2021年8月7日(土)から21日(土)にかけて開催された『通信サマーフェスティバル2021』。
通信教育課程では、これまで毎年夏の恒例行事として「卒業生・修了生全国公募展」「アート・マルシェ」「瓜生山真夏の懇親会」を開催してきました。昨年度は残念ながら新型コロナウイルス感染症対策のため、対面でのイベントが叶いませんでしたが、昨年度に新たに加わった「特別講義」のイベントはオンライン配信にて行うなど、在学生と卒業生の交流機会をさらに広げる試みを行いました。
2021年度はこれまでの活動を引き継ぎつつ、3つのイベントを総称して「サマーフェスティバル(以下、夏フェス)」と題し、通信教育課程の真夏の一大イベントとして開催しました。
谷崎由依先生による特別講義
従来の夏のイベントでは、作品を出品するイベントが主であったことから、実技を伴う演習系のコースの学生の参加が多い傾向にありましたが、講義を主とする理論系のコースの学生にも参加してもらえるよう、昨年度から「特別講義」を開催する運びになりました。2021年度の特別講師は作家、翻訳家として活躍されている谷崎由依先生を迎えました。
谷崎由依 Yui Tanizaki
1978年福井県生まれ。作家、翻訳家、近畿大学文芸学部准教授。2007年「舞い落ちる村」で第104回文學界新人賞を受賞しデビュー。19年『鏡のなかのアジア』で第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞。他の著書に『舞い落ちる村』『囚われの島』『藁の王』『遠の眠りの』、訳書にノヴァイオレット・ブラワヨ『あたらしい名前』、コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』などがある。
特別講義のテーマは「生活が変わっても書き続ける」。谷崎先生は昨年妊娠、出産をご経験され、生活が変わるなかで育児をしながら書き続ける大変さを実感したとか。仕事や生活と両立して学んでいる通信教育課程の学生とご自身の境遇が重なり、今回のテーマを考えてくださいました。
とはいえ、「書けない話ばかりしていても仕方がないので」と、これまで谷崎先生が書かれてきた作品についてのお話もお聞かせくださいました。
特別講義は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、全国の学生に向けて配信。講義後の質疑応答の時間には、積極的に質問する学生も見受けられ、有意義な時間となりました。
第12回 卒業生・修了生全国公募展
通信教育課程では2002年度に第1期生として125名の方がご卒業をされてから、2019年までに延べ8,944名もの方が卒業・修了されています。卒業生、修了生から寄せられる展覧会情報や受賞報告からも、卒業後も様々な分野で活躍をされている方々が多数いらっしゃることが伝わってきます。
この全国公募展はそんな卒業生、修了生のための展覧会。大学で学んだことを更に発展させた意欲的で素晴らしい作品の数々が、毎年ギャルリ・オーブを飾っています。
今年度は21点の作品が出品されました。卒業生の活躍は、在学生にとっては今後の目標として励みにもなります。会期中にスクーリング授業を受講している在学生が、積極的に足を運ぶ様子が見られました。
通信教育課程 後藤吉晃学生部長のご挨拶
「通信教育課程 卒業生・修了生全国公募展」の会場に佇み作品群を見渡しながら思いましたのは、このような状況下にもかかわらず粛々と創作活動に勤しんでいらしたみなさまの努力。それと同時に、このような状況下だからこそ喧騒から離れ没頭できる術をみなさまがお持ちであることの素晴らしさ。これもまたみなさまが本学で学び培ってきた努力の賜物以外の何ものでもありません。また、実際に作品を拝見できる喜び。やはり筆致やスケール感、風合い、作品の生の息吹を肌で感じることができることが大変嬉しく思われました。それと同時に、画面を通じてにはなりますが今までにない規模で多くの方に作品をご紹介できる喜び。極端ではなく全世界にみなさんの作品をご紹介できること、現状を考えますとこれは嬉しいこととも思っております。
アート・マルシェ
アート・マルシェは通信教育課程の在学生・卒業生・修了生であればだれでも出店可能なアートフェア。参加は個人、グループを問わず、ギャラリーとして個展を開いてもよし、作品やクラフト、オリジナルグッズ等を販売してもよし、普段の活動の成果を自由に表現・発表する場として企画してください、というものです。ギャルリ・オーブに向かう通路にて、2㎡のスペースを使って自由に表現します。
花房澄夫さん「アルミニウム プロダクト」(空間演出デザインコース2014年度卒業)
花房さんはなんとアートマルシェ発足当初から、毎年出品されているとか。いわゆるアートマルシェの老舗と言ってもいいでしょう。
当初は銀を加工していたそうですが、銀はどうしても値段が高くなってしまうため、お財布事情を気にせずに購入してもらえる、アルミニウムや真鍮の加工に挑戦するようになりました。「装飾品に加えて、生活で使えるプロダクト系も制作するといいのでは?」との上田篤副学長からのアドバイスもあり、年々出品作品の種類が増えているそう。
林和子さん「草木染 手紡ぎ 自然の色、手仕事」(染織コース在学生)
林さんは、ご自身で制作された草木染の作品を出品。草木染めは化学染料を用いないため、土にかえすことができる自然に優しい染め方です。量産の観点からは化学染料に劣りますが、「時間や手間がかかっても本当に良いものを残していきたい」と語ります。
「チーム2016 出会いに感謝!」(染織コース2016年度入学生)
こちらは同時期に染織コースに入学したメンバーで構成されているグループでの出品です。年齢も居住地もバラバラですが、普段から近況報告をするほどの仲です。
出品作品は織物やアクセサリー、雑貨、染織作品などさまざま。染織コースで共に学んだ仲間が、卒業後の進路として染織に限らずさまざまな創作活動に打ち込む姿は刺激になると言います。
作品の感想をもらったり、値段の交渉をしたりと、作品を通じて生まれる出会いやコミュニケーションもこの企画のおもしろさの一つです。
瓜生山懇親会・公募展授賞式
例年夏フェスの最終日には、立食式の懇親会が催されていますが、今年度は感染症対策のためささやかな交流会を行いました。公募展やアートマルシェの会場で、互いの作品の感想を言い合ったり、久しぶりに会う学友との会話を楽しむ様子が見受けられました。
その後、第12回 卒業生・修了生全国公募展授賞式が開催されました。厳正な審査を経て、「大賞」「優秀賞」に以下の3名が輝きました。
大賞 山口智佐さん《水流》(染織コース2018年度卒業)
織りの作品ですが、織っているのは一部分。大部分は糸そのものが整然とならんでおり、糸の流れが水流の美しさを表現しています。また、この作品は二層構造になっており、水色の面の後ろには真っ白の糸でできた面があります。さまざまな角度から見る面白みがあり、二色の糸が織りなす光と影が、とっても美しい作品です。
優秀賞 高須栄一さん《滝しぶき》(洋画コース2017年度卒業)
普段から滝の絵を描かれている高須さん。大雨の翌日に近くの滝を見に行ったところ、滝の轟音とたたきつけるような水面の激しさを見て、表現したいと思ったとか。キャンバスを持っていくのは難しいので、その場でスケッチを10枚ほど描き、手持ちのスマホで滝の動画を撮影しました。
勢いのある滝と緑鮮やかな色調の緑。酷暑に爽やかな風が吹き渡ります。
優秀賞 寺東榮爾さん《色彩の丘 記憶の風景より》《秋桜 記憶の風景より》(陶芸コース2019年度卒業)
写真コースの卒業生でもある寺東さん。今回出品されたのは写真作品です。一見絵画のように見えますが、実は和紙にプリントされた写真作品です。手作りのピンホールカメラを使って、なんと撮影中にフイルムを巻き上げながら撮影しています。一つのアングルから撮影されていますが、連続することによって広大な風景をつくりだしました。
瓜生通信でもご紹介している「収穫祭」など、通信教育課程では在学生と卒業生をつなぐ数多くの試みが実践されています。今年度は在籍者数が1万名を超え、今後もさらなる卒業生を輩出していくことになります。京都芸術大学での学びが、全国にいる在学生と卒業生をつないでいくことを願っています。
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