INTERVIEW2022.11.25

デザイン

「Unity SYNC 2022」で講演!常識やぶりのゲームを卒業制作で実現させた辻村奈菜子:卒業生からのメッセージ

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  • 京都芸術大学 広報課

今年10月、オンライン講演会「Unity SYNC 2022」が開催されました。大手ゼネコンやIT、電機メーカー、ゲーム会社、国土交通省まで、あらゆる業種の最先端クリエイターやエンジニアたちが、Unityというゲーム開発プログラムの可能性について熱弁をふるうこの会合。そこに一名、大学を卒業したばかりで招待され、個人として講演をおこなった人物がいます。
本学キャラクターデザイン学科卒業生の辻村奈菜子さん、22歳。その講演テーマでもある独創的なゲーム、『ハコニワ』の制作秘話から「なぜ芸大に入ったのか?」まで、辻村さんの在学ヒストリーをお伺いしました。
 

画面の中と現実世界がリンクする!?『ハコニワ』紹介映像

 

美術の先生からの“お告げ”

—本学への進学を決心したのは、いつ頃ですか?

すいません…じつは、AO入試に受かってからです。中学・高校と美術部でしたが、ほとんど真面目に描いたことがなくて。絵は趣味の範疇だったので、得意科目だった英語分野に進学しようと考えていました。
ところがあるとき、美術の先生が「君は芸大に行った方がいいよ」と。ちょっと変わり者であまり人を褒めない先生なだけに、「そうなのかな?」と妙な説得力を感じてしまって。「本当に自分がやりたいことは何か」よく考えて、やっぱり芸大へ行くことにしました。
そこからあわてて、先生おすすめの芸大のオープンキャンパスへ行きはじめ、「キャンパスの雰囲気が明るいから」という単純な理由でこの大学に決めたんです。

他の大学にするか芸大にするか、かなりギリギリまで迷いましたが数多くの学科がある中から、私自身キャラクターの絵を描くのが好きで、学科の雰囲気が楽しそうだったのでキャラクターデザイン学科にしました。入学時に考えていたのはそれぐらい。
その視野を大きくひろげてくれたのは、1回生の授業で出会った、あるLA(授業補佐役)の先輩です。最初は明るい人柄に惹かれて、その先輩が作ったゲーム作品を見たら「すごい!こんなのをつくれるんだ」と。たちまち憧れの存在になってしまい、自分も先輩の所属しているゲームゼミでこんなゲームを作りたい!と思いました。

ゼミのメンバーと。とても楽しそう!
以前にはVRゲーム『ARCAID』を制作。


—2年生からゼミを決めることに、とまどいは?

3年生からゼミを決める大学が多いと聞いたことがありますが、私にとっては2年生から決めるのが当たり前になってしまったので特に何も思いませんでした。
まだ学校に来てから1年しか経ってない中で、どのゼミにするか迷う子もいますが、途中で変更できるし、どのゼミに入っても幅広く学べることに変わりありません。イラストやキャラクターデザイン、グラフィックデザイン、CG、アニメ、プログラム、など、デジタルツールの使い方や表現の仕方については、ゼミに関係なく多くの授業が揃っています。

そのなかで、たとえば私みたいにゲームゼミの学生なら、ゲームづくりの視点からデザインを学んだり、ゲームに使うモデル作成のためにCGを学んだり…。ゼミにいればそれ専門の先生と密に相談できるので、ゼミという軸があることで、より応用的に、ひとつひとつのスキルを習得できると思います。
ちなみに自分の代のゲームゼミは、先生いわく「負けず嫌いがいっぱいいる」そうで、ボーッとしていたら置いていかれそうな、モチベーションの高い人ばかり。「自分もがんばって、いろんなことをやってみよう」と、すごくいい刺激をもらえました。
 

卒業制作『ハコニワ』成長記


—画期的なゲーム『ハコニワ』誕生のきっかけは?

1年生のときに受けたゲームの授業が、アナログゲームとデジタルゲーム、それぞれの奥深さを実感できる素晴らしい内容で。それまで「ゲームといえばデジタル」だった自分の思考が、大きく広がりました。
また、憧れの先輩が、リアルなアイテムを使ったゲームをつくっていたこともヒントに。なので、“リアルとデジタルのステージが連動する”というアイデアは比較的早くまとまりましたが、悩んだのは、「どんな世界観にすれば、その設定を活かせるか」。ずっと頭の片隅で考えながら、まったく別のゲーム実況動画を見ていたとき、「これならいける!」と突然、『ハコニワ』の画面イメージが目の前におりてきたんです。
そこからは、実現に必要な技術をあらゆる方面から探し出し、トライ&エラーの繰り返しで一歩ずつ前へ。3月中にアイデアがまとまり、4年生4月からプログラミングといったゲームの土台をつくりはじめ、9月にはリアルなジオラマ制作へ…ほぼ1年間、自分のあらゆる活動を『ハコニワ』制作に注ぎ込みました。

卒業制作が開始される頃には、すでにCGのマップを制作。エンディングまでの道のりもほぼ完成していたのだとか。


—Unityを使うことにした理由は?

プログラミングの授業で推奨されていたソフトがUnityで、学んだことをそのまま利用できたからです。もちろん授業で教わったのは基礎なので、それをどう応用すれば自分のやりたいことができるか、プログラムの先生に質問して…。いろんな専門家の先生が身近にいる、大学のありがたさを痛感しましたね。ジオラマづくりでは、学科外の先生にもアドバイスをもらいました。
しかも、お世話になったのは、学内の方だけじゃないんです。『ハコニワ』を実現するのにどうしても必要だったのが、ソニーの「TOIO」というロボットトイ。TOIOの製品コミュニティで質問しまくっているうちに、その中にいたUnityの方とご縁ができて。Unityの方が社内で私の作品を紹介してくださったことが、「Unity SYNC」での講演につながったんです。

とっても緻密なジオラマ!ゲーム画面と連動しています。
(開発中のゲーム画面)
ブロックを配置したり、回転させたりして進みます。
(センサー配置によるマップ変化のイメージ)

 

NO GAME, NO LIFE.


—まさに学びの集大成、『ハコニワ』制作で得られたものは?

ひとつはやっぱり、自分を支えてくれた先生や学友をはじめ、TOIOやUnityの方々など、いろんな人とのつながりでしょうね。もうひとつは、自分に自信がついたということ。
もちろん、作品そのものの納得度は60%。まだまだやり残したことがいっぱいあります。けれど、「自分はここまでゲームに打ち込める」という認識、そして、「これからもゲームをやっていく」という覚悟のようなものを得られた気がするんです。

面接当日にキャリアセンターで身なりを整えてもらい、なんとか受かったいまの会社は、働きながらスキルを磨ける魅力的な環境です。3Dやアニメなど、学科で学んだこともしっかり活かせています。
この職場でひとつひとつの制作物における完成度を高める一方、個人での活動として、ゼミの同窓生と新しいゲームづくりをスタート。まだまだこれからですが、憧れの先輩がそうだったように、自分が心から楽しみつつ、「プレイヤーを喜ばせる」ものをつくりだしたいと思っています。

卒業展で『ハコニワ』を紹介している辻村さん。


—最後に、在学生や入学志望者へのメッセージは?

在学生のみなさんには、「とにかく、先生にどんどん質問しよう!」。こんなにいろんな分野のエキスパートに囲まれるなんて、社会人ではあり得ない贅沢な環境だから、活用しなくちゃもったいないです。ゼミや学科の枠にとらわれず、知りたいこと、やりたいことをぶつけてみてください。

そして、入学を考えている方に伝えたいのは、「胸に手をあてて、本当に自分の好きなものを考えてみませんか」ということ。私自身、もし先生のひとことがなかったら、英語の学びに進んでいたと思います。でも、いま振り返れば、それはテストでいい点が取れたからで、本当にやりたいことじゃなかった。「好き」って、すごく大事なエネルギーだと思うんです。私は、本当に好きな道を選べてよかったと思うから…ぜひ、みなさんにもそれを選んでほしいです。


辻村さんの卒業制作『ハコニワ』の詳細については、学科ブログやUnityのYouTubeで紹介されているので、ぜひそちらをご覧ください。
 

現実世界にもゲームのステージが!?ジオラマとゲームの世界をリンクさせて遊ぶ『ハコニワ』


他の記事でも語っておられたように、自分を導いてくれたLAの先輩への恩返しとして、自身もLAとして1年生をサポートしていた辻村さん。すこし照れながらも、「私が先輩に憧れたように、私に憧れを感じてくれる後輩もいるようで」と話してくれました。
だれかの背中を追いかけることで、見えていなかった先に進める。だれかに追いかけられることで、もっとがんばろうと思える。辻村さんが“素晴らしいループ”と呼んだこのつながりは、これからも新たな創り手を育ててくれることでしょう。

そして、辻村さん方の新作、本当に待ち遠しいです。「まだわからないけど、たぶんPCゲームとして配信するのでは」とのことなので、ゲームファンのみなさんは、肩を回しながらお待ちください。辻村さん、ありがとうございました。どうぞこれからもがんばってください!

 

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