INTERVIEW2024.05.16

京都

KYOTO T5職人interviewー柿渋|柿渋は京都を守る

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  • 京都芸術大学 広報課

伝統工芸の本当の姿に光を当て、「かわいい伝統」「かっこいい伝統」「おしゃれな伝統」を世界に持っていく京都伝統文化イノベーション研究センター(T5)が発信するコラムを瓜生通信にてお届けします。

今回は、「柿渋|柿渋は京都を守る」をぜひご覧ください。

柿渋|柿渋は京都を守る

今回お話を伺ったのは株式会社トミヤマの冨山敬代さん。
柿渋の国内三大生産地のひとつである京都南山城地域で明治21年から柿渋文化を
守られています。
今も進化を重ねながら柿渋の可能性を探究し続けている様子を取材させていただき
ました。

柿渋は京都を守る

──柿渋の仕事を継ごうと思ったきっかけはなんでしょうか?

私自身、社会人になるまではこの商売を継ごうとは思っていなかったんですね。柿渋というのは、発酵臭があって臭いんですよ。それに、たくさんのタンクを管理するのも大変な仕事なんです。
でも、社会人としての経験や、時代の変遷、自分自身の環境も変わっていく中で、価値観が変わっていきました。その変化の中で、やっぱりこの商売をこのまま終わらせてはいけないという思いが強くなり、継ぐことにしました。

──他の柿渋を扱っているところとの違いについてお聞きしていいですか?

うちは柿渋の塗料開発をしています。柿渋にベンガラで色付けをした塗料などです。
他には食品添加物や医薬部外品になるような純度の高い精製された柿タンニンパウダーを作ることにも力を入れています。抗菌剤になったり、化粧品の原料になったりします。柿渋は多くの用途があるので、さまざまな大学や企業様と共同で研究開発もしています。

──ベンガラを入れた柿渋はどの様なことに使われていますか?

建築以外では、和紙などにも使われます。建築では文化財や古民家再生に使われることが多いです。全国の有名な社寺に使ってもらっています。最近では古民家ブームなどでもう一度柿渋塗料が見直されるようになりましたね。時代の変遷と共に、柿渋の用途も変わってきています。

 

変化しながらいつも身近に

──柿渋の需要は伸びていますか?

柿渋(カキタンニン)は、抗菌剤として需要が伸びていますね。
塗料としては今まで通りです。でも、一般のお客様もやっぱり自然のものを塗りたいという需要が高まり、塗料としての価値も少しずつ見直されてきているように感じます。やっぱり日本に昔からあるものというのはわびさびがあって日本の風土に馴染み、落ちつきます。
日本の宝みたいなものだと思っています。

 

タンニンの王様

──続いて、商品をお客様に届ける際に大切にされていることについて教えてください。

柿渋の特徴は分子量が多いことです。そしてゲル化しやすいことも特徴です。
すぐ使っていただく分にはいいんですけど、時間をおくと使えなくなってしまいます。やっぱり一番良い状態、鮮度の良いものをお客様に使っていただき、喜んでいただきたいと思っています。そんな想いで弊社では注文をいただいてからボトリングします。

──何度も出てきている「タンニン」とはどういったものなのでしょうか?

タンニンというのは食べ物の中の渋みです。栗の皮とかに多いような渋み。渋みの高さによってタンニン濃度が違うんです。お茶やワインの渋みもタンニンの仲間です。

──その中でも柿渋が強いんですか?

もう王様!桁外れです。
赤い柿を切った時に、ぷくぷくと斑点みたいになってるでしょ?あれがタンニンなんです。でも、あれは不溶化してタンニンが固まってしまっているものです。だから渋くないのです。柿渋屋さんがなぜ京都に多かったのかというと、その理由は、柿渋の三大産地の一つだからです。岐阜、京都、広島が三大生産地です。京都・山城の柿渋は宇治茶との関わりが大きいんです。昔から茶畑の中には渋柿の木がありました。今は、茶畑の中に防霜ファンが回ってるでしょ。その役割を渋柿の木がしていたんです。
でも、今は茶畑の中も機械化が進み、木があると邪魔やから伐採され、代わりに防霜ファンが設置されてきました。環境が変わってきているんです。

──柿渋が有名な産地はお茶も有名なところが多いんですね。

そうそう。広島以外の地域ではお茶と柿渋は親密な関係があります。茶畑と柿の木っていうのは昔の風景ですよね。私の親の世代が一番茶づくりも盛んな時期だったかな。その頃はお茶が売れてたから柿渋も売れてた。そんな風に、様々なことがつながって、暮らしの中で循環していたんです。

 

ミラクル発酵液・柿渋

──仕事を続けてこられて変わったことや、見えてきたことについて、教えてください。

今までは自然について見直すような機会がありませんでしたが、この仕事を始めて柿渋の原料が不足しているという現実を目の当たりにして、かなり価値観が変わりましたね。やっぱり地球温暖化の影響もあるかもしれないですね。私の幼少時は11月ぐらいまで渋柿が搾れてたんです。でも、今は9月には絞り終えないと、柿が赤く熟してしまうんです。

──様々な取り組みをされているとwebで見ました。

はい、柿渋プロジェクトという活動をしています。村の農業委員会や知り合いの方々にお願いして、荒廃した茶畑や田んぼに苗木(接ぎ木)を植えていただきました。弊社から接ぎ木を提供して、植えていただきます。桃栗3年、柿8年というように、来年7年目を迎えて、ようやく収穫できるようになってきました。植樹した直後は害獣被害にもあって、思うように植樹の成果が出ませんでした。
あと、寒暖の差が激しくないと、良い渋柿が育ちません。ここは盆地だから、最高なんですよ。おかげで植樹した苗木も今ではすくすく育って、ちょっとずつ採取できるようになっています。現在は2か所でこの柿渋プロジェクトをしています。

──柿渋の魅力についてお聞きしたいと思います。

柿渋は、ミラクル発酵液だと思うんです。昔の竹ざるなど台所で使うものは、全部柿渋で染めてはったんですよ。要するに、柿渋は今よりも活用の幅が広くて、マルチに使われていました。

 

柿渋の可能性

──柿渋を使って今後挑戦してみたいことや、今挑戦されていることはありますか?

自分自身も柿渋を用いて、柿渋の魅力を理解いただけるような商品開発や研究開発をしています。企業様とのコラボとか、そういうようなこともしています。

── 今後の展望についてお伺いします。

自分が広めていかないと「柿渋」という伝統産業がもうなくなっていくんだろうなと思うので、若い世代の方たちにもっと身近に感じていただけるような取り組みをしていきたいです。柿渋が今でも生き残っているということは、まだまだ柿渋にはお役目があると思うんです。使っていただき、柿渋ってすごいじゃんって言ってもらえるような商品開発をするために、いろいろ模索しています。
なかなか自分たちの思うようなペースで研究開発も進みませんが、それでも昔のように柿渋がなくてはならないような暮らしが広がれば良いなと思っています。そういう時代が来るように、これからも頑張ろうと思います。

 


職人interview
#81
株式会社トミヤマ
冨山敬代

文・撮影:
則包怜音(油画コース)
山田暖子(こども芸術コース)
建木紫邑(クロステックデザインコース)
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)

インタビュー・撮影山田暖子(こども芸術コース)


株式会社トミヤマHP:
https://www.kakishibu.com/

 

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京都伝統文化イノベーション研究センター(T5)WEBサイト

 

 

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