SPECIAL TOPIC2024.11.18

「大瓜生山祭2024 火花」レポート — 学生たちの個性が火花のように弾ける学園祭!

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  • 上村 裕香

京都芸術大学の学園祭、「大瓜生山祭」。感染症対策で一般の方が来場できなかった期間もありましたが、2022年度からは再び多くの方にご来場いただいている、ビッグなお祭りです!

例年は9月に開催している「大瓜生山祭」ですが、今年度は11月2日(土)、3日(日)の2日間に行われ、約12,000名の方々にお越しいただきました。

今年のテーマは「火花」。学園祭で学生たちが火花と火花のようにぶつかり合い、新しい繋がりやアイデアを生み出してほしいという意味が込められています。さまざまな場所で学生一人ひとりの個性がパチパチと弾け、新しいものが生まれる。その様子をビジュアルコミュニケーションデザインコースの服部伊織さんが表現しデザインしたメインビジュアルがこちらです。

学科問わず募集されたコンペティションで、票を最も多く獲得し、見事グランプリに輝いた作品です。

そのテーマの通り、学園内には各学科の3年生による展示、卒業生による出展、サークル企画、学科・学年の垣根を飛び越えての有志企画、100を超える物販ブースなど、見どころが盛りだくさんの学園祭でした。2日間では回りきれないほど……! 今回の記事では、フードコロシアムが行われていた望天館と学生作品展や物販で盛り上がった人間館、新しく建設された相照館を中心に、その魅力をたっぷりお伝えしていきます。

学生作品展・学科紹介ブース

まず向かったのが、学科作品展。以前は各学科の3年生が展示を行っていましたが、今年度からは出展が任意になり、従来通りの学生作品展としてだけでなく学科紹介ブースとしての出展もあり、さまざまな学年の学生作品がキャンパス全体に展示されました。展示方法も学生自らが考案。2月に開催される「卒業展」に次ぐ大規模な作品展となっています。

 

キャラクターデザイン学科

キャラクターデザイン学科では絵を描くだけではなく、より具体的なキャラクターコンテンツを身に付け、さまざまな業界や媒体に展開させるための技術や手法を学びます。
イラスト、アニメーション、グラフィック、映像作品、ゲーム、3DCG、社会実装プロジェクトのアーカイブ展示など、とにかく多様なジャンルの作品が並ぶ相照館!


ベーカリーをモチーフにしたパターンデザインを考案し、そのデザインを使用したショッパーやドリンクを制作・展示したゼミ。LED光源が取り付けられたブレードを高速回転させる3DPhantomの技術を活かし、ホログラムによるメディアアートを展示したゼミ。「人口増加が問題になる地球で、地球の地軸とリンクした回転椅子を回すことで地球を救う」というアナログな運動要素とデジタルな画面を融合したゲームを制作した学生もいました。
企業の要望に応えて、オリジナルのキャラクターや動画を制作するプロジェクトのアーカイブ展示も。ここに書ききれないくらい多くの作品が新校舎を彩りました。

と、ここで企画プロデュースゼミの石鍋大輔先生を発見。「『キャラちぇん!!』見てってよ」という言葉についていってみると、3台のパソコンに向かう来場者の姿が。画面に表示されているのはVTuberのアバターとリアルタイムで描かれているイラストの画面です。
「キャラちぇん!!」はVTuberに扮するキャラクターデザイン学科の学生たちが20分でキャラクターデザインをしてくれる企画。来場者の方は、自分の理想の姿や内面を反映したキャラクターを学生に描いてもらうことができます。それぞれの学生はVTuberのアバターで画面上に登場。描き手がVTuberだからこそ、空想的なコミュニケーションも取ることができるんだそうです。なんて画期的なアイデアなんだ……!
こちらの「キャラちぇん!!」、近日中に別の会場でも行う予定があるとのこと。続報をお待ちください!

 

文芸表現学科

文芸表現学科は、小説、戯曲・脚本、ノンフィクション、詩、短歌・俳句、書籍・雑誌制作(編集)などさまざまなジャンルを横断しながら、「ことば」による表現を学ぶ学科です。今回の学生作品展では、1〜2年生での学びを経てそれぞれ表現したいジャンルを定めはじめた3年生が、これまでの学びを活かした作品を出展しました。
前日には3年生全員と学科の先生方による作品講評会も。それぞれの学生が自分の作品についてプレゼンし、互いの作品についての理解を深める機会となりました。
学生が自分たちで執筆・製本した書籍を展示するだけでなく、さまざまな工夫も! 教室の端に設置された椅子で作品を読み耽る来場者の方も多数いらっしゃいました。

 

歴史遺産学科

歴史遺産学科では、文化財の調査・分析を通して、保存修復の基礎的技術などを学び、歴史遺産を後世へ引き継ぐための制作・研究に取り組みます。
学生作品展では、ゼミごとに文化財科学や修復技術、考古学、文献の調査など、さまざまな専門分野についての展示を行いました。

こちらは本学芸術館に所蔵の縄文コレクションをフォトグラメトリ技術で再現した高精度3Dモデルをパソコン上で動かし、360度鑑賞することができる企画。デジタル技術を活用することで、より詳細に作品を鑑賞できたり、これまでとちがう形で親しむことができたりするんですね。
そして、会場奥には「補彩体験」ができるブースも。補彩とは、民俗資料などの欠けた部分をエポキシ樹脂で固めた際、白い樹脂を元の木目に馴染ませる作業のこと。ワークショップスタッフの学生によると、「補彩は、『近くで見たらわかるけど、遠くから見たらわからない』のがベスト」なんだそう。大正時代のものに令和の樹脂を入れるため、後世の時代の人が見たとき、修復した履歴がわかることが重要なのだとか。奥が深いですね……!

 

美術工芸学科

油画コースでは、油画を軸に多様な表現を探り、社会に発信する方法を学びます。1年生から2年生の2年間で、ルネサンス前後からコンテンポラリーに至る西洋絵画の歴史を概観しながら制作を行います。
今回の学生作品展では、これまでに学んできた技術や画法を活かして制作した作品を展示しました。展示空間は3年生の普段の制作アトリエ!
展示タイトルの「TRI-」には、3年生までの学びを表すトライアングルの意味と、これからもトライする意欲が込められているそう。そのテーマの通り、油彩による作品だけでなくシルクスクリーンの技法を使った作品や個性的なミクストメディアなど、3年生たちによる意欲的な作品が並んでいました。

 

アートプロデュース学科

アートプロデュース学科は、人と繋がり、アートを世に広めることを目的に、アートの持つ価値や意味を理解し、社会にその力を届けるための企画力と実践力を養う学科です。アートを通して人と社会を繋ぐプロジェクトの企画から運営まで幅広い知識と技術を学びます。
今回の展示のテーマは「御社が第一志望です。」! 目を引かれて教室に入ってみると、モザイクがかけられたスーツ姿の就活生の証明写真がずらりと並んでいます。就職活動を目前に控えた3年生が、これまでの学内・学外での学びを集約したポートフォリオと展示を通じて「就活」について見つめ直すため、このテーマに設定したそう。
1年生のころから展示方法やイベント企画などを学び、2年生では社会でアートを活かす経験を積んだ3年生だからこそできるユニークな展示でした。

 

映画学科

映画学科は映画制作にまつわる企画や演出、撮影、録音、編集などの技術や、俳優の演技を中心に殺陣や現代アクションといった多様な表現について学ぶことができる学科です。
映画学科の上映会は高原校舎で行われていましたが、人間館では上映中の各作品のチラシを手に入れることができました。教室に設置されたスクリーンでは、それぞれの作品の予告編も上映され、来場者は映像に見入っていました。学生作品展では、2年生の「短編映画制作」と3年生の「中編映画制作」の授業で制作した映画や自主制作の作品を上映しました。
上映会の「見つめて、耳をそばだてる」というテーマは、いまの3年生が、入学前に受講する0年生プログラムのころから先生方に言われてきた言葉なのだとか。対象を見つめて、音に耳をそばだてる、そしてそこから感じた「モノ」から作品をつくる。できあがった作品をお客さんにも全身で感じてほしい。そんな想いが込められています。
学生作品展で上映された映画の一部やこれまでの卒業制作作品の予告編は映画学科のウェブサイト「D STUDIO」で観ることができます。ぜひ、見つめて、耳をそばだてて鑑賞してみてください!
https://www.takahara-dst.com/


学生有志企画

人間館では毎年好評のライブペイントのほか、サークルや有志によるアイドルカフェ、チェキ会、公開ラジオなどバラエティ豊かな企画を楽しむことができました。
ギャルリ・オーブエリアには「芸大生ガチャ」コーナーが。ガチャの中身は有志で集まった学生が制作しており、学園祭期間中も「補充分を作ってるんです」と什器の後ろでフェルト作品を制作していました。出展者の中には、学科で学んでいる分野とは異なる分野のグッズを制作し、出展している学生も。個人での制作を見てもらえるいい機会でもあるんですね。

 

隠岐島・海士町物産展

こちらでは「隠岐島・海士町物産展」が開催されていました。本学の創設者・徳山詳直前理事長の出身地である島根県隠岐郡海士町の特産品をはじめとする隠岐諸島及び美保関、境港の特産品を販売し、その魅力を発信する物産展です。今年4月から開始された「島根プロジェクト」のメンバーが行っていました。
メンバーたちが隠岐島を実際に訪れ、巡った各地について解説する「隠岐クエスト」という冊子も配布されていました。隠岐にあるそれぞれの島をキャラクター化し、ゲーム仕立てで隠岐の魅力を知ることができます。物産展に並んだのは、しょう油アイス、島とうふどーなつ、さざえ最中など、つい食べてしまうものばかり。2日目の午前中には完売していました!

 

瓜生山同窓会

おいしそうな匂いにつられて人間館の回廊に行ってみると、「瓜生山同窓会」のみなさんが出している屋台に長蛇の列ができていました。販売しているのは「あなたと大学をつなぐ つな具せん」!
ソースのマヨネーズ、茶葉、柚子のあんこはそれぞれ卒業生が現在働いている場所で生産しているものなのだそう。卒業生と在学生をイメージしたからあげとたまごを、大学をイメージしたたこせんが受け止め、包むことで「在学生と卒業生、在学生同士をつなぐ」ことを表現しました。

 

物販(ファクトリエ)

物販(ファクトリエ)では、学生が作ったオリジナルの作品やグッズが販売されました。なんと100組を超える有志の学生たちが出展した今回の物販。アクセサリーやステッカー、イラスト、Tシャツなどさまざまな趣向を凝らしたオリジナルグッズが並びました。
ちなみに、SNS上では各イベント企画についてハッシュタグが公開され、ハッシュタグで「いま」を共有する企画も行われていました。特に多かったのがこの物販のハッシュタグ「#kuafes24_ファクトリエ」。みなさんはときめく作品を見つけることができたでしょうか。


フードコロシアム

風船のゲートをくぐり、階段を登っていった先にある望天館屋上では、昨年度から復活したフードコロシアムが行われていました。各学科が屋台を出店し、売上や店舗デザイン、ポスターデザインで競い合う学園祭の目玉企画です。

出店した学生に話を聞いてみると、7月下旬から始動し、8月中旬からメニュー開発を行なったのだそう。これまでは9月に行われていたため、アイスやかき氷などの冷たいものをメニューにする学科が多かったですが、今年は11月ということもあり、温かいメニューも多数。

「温まるものを食べてほしい」と考え、たい焼きやスープ餃子、湯豆腐など、例年ではあまり見られないメニューで出店していました。
スープ餃子を食べていた来場者の方は「今日はあいにくの雨で肌寒いので、温かいものがうれしいです」と笑みを溢します。

2日目には、至誠館5階(学生食堂)にて、フードコロシアム授賞式が行われました。最優秀賞に輝いたのは、映画学科! 3種類のタレが選べる焼き餃子と、体の芯から温まる水餃子、スープ餃子が来場者の心を掴みました。店舗デザイン賞には舞台芸術学科、パネル賞は情報デザイン学科、テーマ賞は舞台芸術学科が選出され、それぞれに賞金が贈られました。

 

さて、大瓜生山祭の様子について、大ボリュームでお届けしました。大瓜生山祭は学生会役員の学生が中心となって、当日ボランティア含めると100名以上の学生が広報や運営を行いました。

学生会役員の学生は「準備を6月からはじめました。例年とスケジュールがちがったので、少し余裕があって、それがむしろ不安でした。学生会は当日の運営だけでなく、『企画・広報・装飾』などさまざまなことを行いました。オープニングセレモニーや受付で配布しているリストバンドの制作、大階段の装飾などもそのひとつです。今回は装飾をスチームパンクで統一して、花火から連想した歯車をひとつのモチーフにしています。学生同士の歯車が噛み合って回っていってほしいなという思いを込めました」と話します。長い期間、この学園祭を成功させるために陰ながら動いてくれていたんですね……!


はじめにご紹介した今年度のテーマ「火花」。各学科の展示や有志企画、フードコロシアム、物販などを通じて、学生たちの個性が火花と火花のようにパチパチと弾け、新しい繋がりやアイデアを生み出す学園祭だったのではないでしょうか。
学生たちの「火花」が散る熱い2日間でした。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。来年の「大瓜生山祭」もお楽しみに!

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。

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