REPORT2022.12.22

デザイン

「人々が元気に明るく働ける社会」のために―2022年度 検診車ラッピングデザインコンペ表彰式

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  • 京都芸術大学 広報課

社会人なら、年に一度は必ず受ける健康診断。レントゲン検診でお馴染みの検診車は、利用されている方も多いのではないでしょうか。そんな検診車の外装デザインを、実は本学の学生も手掛けています。今回は、本学で2020年から毎年、開催されている「検診車ラッピングデザインコンペ」についてご紹介いたします。
 

心をやさしく包む、ラッピングデザインを

社会実装プロジェクトの一環であるこのコンペは、学内の健康診断でもお世話になっている一般財団法人京都工場保健会(以下、京都工場保健会)からのご依頼で始まりました。京都工場保健会では1941年に民間で初めてレントゲン車を配備された経歴があり、現在では胃部・胸部レントゲン車、婦人科検診車などを含む計42台の検診車を所有されています。また、健診を受診される方は年間50万人を超え、高品質、高精度の健康サービスを提供されています。

採用された最優秀賞のデザインは、その年に製造される検診車の外装に実際に用いられます。そしておよそ20年もの長い間、関西を中心に健康診断などで活躍することになります。関西にお住まいの方の中には、学生がデザインされた検診車をご利用いただける機会もあるかもしれません。京都工場保健会からは、「受診者の方々が緊張などされている中、真っ白な検診車よりもラッピングがあった方が和み、喜ばれている」と、ご好評をいただいております。検診の際は緊張されたり、不安になられたりすることもありますよね。そんな皆さんの心を、学生のデザインによって少しでも和らげることができればと考えています。
 

「人々が元気に明るく働ける社会」のために

今回 受賞された3名の学生

毎回、多くの応募を頂いている「検診車ラッピングデザインコンペ」。今年は37案の応募がありました。そのうち、2つが優秀賞、1つが最優秀賞として選ばれ、11月19日(土)に学内で表彰式と検診車のお披露目が行われました。今年のデザインのテーマは、動物をモチーフに「人々が元気に明るく働ける社会」。検診を受ける機会の多い社会人に対し、様々な社会情勢の中でも、健やかに仕事を楽しんでもらうためのアプローチが感じられます。また、動物をモチーフにすることで、より癒しや安らぎをお届けできるデザインとなりました。

表彰式では、京都工場保健会 井上健診技術部長より、賞状と副賞の授与が行われました。今回の検診車は胃部・胸部のレントゲンの検査に使われるもので、昨年よりも大きい車体にラッピングされ、より迫力のあるデザインに仕上がったとのこと。これから街中を走ったり、検診で活躍したりする中で、より多くの人の目を惹くことができそうです。

京都工場保健会 健診技術部長 井上氏の挨拶


今回、最優秀賞を受賞され、デザインが採用されたは、情報デザイン学科イラストレーションコース2年生の秋山光さん。デザインのコンセプトについては、応募の際に以下のように書かれていました。

「孔雀をモチーフにしたデザインです。孔雀は縁起のいい動物であり、幸運をもたらすとされています。検診車を見た人や利用しに来た人に楽しんで見てもらうために鮮やかでポップな見た目に仕上げました。人は古来より孔雀からパワーやエネルギーを感じていたと知り、少しでもこの検診車を見た人の力になれたらいいなという想いを込めました。色とりどりの綺麗な飾り羽が上に向かって伸びているのは、これからも健康に育ち未来に向かって進もうという意味を込めました」。

秋山さんのデザイン案
笑顔で記念撮影


受賞後、「検診車を街中で見てもらえたら嬉しいです」と話された秋山さん。検診車の入り口のある右面、目に飛び込んでくるのは華やかな孔雀の姿。そして後ろ側から左側までをぐるりと包み、カラフルな羽がのびのびと広がっています。その気品溢れる姿に、街中で出会えると「いいことあるかも」と、しあわせな気持ちになれそうです。きっと現代でも、たくさんの人の心に活力を与えてくれることでしょう。

迫力満点 車幅いっぱいのサイズ
尾は途切れることなく空に向かって伸びています

続いて、優秀賞を受賞されたのは、専門学校ビジュアルデザインコース2年生の野口大輝さん。作品のコンセプトは次のように書かれていました。

「向日葵と優雅に飛ぶ鳥をモチーフに制作しました。向日葵は太陽の花であり、明るく照らされ元気に自由に生きていくことを表現しました。又、それぞれの面に一匹だけ青の鳥を入れています。周りと違っても、同じように生きていけることを表現しました」。

咲き誇る向日葵は、太陽に向かっているように描かれたとのこと。オレンジや黄色のグラデーションで彩られた鳥たちは太陽の色、アクセントとなる青い鳥は晴れ渡る空色のよう。鮮やかな配色が、夏の生き生きとした印象を与えてくれます。また、色に関わらず、それぞれの鳥が共に元気に飛ぶ姿に見る人の心がぐっと掴まれるデザインです

野口さんのデザイン案
お一人ずつ受賞のご挨拶


同じく、優秀賞を受賞されたのは、美術工芸学科基礎美術コース3年生の湊綾夏さん。受賞コメントでは、「検診では不安もあるのかなと思うので、少しでも役に立てたらと思います」と話されていました。作品については、「一面の花畑と平和の象徴として幅広く知られている鳩をモチーフにしました。正面から見て左側には自由にどこまでも羽ばたいていくイメージで、右側は木の上で少し休息しているようなイメージで制作しました」とのこと。入り口側で一休みしている鳩は、検診を受ける人が安心できるよう、見守ってくれているようにも見えます。また、反対側では、鳩たちが一面の花畑の中を気持ちよさそうに飛んでいくのが伝わります。見ているとやさしい気持ちになり、検査を待つ人の心をリラックスさせてくれそうですね。

湊さんのデザイン案
賞状と副賞 並びに花束が贈られました


続いて、荒川副学長より、デザインについてコメントをいただきました。

「なぜか鳥と花というモチーフが共通していますが、“withコロナ”の中で、これから飛び立っていきたいという感情の表れかと感じます。それぞれが責任を持ちながら、未来に飛び立っていけるようなデザインになったと思います」。

デザインに共通している「鳥」や「花」は、様々な情勢の中であっても、あらゆる人にとって心に希望をもたらしてくれる存在なのかもしれません。

ご挨拶される荒川副学長

 

これからも、「人々の健康を守りたい」という想いを形に


最後は、検診車の前で皆さんと記念撮影。お天気にも恵まれ、秋晴れの中に優美な孔雀が色鮮やかに映えていました。お披露目の後、皆さんとの会話の中で、「ぜひ今後も続けていきたいですね」と話されていた検診車ラッピングデザインコンペ「人々の健康を守りたい」という想いから発足された京都工場保健会の方々とともに、これからもデザインを通して人々の健やかな心を守るために、活動を続けていけることを願っています。ぜひ、今後ラッピングデザインされた検診車を見かけられた際は、「このデザインには、どんなメッセージが込められているのかな」と、想像していただければ幸いです。そして、皆さんの心に少しでも多く、彩りが添えられることを祈っています。ご応募いただいた学生の皆さん、京都工場保健会の皆さん、ありがとうございました。今後も検診車の活躍を楽しみにしています!

 

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