京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅱ」は、学生が見て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。
本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。
(構成・執筆:文芸表現学科 2年<執筆当時> 越山奏海)
京都の通りの一つ、大通りである四条通りから室町通りに入り、御池通りに向かって錦小路通りを超えると、古風とも近代的とも違う、いわば『モダン』な建物が現れる。
その建物、「京都芸術センター」は、1993年に閉校し、124年の歴史に幕を閉じた小学校、「元明倫小学校」の建物を利用した施設だ。
私たち、京都芸術大学・文芸表現学科の学生は今日、この施設にインタビューに来ていた。
インタビューをさせてもらった広報担当の草木マリさんは、普段は見ることができない場所も快く案内してくれた。
草木さんに話を聞いた記事はこちら。
京都の地で芸術を− 小学校跡地×芸術が特徴的な「京都芸術センター」とは 〈前編〉
京都の地で芸術を−京都芸術センターの活動、そしてこれから〈後編〉
モダン建築の中でもスペイン風だというこの建物は、1931年に建て替えられた姿をほぼそのまま残している。当時の最先端だった鉄筋鉄骨のおかげで耐震基準をクリアし、大きな改築や補強をせずに済んだことでこの姿を残せているというのが、草木さんの言葉だ。
豪華で心躍る西館
最初に案内されたのは西館。
役所の出張所も兼ねていた番組小学校。明倫小学校も例外ではなく、この場所は「大人の場所」で子供は滅多に入れなかったと、かつてこの小学校に通っていた方が言っていたらしい。
そもそも、番組小学校とは「日本で最初の学区制小学校」と言われている64の小学校だ。その中のいくつかは近代建築史的にも重要なものが多く、今なおその姿をとどめている。
この場所は来客をもてなす時にも使われたらしく、かなり豪華な作りになっている。
フリースペースは、取材時はアーティストの方が使っており、残念ながら入れなかった。草木さんによると、催し物を開催するには当初のままだと天井が低く、2000年のセンター開設に際して床を掘り下げることで高さを出しているらしい。
畳が香る78畳の大広間
ぎしぎしと鳴る階段を登れば、障子で囲まれた和式の大広間にたどり着く。
78畳にもなるこの大広間は、トークで利用することもあれば、映像系のインスタレーション(空間そのものをアート作品としてみなす手法)に使われることもある。畳に障子という日本独特の様式であることから、海外のアーティストにも人気があり、伝統芸能のワークショップで使われたりもする。
モダン建築を感じる講堂
次に案内されたのは講堂だ。
窓も当時のままのもので、今のスチールサッシと違い、鉄で作られている。そのため、格子状の、独特な形になっている。
講堂から味のある渡り廊下を通り、北館へ。
教室が連なる、小学校を感じる北館
北館の二階に来てすぐに目に入るのは、どの階にもつながっている大掛かりなスロープだ。ちょうど制作室を使っているアーティストの方が自転車を押して上がってきた。曰く、劇の小道具として使うらしい。
スロープを使って一階に降りると、面白いものが目に入った。
洋風な模様、魅力的な格子窓、木製の階段、見れば見るほどここが令和の世だと忘れてしまうような、今日とは異なる景色に圧倒されるけれど、教室の並んだ廊下、階段の踊り場、今はもうかなりかがまないと使えないような手洗い場が、確かにここが小学校だったのだと思わせる。
モダンで、どこか懐かしさを覚える階段や廊下の風景。かつて教室として使われていた部屋は、今はアーティストが作品作りをする制作室としての役目を持っている。
京都芸術センターでおそらく一番賑わう場所、南館
ここからさらにテニスをしている地域の方を横目に校庭を横切り南館へ。この場所は、芸術センターに行ったことがある方は、一番目にしている場所ではないだろうか。
一番手前の前田珈琲明倫店は京都芸術センター開設当時からあるもので、前田珈琲の第二号店だ。
前田珈琲明倫店に話を聞いた記事はこちら。
レトロと現代アートが共存するカフェ 京都 前田珈琲明倫店
展覧会の情報から、アーティスト向け相談窓口まで。情報コーナー
前田珈琲の一つ向こう側にある情報コーナーは、芸術センターで一番人気のある場所らしい。
個性的なラインナップの図書室
その向こうには、図書室がある。蔵書の中にはなかなか手に入らないものがあったり、芸術センターの歴史を伺い知れるものがあったりする。
シナリオ、脚本系の蔵書が豊富で、制作室を使ったアーティストが残した、ここにしかない脚本などもある。また、アーティストが寄贈してくれたものもあり、西陣織のハギレを集めた見本帳などもあったりする。
ビデオも蔵書も古いものから新しいものまで揃っており、今までに芸術センターで実施したイベントのチラシが残っていたり、開館から続いていた『明倫art』がvol.1から残っていたりと、京都芸術センターの歴史を窺い知ることができる。
草木さんがおすすめと言って見せてくれたのは、『KyotoArt Today』というビデオだ。90年代の京都の画廊を収めたドキュメントで、やなぎみわなど、今では有名なアーティストの駆け出し時代を見ることができるという。
こだわりを尽くした和室
南館の階段で一気に屋上まで登ると、ザ・日本!という感じの和室がある。
1931年の時から屋上にくっつくように建てられたこの和室は、当時は同窓会やお作法室として使われていた。
今は電気炉を入れてお茶会ができるようになっており、明倫茶会はここでも行われる(お茶会の趣旨に併せて、講堂や大広間などでも開催される)。ここでも海外のアーティストがパフォーマンスをしたり、ボランティアさんと友の会の方々がお茶のお稽古をしたりしているが、基本的にイベントの時にしか人の目に触れない部屋だ。
小学校の気配が残る施設、京都芸術センター
施設の至る所から歴史を垣間見ることができる京都芸術センター。興味を持たれた方はぜひ一度立ち寄ってみていただきたい。そのついでに、展示を見たり、美術に触れたりするのも楽しいのではないか。
また、この施設は若手のアーティストへの支援のために作られたものだ。制作室を使うのに料金を払う必要はない。条件と言えば、何か外向けにワークショップなどを開くということだけ。アーティストの方にとっては強い味方といえるだろう。
※制作室は要申請。募集は年に2回で、採択されれば利用が可能。
(詳細は京都芸術センターホームページへ)
京都芸術センターのホームページ(https://www.kac.or.jp/)
前田珈琲明倫店(https://www.maedacoffee.com/shopinfo/meirin/)
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