INTERVIEW2024.05.02

文芸

レトロと現代アートが共存するカフェ 京都 前田珈琲明倫店-文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅱ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。
本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。
(構成・執筆:文芸表現学科2年<執筆当時> 米山綾音)

 

「現代アートと元小学校の教室カフェ」

前田珈琲「明倫店」前

 

正門からまっすぐ京都芸術センターに入り、玄関を通り抜けてすぐの階段近くの教室に、カフェ「前田珈琲」の第2店舗・明倫店がある。

1993年に閉校した明倫小学校の建物が、京都芸術センターとして生まれ変わった際に入店した。
「前田珈琲」の店舗は京都市内に14店舗もあり、呉服店を改装した本店や旧日銀金庫室内に構えている文博店など、各店舗によって様々な特色があり明倫店もその一つである。

 

2020年に明倫店の開店20周年を記念して、「前田珈琲」と金氏徹平氏、家成俊勝氏がコラボした。
クラウドファンディングにて資金を募集して、金氏徹平氏の作品「tower」シリーズの系譜としてtower(KITCHEN)を作製したのだ。

 

このtower(KITCHEN)は店の中心にあって、外壁にはバスケットボールやバレーボールが埋め込まれており、捻ると水が流れる蛇口などが設置されている。

tower(KITCHEN)側面

 

これらは実際に触ることができ、今回、取材に応じてくださった「前田珈琲」明倫店副店長の森加奈子さんによると、ちょうど小さな子どもの背丈ほどの位置にあるため子どもたちが来店時遊んでいる事もあるという。

 

また一定時間で動くオブジェや、スモークマシン(2023年12月現在修理中)があるので長居してみるのも一興だろう。

 

こういった触れることのできるアートは珍しいと思う。
そのことについて、森さんは「多分それが金氏さんのしたかったことだと思うんですよね」と話した。

 

「いろいろ仕掛けがあって、それを身近に見てもらったり、触ったりとか。『してもらってください』って金氏さんからも最初に言われているので、小さいお子さんとか『どうぞ触ってね』という感じで。それってすごいことかなって思いますね」

実際に捻ると水が出る蛇口とバスケットボール
埋め込まれたサッカーボール

 

このように書くと教室を全て改装したかのようにイメージされるかもしれないが、床や壁は当時の小学校の内装のままだ。
照明はオレンジの温かみある光色を使っているため、小学校教室のイメージを壊すことなく現代アートと融合させている。少し不思議で心地の良いカフェだ。

 

「コロナ時期とリニューアル」

テーブル席と当時のままの床。オレンジの光色が雰囲気を作っている

 

しかし、2020年にリニューアルオープンした際、それまで来ていたお客さんは店の変わりように戸惑っていたらしい。
その理由は、リニューアル工事の予定とコロナ禍が重なってしまったからである。
リニューアルの告知を行う前にコロナが蔓延し、告知も何もできないまま半年間、休業を余儀なくされたのだ。

 

「前はいかにも『教室』というすごくレトロモダンな雰囲気で、それを気に入ってくださっていたお客さまがすごく多かったんです。そういう常連のお客さまが、コロナがちょっと収まって久しぶりにいらっしゃって、雰囲気が変わりすぎて驚かれたりしていました。『なんでこんなことしたん?』というようなご意見もいただきました。」

 

長年店を利用されてきた常連客の方々の気持ちも分からなくはない。
いつまで続くか分からないコロナ禍に不安を抱いている中で、それまでと変わらないものに触れて安心したいという思いがあったのかもしれない。

 

「けれど、3年が経つうちにお客さまの層はずいぶん変わりました。芸術の道を目指している方、芸大・美大に通っている方や金氏さんのファンの方、東京からわざわざ来られたとおっしゃる方などもたくさん増えました。とにかく若い方が増えましたね」

 

「芸術の発信地・京都芸術センターの中にあるカフェ」

明倫店は京都芸術センターの中にある店舗だ。
京都芸術センターやアーティストとはどの程度の関わりがあるのかについて質問した。

「芸術センターを通して依頼をいただくことはあります。たとえば、展示会があるときにそのアーティストさんの作品をモチーフにしたケーキを作ってほしいとか、お花の展覧会があったときに、そのテーマに沿ったお菓子を作ってほしいと依頼されたこともあります」

展示会をしたアーティストさんにとっても、ファンにとっても、とても嬉しいサービスだろう。
他にも、芸術センター内での会議やパーティーには、珈琲や料理をケータリングしているそうだ。
こういった柔軟な対応ができるのは、「前田珈琲」の強みではないかと森さんは付け加えられた。

 

「『前田珈琲』はどの店舗でもわりと柔軟な対応をしています。例えば『こういうのは嫌いやからこうしてほしい』とか、『ここはこうして』とか、普通のカフェやレストランならお断りするようなことも、お客さまがおっしゃったご希望・ご要望にはできるだけ応えようという精神はあると思いますね」

 

実は明倫小学校出身だったという森さん。当時の面影と現在の違いを聞いてみた。

 

「もちろんエレベーターなんかは新しいですけど、廊下とかはなんにも変わってないですね。今年(2023年)で芸術センターが開館して23年になりますけど、当初はすごく斬新なことに思えました。近くに住んでいたんですけど、『何ができたんやろな』、『何をやってはるんやろな』という感じやったんです。でも今はもうけっこう街に馴染んでいるかなと思いますね。良いのはそのまま残されていて『素敵やな』と思っています、いつも」

 

出身の学校だからこそ、たくさん思い入れのある校舎がほとんど当時のまま残っているというのは懐かしく嬉しいことだろう。
森さんの言葉の端々からそういった思いが感じられた。

 

京都芸術センターの歴史については下記の記事をご覧いただきたい。

 

京都の地で芸術を〈前編〉 小学校跡地×芸術!?出会い、学び続ける場「京都芸術センター」とは

京都の地で芸術を〈後編〉京都芸術センターの活動、そしてこれから

京都芸術センターを探検!ザ・近代建築な元小学校の魅力とは!?

 

京都芸術センター前

 

明倫店ならではの魅力について伺った。

 

「この店舗は本店の次にできた店なので、社長や会長をはじめ皆が大切にしているというのが凄く伝わってきて、それがすごく嬉しいです。その店を任されているというのがやりがいにもなりますし。なにより、小学校跡にある店舗という点に大きな価値があると思います。京都にはカフェが沢山あるけれど、そんなお店はそうそうないですから」

 

「従業員から見た社長さん」

 

本店の次に明倫店を作られたという、「前田珈琲」の現社長・前田剛氏のお人柄についても森さんはお話してくださった。

 

「社長業のかたわら、毎日お店に立っていて、コーヒーを淹れたり鍋を振ったりしています。だから従業員と同じ目線に立てるんでしょうね。毎日顔を見ますし、何かあったら声をかけてくれますし。そういう社長の人柄がよその方にも伝わっていって、いろんなお話をいただいたりとか、こうやって人脈が広がってここまでお店が展開できたのも、社長の人柄なのかなと従業員ながらそう思いますね」

インタビューを受ける森さん(後ろ姿)

 

「ホームページを拝見すると、社長さんも社員の方と同じ立場にいらっしゃって、楽しいことも苦しいことも分け合っておられるという雰囲気が分かりますね」
インタビュアーがそう言うと、森さんは「分かりますか」と声を弾ませた。

 

「本当にそうでコロナで大変だったときは、お店が閉まって私たちも半年くらい仕事がなくなってしまったわけですが、会社も大変なのに社長は私たちのことを気遣ってくださいました。有難いなと思います」
嬉しそうに、そして誇らしげに話す森さんの姿から、社長の温かいお人柄が伝わってくるようだった。

 

「前田珈琲と芸術とこれから」

 

今後の展望についてお聞きした。

 

「現代アートって難しいという印象を持たれがちだと思うんです。だけど直感で面白いな、楽しいなって感じていただけたらいいなと思っています。そう感じていただけるような店づくりをしていきたいです」

 

「メニュー紹介」

 

最後に前田珈琲明倫店のメニューを紹介したい。
前田珈琲と言えばモーニングやスパゲッティ、サンドウィッチなどが有名だが、今回は珈琲を中心に明倫店限定メニューも紹介する。

 

【前田珈琲共通メニュー】

 

・スペシャルブレンド 龍之助

 

この珈琲は飲んだ瞬間はスッキリとしており、後から味と香りが湧き上がってくる。コーヒー豆特有のフルーティな甘さと、それを際立たせるほのかな苦みが調和していて、一口をゆっくりと堪能できる。
とても飲みやすいので、珈琲が苦手な方でも飲めるだろう。まず一口目は砂糖やミルクを入れずに試すのがおすすめ。

明倫クッキーのアイスサンド(黒ゴマ)とスペシャルブレンド龍之助

 

・コーヒー 弁慶(モカ イルガチェフェ)

 

珈琲が来た瞬間から深く香ばしい匂いがする。こちらの珈琲は苦味が少なく、酸味は強いものの良いアクセントになっている。
スイーツの甘さととても相性が良く、一緒に頼むとなおさら味を楽しめる。

モカ 弁慶

 

【明倫店限定メニュー】
・明倫クッキーのアイスサンド(全3種)

 

・「明倫店限定」珈琲と抹茶のパフェ

 

上には抹茶アイスに小豆と明倫クッキー、下には珈琲ゼリーと抹茶ゼリーが潜んでいる。アイスや小豆の甘さと珈琲ゼリーの苦味がマッチして飽きることなく食べることができる、一杯で満足度の高い一品。餡蜜をかけて召し上がれ。

珈琲と抹茶のパフェ

 

他にも美味しいメニューが沢山あるので、近くに立ち寄った際はぜひ来店してみてほしい。

 

前田珈琲明倫店の公式ページはこちら

https://www.maedacoffee.com/shopinfo/meirin/

 

前田珈琲のインスタグラム公式アカウントはこちら

https://www.instagram.com/maeda_coffee/

 

 

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