なんだか不思議で、なんだかかわいい大学案内パンフレット『mymymy』(STUDENT TODAY)は高校生のみなさんのお手元にすでに届いているでしょうか。
ページを開いて読み始めると、“これは大学案内パンフレットです”と言われても、にわかには信じがたい『mymymy』の世界観にぐっと引き込まれます。読むたびに小さなこだわりを発見したり、ぽつりぽつりと紡がれる言葉の数々に妙に考えさせられたり…。大学案内パンフレットのはずなのに、“鞄に入れて持ち歩きたくなる”、“本棚のコレクションに迎え入れたい”、“なんか捨てられない!”という気持ちになった方も多いのではないでしょうか。
『mymymy』は芸大生の等身大の情報が詰め込まれた、芸大生がつくる大学案内パンフレットです。1、2年生を中心とした在学生が企画から撮影、取材、デザインまで、すべてのページを手掛けています。
『mymymy』のアートディレクターを務める空間演出デザイン学科の酒井洋輔先生は、芸大生による大学案内パンフレットの制作背景を次のように話しています。
憶えてもらうためにどこの大学にもない「正直なパンフレット」を作ろうと思った
新しいコミュニティに属したときに人はまず、憶えてもらいたいと思う。
それと一緒で、この大学も憶えてもらわないと始まらないと思った。その後にどんな風に憶えられたいかをコントロールしていくことがブランディングに繋がっていく。憶えてもらうためにどこの大学にもない「正直なパンフレット」を作ろうと思った。正直な人はそんなに嫌われることもないだろう。そのために学生と作ることが最も正直に繋がると思った。学生が作る分、デザインは荒く雑になる。こないだまで高校生だった子が作るんだから、当然だ。しかし、それも生の感じ、人のぬくもりを感じられる点で効果的だと思った。
今年度で15年目を迎える『mymymy』は今年から公式Instagram(@mymymy_studenttoday)を発足し、tiktok(@kyotogeijyutsudaigaku)と合わせてSNSでの発信も積極的に行っています。
今回は、12名の制作スタッフのうち、小林夏凛さん、引宇根沙弥さん、荒井真奈美さん、嶋村百々子さんの4名から、「食」をテーマとした2022年度版『mymymy』の見どころを教えていただきました!
MyMyMy2022 Prologue
田んぼにイネで書かれた「mymymy」の文字。巻頭を飾ったのは、今年のテーマ「食」を象徴的に表している“稲刈り”のドローン写真です。
大胆なコンテンツの立ち上げ背景を聞くと、「完全に深夜テンションです(笑)」とのお返事が。「冒頭のコンテンツ案をとにかく出しているときに、夜も更けてきたころ、行き詰って“ごはんといったらお米だな、じゃあ稲刈りしよう!”と」。たくさん提案した案の中から、まさかこの大胆なアイデアが採用されるとは思っておらず、酒井先生からGOサインが出たときは驚いたとか。
『mymymy』に載っているのは稲刈りの写真のみですが、実は稲架掛けや天日干しといった稲刈り以外の収穫体験もさせていただきました。「“せっかく食をテーマにした一つの本にするのであれば、農業の基礎から全部教えてあげる!”と、田んぼを貸していただいた農家の方のご厚意で、単なる撮影に留まらず“食”を再考するきっかけをいただきました」。
稲刈りの次の日に行った稲を干す作業では、最初は制作スタッフ3名ほどでふらふらになりながら進めていたそうですが、ちょうどその日は“瓜生山ねぶた”の解体式の日で、夏休み期間だったにも関わらず、お昼からたくさんの学生が手伝いにきてくれたとか。「初めて会った人だけど、雨も降っていたけど、みんなで和気あいあいと進める現場を見て、“いいな、学生パワー!”って思いました」。
なんとお手伝いの学生の数は70名ほどにのぼったそう。こうした裏側の作業にもたくさんの学生が協力してくれています。目に見えないところで生まれる“学生パワー”がこの『mymymy』をつくっています。
My GIRL IN FARMING
大学のかわいらしい学生を紹介する老舗コンテンツ。今年は大学近くの農家の方とコラボし「野菜の息吹と土の踏み心地を堪能するかわいい学生代表」を紹介しました。
撮影裏は結構過酷だったというこのコンテンツ。まずはご協力いただける農家の方々を見つけることに苦労しました。「大学近くの畑に片っ端から訪問して、農家の方の出待ちをして。趣味で畑をされている方も多くいらっしゃるので、なかなかOKのお返事がいただけないこともありました」。
ご協力いただける農家の方が見つかったと思えば、次は被写体の学生と農家の方、そしてカメラマンの酒井洋輔先生との三者の日程調整を行うのに手こずったとか。「日程調整をはじめ、一つの冊子を制作するためには意外とデザイン以外のことに費やす時間が多いことに気が付きました。一つひとつの工程が、ちょっとした社会勉強になりました」。制作のリアルな現場を学ぶことができるのも、『mymymy』の一つの魅力です。
かわいらしい学生を見てほしいのはもちろんのこと、農家の方へのインタビューにも注目していただきたいと言います。「掲載されているのはお話のほんの一部で、実際はかなりボリュームのあるお話を伺いました。それで私たちも農業の知識がついたくらいです!(笑)」
My MONKU ― 学生の大学への文句に学部長(偉い人)が答えた
SNSで集めた学生の大学への文句に学部長である河田学先生が答えるというこのコンテンツは、一般的な大学案内冊子ではあまり見られない企画ではないでしょうか。学生の生の声が詰まった『mymymy』らしさあふれるコンテンツです。
ちゃぶ台は段ボールで、食事は粘土で制作。写真をよく見てみると、実は一枚一枚メニューが違うこだわりぶりが感じられます。「ちゃぶ台返しをするたびに、河田先生にもカメラマンにも食べ物が飛んでくる。何とも言えない面白さがある撮影現場でした(笑)ちゃぶ台返しを繰り返すうちに、お箸がなくなったり、たこ焼きが一個消えたりとハプニングもありました(笑)」と楽しそうに話します。
「河田先生が撮影のときに結構ノリノリ(笑)で、“こんなポーズの方が謝っている感じが出るんじゃない?”とか“次はこんな表情にする?”など積極的に提案してくださいました!」。インパクトのあるビジュアルはもちろん、河田先生が「文句って最高のコミュニケーション」と評す、文句を通した学生とのやり取りにも注目です。
My KOIBANA ― わたしたち、学生の恋愛
学生の恋バナを集めた本コンテンツは、Instagramスタッフの企画から始まりました。
Instagramで“学生の恋愛話を教えてください!”とエピソードを募ったところ、匿名の募集だったこともあり多くの投稿があったとか。
「My KOIBANA」はInstagramで反響があった人気コンテンツの一つで、「毎週のミーティングでフォロワーやいいねの数などを確認しているのですが、この企画はリーチ数が高く、冊子にも掲載していただけることになりました」と嬉しそうに話します。
「#甘酸っぱい話」をキウイで、「#泣いちゃった話」を玉ねぎで表現したりと、食と絡めたデザインも魅力的です。
My RECIPE ― 学生が家から京都に持ち込んだ料理
さまざまな地域から集まった学生が家庭料理とそのレシピを紹介する「My RECIPE」。思わず食欲がそそられるようなイラストとその料理にまつわるエピソードから、家庭や地域に根付いた食文化を感じることができる、ご当地感あふれるコンテンツです。
実はこちらのイラストはすべて制作スタッフによるもの。「ボツを食らう回数が多くて、途中でめげそうになりました。一目見て“おいしそう”と感じてもらえるように、とにかくさまざまなパターンを何度も描いて乗り越えました」。学生から提供してもらった料理写真を参考にしたり、時には実際に作ってみたりして描きあげました。
数々の修羅場を乗り越え、さまざまなドラマが詰まった『mymymy』。完成品を手にした時の感想を伺うと、「自分が高校生の時は、“なんだ、この分厚くてかわいいパンフは?”と思っていたけど、自分がいざ制作側に回ると“あれ、これくらいの厚さだったっけ?”と思ったより薄く感じました。『mymymy』に掲載されているのはほんの一部。それだけこの1年が濃かった証拠です」としみじみと語ります。
制作に関わってくださった学生のみなさんや先生に感謝の気持ちを込めて、300冊限定で在学生に向けて『mymymy』を配付しました。毎年『mymymy』をゲットしようと長蛇の列ができる、この配付イベント。今年度も例によって、たくさんの在学生が集まり、あっという間に配布し終えました。受け取った後、すぐに開いて読みふけったり、写真を撮ったりする学生の姿が見受けられました。
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