や、卒業生・修了生全国公募展の授賞式がギャルリ・オーブにて開催され、オンライン配信も同時に行われました。

1日限定のアート・マルシェ

通信教育課程の在学生、修了生、卒業生であれば誰でも参加できる「アート・マルシェ」は、個人やグループなど参加形態も自由。オリジナルグッズを販売するほか、ギャラリーとして作品を展示したり、日頃の作品制作の発表の場として利用している参加者もいました。今年は12組の多彩なブースが出店していました。

ここではマルシェに出店された方をご紹介します。

大木美征さん「KUA PHOTOLABO」(写真コース2024年度卒業)

写真コースでは、撮影の技術から写真表現の基礎を学び、ポートフォリオの作り方をスクーリングで習得し、卒業後はそれぞれ写真家として作品を発表しています。ブースでは個展の開催や制作したZINEなどを販売されていました。大木さんは、3年前から同期の気の合うメンバーに声をかけて集まった12名でグループ「KUA PHOTOLABO」を結成し、アート・マルシェに参加しています。グループのメンバーには、現在個展中の卒業生もいて、各自卒業後の活躍を感じることができました。岩や木の板に写真を印刷していたり、見るだけでなく、触れて素材の質感を感じられる作品もあり、多彩な写真表現、作品集が並んでいました。

橋羽一恵さん「赤穂ギャベ」(大学院 工芸デザイン分野 在学生)

工芸デザイン分野を専攻する橋羽さんは、染織コースの受講者と同志で集い、兵庫県赤穂市を拠点に、手織りの椅子敷きを制作、販売しています。赤穂ギャベとは、伝統的な赤穂段通*の技法を取り入れ、綿糸を用いて手織りで作る椅子敷のことです。従来の赤穂段通では絨毯を作ってきましたが、現代の暮らしに合うように椅子織を制作しています。赤穂ギャベのコーナーには材料作りからこだわった逸品が並びます。オーガニックコットンを中心に綿糸を使用し、西脇の染め工場でオリジナルの色糸を染めてもらうこともあれば、紺屋で藍染に、織り手自ら草木染めで糸を用意することも。「工芸は手を動かしてつくるもの。」お話を伺っている間も、専用の腰折鋏で面を揃える手は止まることなく動いていました。

*赤穂段通
赤穂段通とは、兵庫県の赤穂市の伝統工芸の一つで、明治時代から昭和初期に盛んに作られた手織りの木綿製の絨毯。


Google Arts & Culture 「赤穂段通」(最終閲覧日2025年9月8日)
https://artsandculture.google.com/story/NAVROwU9qDPmKw?hl=ja

花房澄夫さん「ハンドメイドのペーパーナイフとアクセサリー」(空間演出デザインコース2014年度卒業) 

テーブルには、繊細な装飾が施されたペーパーナイフやアクセサリー等、手作りの品が並んでいました。花房さんは「ナイフの刃も、持ち手部分も花房さんが素材から手鋸で作っている」といいます。空間演出デザインコースを専攻されていたとお聞きし、テーブル上のプロダクトや彫金は本学で学ばれたものかと思いきや、これらの商品はライフワークで続けられているとのこと。お仕事でカーデザイナーをされている花房さんは、デザインの領域を広げようとリスキリングのため、本コースを受講したと教えてくださいました。

森明子さん・都築延枝さん「鉱石ミュージアムコレクション」(空間演出デザインコース2019年度卒業)

鉱石のような色とりどりのアクセサリーがテーブルに並んでいました。小さな透明の樹脂の中に和紙やインクを入れた、手作りのアクセサリー。都築さんは、在学時に先輩に誘われたのがきっかけでアート・マルシェに参加。以来、本コースの同期の森さんとブランド「鉱石ミュージアムコレクション」を立ち上げ、年に一度、アート・マルシェに出品しているそうです。「卒業後も年に一度、このマルシェのためにプロダクトを作って、販売しています。」「同窓会のようで、毎年楽しみにしています。」とお二人はにこやかに話してくださいました。

第16回 卒業生・修了生全国公募展・授賞式

2010年から今年で16回目を迎える全国公募展は、作品数95点が出品されました。本学で学ばれた卒業生が、作品を通して、卒業後の学びをどのように活かし活動しているか、学び舎で成果を発表する場になっています。会場ではお世話になった先生や、同級生らと再会を喜ぶ姿も見られ、同窓会のように場が華やいでいました。授賞式では、通信教育課程 上原英司学生部長を始め、関係者からのご挨拶やスピーチを頂戴し、受賞者や出品者らへの祝辞とともに、今後も新たな表現に挑戦する参加者へエールも贈られました。

今年も厳正な審査を経て、「大賞」「優秀賞(同窓会賞)」が決定し、3名の卒業生と修了生に賞が送られました。

大賞 鈴木誠郷さん(大学院 洋画分野 2016年度修了)

作品は、朝に向かう静けさの中に虎がそこにいるようでした。虎の毛が一本ずつ緻密に描かれた《威風》は、写真を超えたリアルな存在感を感じさせます。「京都動物園で見た虎が印象に残り、そこから虎をモチーフに絵を描き始めました。イメージとしては山月記に出てくる虎を描いています。本物の虎がそこにいるような存在感を感じてもらえたら嬉しいです。」と鈴木さんは話します。地元で美術を志す仲間が周りにおらず、偶然図書館で案内ハガキを見つけたことがきっかけで本コースを受講。それまで1人で絵を描いていましたが、本コースでプロとして活動する為の活路を見出しました。また、今秋は日本橋で個展を控えています。

優秀賞(同窓会賞) 泉川博之さん(芸術学部美術科洋画コース 2008年度卒業)

兵庫県芦屋市の地車祭りを描いた連作《最高の気分2025-Ⅲ『芦屋だんじり祭りⅢ』》《最高の気分2025-Ⅳ『芦屋だんじり祭りⅣ』》で優秀賞(同窓会賞)を受賞されました。夜に浮かぶ鮮やかな赤色の提灯がたくさん並び、地車を引く人の高揚感や活気ある声がキャンバスから聞こえてきそうでした。「今回ベロアの上に描くことに初挑戦した。通常のキャンバスに描くのとは異なり、絵具が思うように乗らず大変だったが、絵を初めて描いた時の高揚感を再び覚えた」といいます。布選びや布貼り、色の出方も一から自分で調べ、試行錯誤を重ねて描いたとのこと。1枚目に描いた絵と、2枚目に描いたものでは実は布地の向きが違うため、表面の光沢や色の出方が異なります。泉川さんは洋画を47年間描き続けていて、今回は体調が思わしくない中でも作品制作に挑戦したと話してくれました。

優秀賞(同窓会賞) 安中真生子さん(大学院 日本画分野 2024年度修了)

銀色の輪の向こうは理想郷でしょうか。桃の花がほころび始め、今にも花の香りが届きそうです。葉にはごく淡い青や黄色を差し、桃色を引き立て、外側の白地につぼみや繊細な模様が白色の顔料で丹念にそして綿密に描き上げられいます。

《桃源》で優秀賞(同窓会賞)を受賞された安中さんは、授賞式当日は会場に出席が叶わなかった為、メッセージをいただきました。

(以下、受賞にあたってのメッセージ)

「この度は、優秀賞をいただき、誠にありがとうございます。今年3月の大学院修了時に頂いた、『続けることも才能ですよ!』という先生のお言葉を頼りに、その続けるための最初の一歩が、今回の公募展への出品でした。ですので、今回の受賞は、先生方に「その調子で頑張りなさい!」と背中を押して頂けたようで、とても嬉しく思います。今回は、会場にお邪魔して皆さんの作品を拝見することが叶わず残念ですが、描くことを続けていたら、先生方や一緒に学んだ皆さんとのご縁も続いていくと信じて、これからも精進して参りたいと思います。本当にありがとうございました。」

瓜生山懇親会

授賞式が終わると、懇親会が始まります。懇親会のメニューは、食文化デザインコースの在学生たちが学びの一つとして考案したもの。今回は、夏の京都に合う食べ合わせ「京都の美味しい」をセレクトしました。「京都は漬物も美味しいので紹介してみては、と学生から声が上がり、メニューに入れることにしました。食べ比べのアイデアも学生からです。」と中山晴奈先生は話します。季節の漬物では今が旬のなす漬けの食べ比べ等、他にも季節の甘味、京のお茶4種を今回の懇親会に選び、テーブルの上が華やぎました。京都名物をきっかけに自然と会話が弾み、どのテーブルでも笑顔が広がっていました。

恒例のクイズ大会では本学にまつわるクイズが全部で8問出題されました。各テーブルごとにグループが作られ、隣同士や同席の教員らと打ち解けた雰囲気でした。芸術教養学科の宮信明先生の司会で、クイズ番組さながらに盛り上がり、イベントも終盤へと向かいました。

通信教育は社会人でも自分のペースで学びやすい柔軟さがあり、本学では入門から専門的な研究まで幅広いコースを用意しています。「芸術を学んでみたい」という気持ちがあれば、年齢や経験に関係なく始められます。学びを通じて、作品の表現が深まるだけでなく、仲間との交流も広がり、新しい力にもなります。興味を持った瞬間が、新しい学びの扉を開く時かもしれません。

 

(文=丸山文絵、撮影=Oto Hanada)

 

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