INTERVIEW2022.09.06

文芸

京都の活断層と地震 ― 文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信

edited by
  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅴ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。

本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。

(取材・文:文芸表現学科 3年 岡知里)

 

3月末以降、京都府南部を震源とするマグニチュード4の地震が4回発生しました。最近なんだか地震が多い気がして、「京都は災害が少ないと言われているから大丈夫」と安心していいものか、考えるようになりました。調べてみると、昔から京都には大きな地震が度々発生していたことがわかります。京都に住む人たちは地震とどう向き合えばいいのでしょうか。
地震学者であり、京都芸術大学の前学長である尾池和夫先生を静岡県立大学学長室に訪ねてインタビューしました。

 

活断層がもたらすもの

京都府のホームページを参考に作成

 

皆さんは、京都にこんなにもたくさんの活断層があることを知っていましたか?
海のプレートによって圧縮されている陸のプレート内にたまったひずみが限界に達すると、岩盤の弱い部分でずれが起こります。そのずれが断層であり、今後も活動を繰り返すような断層が活断層です。日本で起きる地震の多くは活断層が関係しています。

尾池先生は、まずはじめに、京都にあるいくつもの活断層と京都の文化のつながりについて話してくださいました。

「京都には美しい竹林があり、朝掘りの竹の子は美味しいと有名です。古い地図を見てみると昔、竹林は山のふもとで一列に並ぶように生えていました。その理由は活断層にあったのです。活断層が動いて地震が起こるたび、のし上がった地面は崩れ落ちます。崩れ落ち、山のふもとになった場所というのはとても柔らかく弱いため、雨が降ると崩れてしまいますが、竹を植えることで根が張り、強くなります。竹も柔らかい土によって、よく育ちます。そうやって竹林ができたんです」。

地震で繰り返し動いた活断層があるから、京都では美味しい竹の子ができるのですね。京都の豆腐やお酒が美味しいことや、お茶の文化ができたのも盆地をつくった活断層の恩恵だそうです。京都盆地周辺の活断層は、上下にずれるという特徴があります。大地震のたびに地層が上下にずれ、隆起した部分が盆地を囲む山になり、落ち込んだ部分が盆地となりました。隆起した山地からは浸食で土砂が盆地に流れ込み、盆地には分厚い堆積層が発達しました。そこに溜まった地下水により、美味しい豆腐やお酒がつくられる。このように活断層の恩恵を受けて育てられた文化を、尾池先生は「変動帯の文化」と呼んでいるそうです。

 

京都府長岡京市の竹林

 

活断層による地震の特徴

京都に住む人々に恩恵を与える存在でもある活断層。それによって京都では二千年に一度ほど大地震が起こるそうで、「怖いのは活断層が動いたときだけ」と尾池先生は話しました。

「地震は1秒に2km、岩盤に割れ目が走ります。50kmくらい割れるんですが、それで止まりますからね。50km割れたら、1秒に2kmと考えると25秒でしょう? 割れ目が走っている間だけ揺れるわけですよ。だから怖いのは25秒だけ。二千年に一度、25秒動く。だから活断層が動かずじっとしている二千年の間は、美味しいものを食べて楽しめるわけです。つまり、活断層というのは二千年ありがたい存在で、25秒だけ怖い。そう考えたら、揺れたときだけ怪我しなければいいんです。非常に簡単なんです」。

地震は心得ていれば怖くない。揺れたときに怖い思いをしないよう、家具の固定や配置の見直し、避難場所の確認、非常用品の定期的な確認など、できることから対策をしておくことが重要です。特に寝ている場所に物が落ちてこないようにしておきましょう。

 

活断層には物語がある

ちなみに、京都芸術大学は花折断層という活断層の南部に位置しています。断層の上部に設置されていて、その隆起運動による景観が十分に活用されています。この花折断層の活動履歴はよく調べられていて、最新の活動は2800年から1400年前の間に、もうひとつ前の活動は今から7900年前から7000年前の間であったということがわかっています。

「京都にはたくさんの活断層がありますが、ひとつひとつにストーリーがあって。花折断層は今のところ二千年動いてないんです。二千年に一度動くとしたらそろそろですが、どうやらもうちょっと先になりそうですね」

活断層というのは、大きな地震が起こった跡。京都盆地の周辺には数々の活断層があり、これからも地震は必ず起こるとわかります。それでも京都は地震が少ない、被害が小さいと言われるのは、大きな地震が起こるのは千年に一度だったり、数百年に一度だったり、間隔が大きいからだといえます。大きな被害を出した地震を経験した人が寿命を迎え、地震を経験した人が生きておらず、以前の震災を知っている人が極めて少ないのです。

「自分は大丈夫って思ってしまう。それはとても危険なことです」。

京都は地震が少ないと言われているから大丈夫、と呑気にしていてはいけないなと思いました。これからも地震は起こるでしょう。しかし、きちんと対策をしていれば大丈夫なのだと繰り返し、伝えてくださいました。

 

地震には規則性がある

「自然現象っていうのは、小さいものが数が多くて大きいものは数が少ない。そういう規則性があるんです」。

最近の京都府南部の地震はマグニチュード4という小規模の地震でした。それくらいの規模の地震はよく起こるそうです。ただ、集中的に同じところに起こり出すと、大きい地震がそこで起こるというしるしになるので、気をつける必要があると尾池先生は言います。
地震には規則性がある。それは、地震の分布図から見てもよくわかります。尾池先生がコンピューターで書いた地震の分布図を見せていただきました。

 

これは、2001年1月1日から2022年4月30日までに起こった地震の分布図です。
違う年代の分布図を見てもだいたい同じような分布になっているそうで、それはどういうことかというと「起こってることに意味がある」ということ。いつをとってみても似たような分布図ができるというのはとても重要なことで、意外と気付かれていないことなのだと教えていただきました。

 

南海トラフの巨大地震

40年以内に起こるとされている南海トラフの巨大地震についてもお話を伺いました。これは、活断層による地震よりも規模が大きいものだそうです。

「南海トラフの巨大地震は、活断層の地震とは全然違うんですよ。岩盤が500km割れるんです。1秒2kmで考えると250秒も揺れが続くわけで、とても長いですよね。4分も5分も揺れが続く。それだけ長く揺れると、建物もだいたい壊れるわけです。超高層ビルはそれに耐えられるように建てられてはいるんだけど、中がぐちゃぐちゃになるんです。棚とかが全部ひっくり返って。そういうのが怖いんです」。

2022年1月、政府の地震調査委員会は、南海トラフで今後40年以内に起こるマグニチュード8〜9の地震が発生する確率を前年の「80〜90%程度」から「90%」に引き上げました。南海トラフの巨大地震は、およそ100年から150年の間隔で発生しています。1944年の昭和東南地震から、今年で78年。京都府南部は被害が想定される防災対策推進地域に指定されいることも踏まえると、不安に思う方も多いのではないでしょうか。しかし、尾池先生は穏やかにおっしゃいました。

「危機感を持つことは非常に重要ですが、必要以上に怖がる必要はない。まだこれから地震が起こるまでに準備できる時間は残されています。地震は積み立て預金と同じでだんだん大きくなります。もし早めに起こっても規模が小さいので心配ありません」。

地震の発生を防ぐことはできませんが、甚大な被害にあわないよう自分たちにできることはたくさんあります。この記事を読んで、自分にできることから対策をしてみようと思っていただければ幸いです。

 

インタビュイー
尾池和夫

1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を務めた。2008年から2018年3月まで日本ラジオパーク委員会委員長。2013年から京都造形芸術大学学長。2020年大学の名称変更により京都芸術大学学長。2021年から静岡県立大学理事長兼学長。著書に『新版活動期に入った地震列島』(岩波科学ライブラリー)、『日本列島の巨大地震』(岩波科学ライブラリー)、『変動帯の文化』(京都大学学術出版会)、『日本のジオパーク』(ナカニシヤ出版)、『四季の地球科学』(岩波新書)、『季語の科学』(淡交社)、句集に『大地』(KADOKAWA)『瓢鮎』(KADOKAWA)などがある。

インタビュアー

岡知里
2001年京都生まれ。
2020年京都芸術大学文芸表現学科に入学。
取材執筆、編集を学ぶ。本や漫画を読むことがなによりも好き。

 

京都芸術大学 Newsletter

京都芸術大学の教員が執筆するコラムと、クリエイター・研究者が選ぶ、世界を学ぶ最新トピックスを無料でお届けします。ご希望の方は、メールアドレスをご入力するだけで、来週水曜日より配信を開始します。以下よりお申し込みください。

お申し込みはこちらから

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

お気に入り登録しました

既に登録済みです。

お気に入り記事を削除します。
よろしいですか?