
京都芸術大学では2025年3月14日(金)・15日(土)に京都・瓜生山キャンパスにて通学課程および通信教育課程の学位授与式・卒業式が執り行われ、通学課程からは861名、大学院修了生228名(うち博士6名)がそれぞれ学位を授与されました。
この記事では、通学課程・大学院課程の学位授与式・卒業式の様子をレポートします。
学位授与式・卒業式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、全国・全世界にいる卒業生・修了生やご家族のみなさまに向けてライブ配信されました。
(式典のアーカイブ配信はこちら)https://www.youtube.com/live/ggK9u1e4DYE?feature=shared
卒業生のみなさんの入場が終わると、開式の辞とともに式典がはじまりました。はじめに、本学の理念「京都文藝復興」を松平定知教授が朗読しました。

つづいて、博士課程・修士課程の修了者に対する学位記授与がはじまりました。
まず、博士課程の修了者6名に学位記が授与されました。博士課程修了者には、開学30周年を記念して、錦織作家・龍村周さんが制作した、本学のシンボルカラーである青色を基調とした一品鳥の柄のストールが贈呈されました。


「一品鳥」とは鶴の異称であり、「一品」は「品格の最も高い位」を意味します。博士課程を修了したみなさんが藝術立国を支える大きな力となり、飛翔する鶴のごとく世界で活躍できるようにという願いが込められています。
修士課程からは芸術専攻修了生43名を代表して、中川桃子さんが、芸術環境専攻179名を代表してコウガイブンさんが学生代表を務めました。
卒業証書の授与では、13学科それぞれの学生代表に証書が授与されました。


次に、吉川左紀子学長の式辞です。学部卒業生のみなさんが入学した2021年は新型コロナウイルス感染症の影響の残る時期でした。吉川学長は2021年の入学式で贈った「冒険、自分の心、寄り道」という三つの言葉に触れ、卒展・修了展でその精神を感じたと語りました。

本学には名物授業であるマンデイプロジェクトや毎年粟田神社で行われる粟田祭りでの大燈呂プロジェクトをはじめとするユニークなプロジェクトがたくさんあります。吉川学長は、そういったプロジェクトで培った知識や経験、「ユニークであること」の強みを社会で生かしていってほしい、とエールを送りました。
また、本学の文明哲学研究所で来年度から所長を務める吉岡洋教授の著書『AIを美学する』に登場する「人は必要性や有用性だけから何か新しいものを作り出したりしない。面白いから作るのである。人工知能の場合もこれと同じだ」という言葉を引用し、これから壁にぶつかったときは自分の学びの原点は何だったのか、大学で自分は何を身につけたのかを思い起こしてほしい、と述べました。

大学院課程を修了するみなさんに向けては、「修了生のみなさんには、大学院に入学したときの志を振り返り、芸術を深める道を模索していってほしいと思います。芸術作品は、存在自体が人の心を動かしますが、芸術世界の深さや広がりを伝えるには豊かな表現力と言葉が必要です。本学大学院での学びがこれからのみなさんのライフワークとして、芸術世界の深さを探求し、社会に向かう強いメッセージとなることを祈っています」と言葉を贈りました。
来賓を代表し、東北芸術工科大学学長の中山ダイスケ先生からも祝辞をいただきました。
中山先生は「アートやデザインは特別なひとによる魔法ではなく、世界全体が必要とするものになっています。これから、社会全体がクリエイティブになっていきます。みなさんは4年間、芸術大学という特殊な場所で学んできました。社会に出たら、クリエイティブの専門家だからこそ身近にある日々の些細な変化、心の機微に敏感になって、謙虚な観察者になっていってください」と激励のお言葉を述べられました。

つづいて、学生サークル「和太鼓 悳(わだいこ しん)」が祝奏として「つながり」を演奏しました。講堂に響く音色は、卒業生・修了生の今後を励ますように力強く、私たちの心に響きました。


卒業生・修了生を代表し、卒業の辞を読んだのは、文芸表現学科クリエイティブライティングコースの工藤鈴音さん。他者と出会い、対話することを繰り返した芸術大学での4年間の学びについて、瑞々しい率直な言葉で語りました。

冬の寒さも和らぎ、鴨川も穏やかに春めいてまいりました。
本日は、わたしたち卒業生のために式典を催していただきましたこと、心より御礼申し上げます。
梅の花のまあるく綻む、この季節になると、蕾がひらくように素直な気持ちになります。
思い返せばこの四年間はわたしにとって、他者のまなざしの豊かさを受けとることで、過去のわたしと対話をするような日々でした。
はじめての授業で仲良くなった友人は、人前でも堂々と流暢に話すひとの、手の震えに気づくことができる細やかさを持ち合わせていて、わたしは彼女のそういうまなざしに今でもとても惹かれています。
こうしてことばにすると、あたりまえのことのようにも思えますが、ときの流れのなかに身を置くことで、ひとりひとつ、まなざしを育てている、という感覚は大学に来てあらためてわかったことでした。
ノンフィクション作品を執筆する者として、他者の声をまとめさせていただくなかで、「声をもつ本人ではなく、何者でもないわたしが、その声に耳を傾け、綴る意味」について、悩むことが多くありました。相手の声に、気持ちに、どんなに寄り添おうとしても、何時間お話をお聞きしても、わたしは、わたし以外にはなりきれない。その危うさに、書き手として葛藤していました。
しかし、あるときふと、だれもが自分以外にはなれないということに気が付きました。聞き手、語り手という関係に限らず、わたしは血の繋がりをもつ家族の「よろこび」や「かなしみ」でさえ、細部まで本人とまったく同じようには感じられない。
そのときはじめて、「わたし」と「あなた」の対話のなかでしかうまれないことばが水脈のような、ささやかなひかりを放ちはじめました。
そして同時に、その感覚はわたしと他者の間だけでなく、「わたし」と「わたし」の間にも存在するということに気が付きました。今のわたしが未来や過去の自分を読者のひとりに含め、文章を綴るとき、わたしは無意識に「今のわたし」と、「過去・未来のわたし」のまなざしが地続きでありながら、別のものであるという捉え方をしていたように思います。
そうして、自己や他者を通して、透明で確実ななにかをめぐらせるようにして得たこたえは、「今の自分」以外になりきれないということが、弱さであると同時に誠実さであり、強さでもあるということでした。
こんなふうに「今の自分」を等身大で愛し、文章を綴ることと向き合えるようになったのは、紛れもなく、わたし自身が持ちえない「まなざし」をもつ友人や、家族、先生方をはじめとする周りの方々のおかげだと強く実感しています。
今になって、入学式を終えてすぐ行われたガイダンスで、当時学科長をされていた先生が「常識を疑うこと」の大切さを説いていたことを思い出します。そのときに傾けていた耳は誠実でありなら、当時のわたしにはすこしむずかしく思えたお話でしたが、あたりまえを紐解いていくことで見えてくる本質のようなものがあるということが、今ならわかる気がします。
となりを歩く友人のまなざしは決してあたりまえのものではありませんでした。だからこそわたしは、はなびらのもつ水分をゆびの腹で何度も確かめるように、ことばと、あなたという個人のまなざしをなんどもたどり、それらを糧として生きていくのだと思います。
これまで支えてくださったすべての方々への感謝を結びとして、これを卒業の辞とさせていただきます。
2025年3月14日
文芸表現学科・クリエイティブ・ライティングコース 工藤 鈴音
最後に登壇した徳山豊理事長は、歓送の言葉の前に「みなさんと記念写真を撮ってもいいですか」と提案。卒業生・修了生も笑顔で記念撮影に応じました。

徳山理事長は、現在本学の1〜3年生が大阪万博パビリオンで展示していることに触れ、「後輩たちが大きなプロジェクトに携われるのは、いまここに座っている一人一人の先輩たちの背中を見て、『やってみよう』という思いになったからこそです。卒業後、壁に突き当たったときは、京都芸術大学がどんな活動をしているのか調べてみてください。後輩たちの活動の種を蒔いたのはみなさんです。この学園の未来の姿を、みなさんの自信に変えて、自分の力を信じ、着実に一歩一歩進んでいってください。学園も、卒業生のみなさんが本学を母校だと胸を張って言えるよう、前進していきます」とこれからの学校づくりへの固い誓いと卒業生へのはなむけの言葉で締めくくりました。

式典の締めくくりに、学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。京都芸術大学の正面にある59段の大階段を題材にした歌詞に万感の思いを込め、卒業生・修了生たちは声をひとつにしました。

卒業式の閉式後には学科ごとに分かれて分科会を行い、卒業生・修了生一人一人に証書を授与しました。今回お邪魔した舞台芸術学科では学科の先輩・後輩が作成した卒業メッセージ動画が上映され、みなさん懐かしそうに映像に見入っていました。当日会場には来られなかった先生方からのメッセージも! 卒業制作展で上演した舞台映像が流れたり、後輩が学生生活の感謝を伝えたりと、大学生活を振り返るあたたかな時間となりました。



その後は学科の教職員がお祝いの言葉を述べ、卒業生の新たな門出を祝いました。分科会終了後は、先生方も交えての記念撮影。卒業生たちは4年間の学生生活を懐かしんだり、お世話になった先生方に感謝の言葉を伝えていました。
当日はキャンパスの様々な場所で記念撮影が行われていました! みなさん、晴れやかな笑顔ですね。




卒業生・修了生のみなさん、この度はご卒業誠におめでとうございます。みなさんのこれからの人生が楽しく幸せなものになることを、心よりお祈り申し上げます。お元気で、またどこかでお会いしましょう!
(文=上村裕香、式・分科会写真=高橋保世、 ※その他写真=広報課)
京都芸術大学 Newsletter
京都芸術大学の教員が執筆するコラムと、クリエイター・研究者が選ぶ、世界を学ぶ最新トピックスを無料でお届けします。ご希望の方は、メールアドレスをご入力するだけで、来週水曜日より配信を開始します。以下よりお申し込みください。
-
上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。
-
高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。