REPORT2025.08.28

文芸

【体験レポ】芸大生が人生で一番“真剣”に手紙を書いた日――文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅱ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。

本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。

みなさんは、自分の想いを相手にどう伝えれば良いか、悩んだ経験はありませんか?
また、自分の「やりたい」「作りたい」といったことを、なかなか形にすることに難しさを感じたことはありませんか?

私たち京都芸術大学の学生は、制作に取り組むなかで様々な想いを抱きつつ、自分だけが表現できるものはなにか、常に向き合い続けています。
しかし、作品を通して自分の想いを伝えることは簡単ではありません。

文芸表現学科で学んでいる私は伝えたい言葉があっても、それを形にすることに壁を感じていました。
言葉にできても、それを形にすることはできない。
形にしたくても、それをどう相手に届ければ良いのか分からない。
同じ悩みでなくても、似たような悩みを持った方はいるのではないでしょうか。

 

言葉を手紙に書き留めて、想いを伝えたい。

文芸表現学科の学生である私の願いを叶えてくれたのは、とある画材店でした。
この記事では、制作に没頭する私たちに寄り添い続け、形にできるまでサポートしてくださる画材店さんとともに、私たちの想いを形にするまでの軌跡を描いていきます。

 

はじめての画材店

京都芸術大学から白川通を北へ歩くこと約5分。
やって来たのは、「株式会社 バックス画材」。ここでは、日頃から個展やワークショップを開催しており、画材だけを扱っているお店ではありません。
店内に入ると子供心をくすぐるような玩具や、カラフルでポップな雑貨たちが出迎えてくれます。

バックス画材の店内入り口付近

今回は弟に部活の応援メッセージと、日頃の感謝を込めて手紙を書きます。
言葉を形にするために、まずは紙探しから。

アクリル絵の具や日本画用絵の具など、一般的なものから専門的な用具まで揃っていました。文芸作品を制作する私にとっては、あまり馴染みのなかったものばかり。

色彩豊かな画材が並んでいる棚を見て楽しんだあと、目当てだった紙売り場に到着します。

店舗奥に広がる紙売り場

驚いたのが想像を上回る紙の多さ。見えるところ全て、紙で溢れかえっていました。
よく見ると紙の大きさも手触りも様々で、手紙に適した紙を一人では見つけられません。
画材店の初心者である私は、勇気をもって店長の安藤さんに聞いてみます。

店長の安藤さん

バックス画材店長の安藤さんは、穏やかな笑顔で対応してくださいました。
私はこのとき、コラージュ風の手紙を書きたいことを伝えました。弟に渡す手紙ということもあり、遊び心を感じられる方が喜んで受け取ってくれるように思ったからです。
そのことを安藤さんにも伝えると、必要な画材を一緒に探してくださるとのことで案内してくれました。

「和紙であればパックのものではなく、一枚からご準備しているものがありますよ」

案内してくださった売り場には、ポストカードぐらいの大きさのものが並んでいました。勧めてくださったのは、ミミありといった角を丸くカットされたもの。少しざらつきのある和紙は、手に取ると手作り感のある温かみを感じます。

紙を選んでいる様子

紙を選んだあとも、ペンとコラージュするための画材を探しに店内を回ります。
安藤さんが「最近出ているマッドホップというペンは発色が良くて」と教えてくださいました。そこで、試し書きをさせてもらえることに。書くときはとても滑らかで、時間が経つと書いた字が浮き上がるように発色します。

手紙を書くための画材が決まり、レジへ。安藤さんは最後まで私の要望を聞いてくださり、さらに良い手紙が書けるようにと紙に合う色を教えてくれました。地域に密着した画材屋さんだからこそできる、お客さん一人ひとりに寄り添う姿勢。丁寧で分かりやすい説明は、画材の知識のなかった私でも制作に必要な道具や画材選びを楽しむことができました。

想いをかたちに

バックス画材から帰ってきた私は、さっそく手紙を書くことに取り組みます。

普段からよく話す弟ですが、手紙を贈るというのは少し気恥ずかしさを感じます。
ですが、言葉というのは心の内にとどめているだけでは、相手に伝わりません。
今伝えたい想いを紙に込めて、手紙を書いていきます。

最初はどう書き出すか悩みましたが、書き始めていくと、あっという間に完成しました。
手を動かしている間は、時間が自分の周りをゆっくり流れているような気持ちになります。
完成した手紙は対面で渡すことができました。

「え、くれるん? ありがと!」

弟は恥ずかしがらずに、素直に喜んで受け取ってくれました。
今も学習机の上に、大切に飾ってくれています。

芸大生に寄り添うとは

 

画材店を訪れる方は、私のように画材について知識の浅いお客さんもいれば、高い専門性を持つお客さんもいらっしゃいます。お店の方は、お客さんそれぞれのニーズに応えられるかどうかが求められていて、高い接客力が必要になってくるのだそう。

バックス画材では、常日頃から個展やワークショップなど、芸大生の制作の発信場所としても利用されているそうです。そのことについて、お話を伺いました。

代表者の坂さん

「発表したいクリエイティブなことはあっても、何から始めたら良いか分からない人ほど、敷居を低くしているから入ってきてほしい」

そう話し始めたのは、気さくな雰囲気で場を和ませてくださった「株式会社 バックス画材」代表の坂さん。バックス画材では、個展を初めてやってみたい人ほど大歓迎だといいます。

「京都のお洒落なギャラリーでやりたいって方は多いと思うんですよ。でも、個展ってどうやったらいいのか分からない人が多いんです。そういう方は、うちで練習したらって思ってます」

京都は学生の街とも言われています。そんな京都には、自身の成果物を発表したいと思う芸大生が多くいて、京都の市街地にギャラリーがあることも珍しくありません。ですが、発表の場があったとしても、お客さんを呼び込むことは難しいことだと坂さんは話します。
そんな芸大生に向けて、坂さんはバックス画材をうまく活用して欲しいと言います。

「一度やってみて、自信をつけてほしいです。最初からもじもじするなら、うちでやった方がいい。それから京都の街に出て、どんどんギャラリーで個展を開いてほしい」

実際にバックス画材で経験を積み、街中のギャラリーで個展を開く方も多いそうです。
街中でギャラリーを初めて開くとなると、お客さんが来るか不安になります。

ですが、画材を取り扱っているバックス画材なら絶対にお客さんが訪れます。
お店で個展を開いている期間中は、店員さんが1階の画材売り場からお客さんに声を掛け、2階の会場に連れてきてくれるそうです。

「芸大生は若くても一人ひとり立派な作家さんなんで、やりたいことができるように見守ってます」

個展を開催し、運営のサポートをしつつ、その方の成長の場を壊さないように見守る姿勢を大事にする。作家と店側の適切な距離があるからこそ、バックス画材で個展をする意味が生まれるのだと感じました。

挑戦するということ

想いを形にすること、そこから他者へ発信することは、芸大生の多くが悩んで葛藤することでもあります。芸大生に限らず、新しいことに挑戦する姿勢は尊いことであり、そんな自分を支えてくれる方々が周りにいることを実感させられます。
あなたも伝えたい想いを、形にしてみませんか。

(構成・執筆:文芸表現学科 2年生 津田愛梨)


《店舗情報》
店舗名 株式会社バックス画材
住所 〒606-8167 京都市左京区一乗寺樋ノ口町11
営業時間11:00〜18:30
定休日なし
E-mail:info@backsgazai.com
WEBサイト:https://backsgazai.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/backsgazai/

 

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