REPORT2021.03.17

文芸

日常空間の中に浮かぶ詩。― 文芸表現学科1年生による詩の展示「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」

edited by
  • 出射 優希
  • 榮野川 文樺
  • 小倉 尚子
  • 上村 裕香

2021年3月16日(火)から3月21日(日)まで、バックス画材2階のギャラリーにて詩の展示「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を行います。

2020年12月、厳しい寒さの続く時期のことです。わたしたちは詩の展示「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」に向けて動き出しました。メンバーは、京都芸術大学芸術学部文芸表現学科一年生の4人。『インカレポエトリ』(大学を超えたインターカレッジによる横断的な詩集。大学で詩の授業を担当する詩人が選考委員となり、受講する学生の作品が選考の上、掲載される。)や京都芸術大学内のギャルリ・オーブでの公募展など、詩で世の中と繋がろうと試行錯誤してきたメンバーです。詩で世の中と繋がることを考えていくなかで「暮らしの中に詩がある環境が作れたらいいよね」という考えが立ち上がってきました。そうして、この展示「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」はスタートしたのです。

はじめまして『インカレポエトリ』 ― 大学を超えた詩作の場
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/713

うちなる時間の結晶なき混沌 ― 2020年度 Galerie Aube 公募展
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/692

 

 

体感する生活の跡の詩

この展示では、詩を生活空間の中に再現します。来場者にも詩に関わってもらい「記憶や感情など生活の中で浮かぶものを詩に残す」「詩を体感してもらう」ことを目的としています。

生活の中の詩を表現するために展示スペースに家具を配置し、その生活空間に詩を散りばめます。例えば机に広げたノートに詩が書いてある、本棚の本の背表紙に詩が書いてある、お菓子の箱の成分表示に詩が書いてある、など。私たちが共同制作した連詩の展示もあります。

詩のテーマは「十七歳の女子高生の日常」。誰もが経験する思春期特有の喜びや苦悩、安心、悲嘆などを描ければと思っています。制作メンバー各々の高校生時代(または一般的なその時期)を書き残すように詩を制作しました。

今回のコンセプトのひとつ「能動的に詩を体感してもらう」ことを実現するため、展示の中には、来場者にも実際に詩に触れてもらうコーナーを作りました。七文字単位で構成された詩を一行ずつ壁に貼り付け、その一行一行を来場者に自由に抜きとってもらうことで、来場者自身が詩の形を変化させる。それにより、少しでも詩との距離感を縮められればと思っています。

 

街場の画材屋さんのギャラリーにて

詩が好きな人から普段詩に馴染みのない人まで、幅広い方たちに来ていただきたいと思っています。バックス画材という町の画材店のギャラリーを使用することで、普段文芸に親しみがない方にも展示を見てもらいたいという狙いがあります。

詩に馴染みがない方にとっては、詩の言葉は違和感を持ちやすく距離ができやすい存在なのではないかと思います。しかし詩は日常から溶けだすように存在しています。ツイートしようとしてやめた言葉、ふと街中のビルを見上げて思い出すこと、眠る前に考えた明日のこと、全て詩の片鱗です。

 

詩人たちの作品と詩想

女子高生を主人公とした詩を書きました。インタビュー詩のような異質性は面白い取り組みなのではないかと思っています。大学入学後、オンライン授業でインタビューをして記事や詩を書く授業がありました。一度もリアルに会ったことがない相手と、言葉や語られる記憶だけで繋がる体験。それは物語や詩を読んだ時の読み手と書き手の関係にも通じます。今回の展示でもそれを活かして創作しました。

特別視される女子高生という期間をわたしはどう受け止めて生きていたのか。大学生になって、他者の視点から「女子高生」を捉え直したときに立ち上がってくる感情を詩に込めました。(文芸表現学科1年・上村裕香)

 

初めて学外で企画する展示です。文芸表現学科の学生になってもうすぐ一年。不自由な一年でしたが、不自由なりに「何か」をしなければと必死になっていました。この展示はそんな日々の集大成です。

展示の主人公は高校生。ついこの前まで高校生だったのに、今この瞬間もあの頃の感覚や気持ちを忘れていっています。何か言いたくて何も言えなかった毎日でしたが、体中を言葉の川が流れていました。それは今の自分のなかにも形を変えて流れています。みなさんの体の中に川を一本増やせるような展示を作りたいと思います。(文芸表現学科1年・出射優希)

 

今回の制作では、詩に共通のテーマがあったり、詩を複数の人で書いたりと、新鮮な取り組みとなりました。

高校生のころ、どうにかして目の前の世界から抜け出そうとしていたように感じます。今、あのころになりきって詩を書く時間を手に入れたことで、今後自分がどんな姿になりたいのか、改めて考える機会にもなりました。

女子高生というカテゴリーに属する人が「ひとりの人間」としてどう生きているか。日常空間のなにげない「もの」とともにあるひとりの感情を、丁寧に残すことができればと思います。(文芸表現学科1年・小倉尚子)

 

自分ではない主人公のいる詩の作品をつくることは、想像していた以上に難しかったです。「演じる」とも「描く」ともちがう感覚で、自分の感情を通した主人公の女子高生との向き合いかたに悩みました。日々大人に近づいて、昨日の自分でさえも他人に思えるような変化のなかで、作品では確かに経験した高校生という時間を必死にたぐり寄せています。

毎日、なにか新しいことがしたいと思っていました。そこでこの企画に出会うことができて、ようやく少し動きだせたような気がします。実現可能なのか不安になったのは一瞬で、みんなと画面越しではなくアイデアを話しあい、一緒に前向きに制作に取り組めました。(文芸表現学科1年・榮野川文樺)

 

「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」

会期 2021年3月16日(火)〜3月21日(日)
時間 11:00〜18:00(最終日は17:00まで)
場所 バックス画材 GALLERY
〒606-8167 京都市左京区一乗寺樋ノ口町11(最寄り駅:茶山駅)
入場料 無料
撮影 可。撮影した画像をSNS等で拡散していただけると嬉しいです。ハッシュタグは「#ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」、「#ぼく川」をつけてください。
在廊 有。期間中毎日メンバーが在廊する予定です。

https://twitter.com/_my_river

詩を持ち帰ってもらうインスタレーションを企画している関係で、手指の消毒、マスクの着用をお願いします。また、ビニール手袋の配布も検討しています。

 

  • 出射 優希Yuuki Idei

    2002年兵庫県生まれ。文芸表現学科2020年度入学。食べることに1番の幸せを感じる。趣味は、とにかく何でも自分で作ること。

  • 榮野川 文樺Fumika Enokawa

    2001年沖縄県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科2020年度入学。学科でことばについて学びつつ、日々舞台づくりに関わっている。

  • 小倉 尚子Naoko Ogura

    2001年京都府生まれ。京都芸術大学文芸表現学科2020年度入学。邦ロックと楽器と工場夜景が好き。

  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学文芸表現学科2020年度入学。将棋観戦が趣味の小説書き。

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