”あの日々” ー 映画「のさりの島」撮影現場を覗く

SPECIAL TOPIC2020.05.01

映像

”あの日々” ー 映画「のさりの島」撮影現場を覗く

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  • 京都芸術大学 広報課

地域に溶け込み、支えの中で製作するーー

映画の舞台裏には多くの人の存在があった。

プロのスタッフ・キャストと学生が一丸となり劇場公開映画を製作する、京都芸術大学映画学科のプロジェクト「北白川派」。昨年単館系映画としては異例の大ヒットとなった『嵐電』に続いて贈る『のさりの島』(小山薫堂プロデュース・山本起也監督)では、U-NEXTオリジナル配信ドラマ「すじぼり」、映画『his』など話題作への出演が続く藤原季節を主演に迎えた。商業でもあり教育でもある現場だからこそ生まれた、新しい映画づくりを紐解いていく。

中央)主演 藤原季節さん
天草での撮影のようす

ロケ地となったのは熊本県天草市。潜伏キリシタンという特異な歴史的背景から「他を許し、受け入れる」という文化が根付くこのまちで、古くから使われているのが『のさり』という言葉。今の状況は良くも悪くも天からの授かりものなのだから、否定せずに受け入れようという意味合いを持っている。ここで生まれたのが映画『のさりの島』だ。

本作では19日間の天草オールロケが敢行された。映画づくりの最前線ともいえる撮影現場やスタッフらの合宿所では、興味深い光景が広がった。そこには毎日のように多くの天草市民の姿があったのだ。ある人は差し入れを手に持ち、またある人はエキストラ出演のできる知人を連れてやってくる。「映画のつくり手」とは誰か? その根底を覆すほどにさまざまな関係者が行き交う撮影現場では多くの出会いやストーリーが生まれた。

それぞれの役割を全うすべく奮闘した学生たちは何を学び、そんな彼らの姿は天草の人びとの目にどのように映ったのだろうか。それぞれの視点から”あの日々”を振り返る。

 

西野光さん(にしの ひかる)
映画学科 俳優コース 3年生(当時1年生)
俳優部(池崎陽介役)兼演出部

プロと学生の意識の違いを体感しました。お互いにリスペクトしあって映画製作をしている様子に感銘を受けるとともに、プロの俳優のみなさんのアプローチの仕方に驚きました。1年生の時に、プロの俳優の方が脚本にない部分を自分で演出し個性を出すという工夫を間近で見て、さらに共演することで、これから自分が何をすべきでどこを目指すべきなのかを少し掴めた気がします。また、プロのカメラマンである鈴木一博先生のカメラの前にたつことに恐怖を感じたことがありました。それは私が俳優としての準備を怠ったからで、この現場にいたからこそ気付けたことだと思います。撮影中は天草の方々の優しさに触れて、その分面白い映画を観てもらえるようにと製作への糧にしていました。この経験は今後の映画製作に生かしていきたいです!

 

金子晴彦さん(かねこ はるひこ)
美容室かねこ/ロケ地協力・エキストラ出演

映画の舞台になった商店街はどんどん寂しくなっていってるけど、僕が子どもの頃は日曜なんて人で溢れてて歩けないくらいだったんですよ。お祭りや夜市があったりしてね。天草は観光に力をいれてるけど、この映画ではそれとは違った切り口で見てもらういい機会になるなと思います。経営する美容室は映画のロケ地になっていて、僕自身も半分スタッフみたいなもんだったんです。照明を手伝ったり、エキストラの手配もやったり。僕自身も映画に出ました(笑)。だから撮影中には、学生たちとの距離も縮まりましたね。学生たちは撮影がない日にも、地元の子ども食堂に顔だしてくれて、子どもたちと遊んだり、ボランティアで来ている高校生とも喋ったりしてくれて。撮影現場以外でも交流は盛んで、彼らの成長を間近で感じますね。

 

山田幸次郎さん(やまだこうじろう)・徳子さん(のりこ)

靴のやまだ/ロケ地協力

幸二郎)みんなようがんばらすなぁ、朝早くから夜遅くまでね、睡眠不足やったでしょう。若い人はいいなって、一つの目標に向かってがんばる一心でね。ほんとに感心しました。情熱をかけて、一人一人が専門的な知識を持ち寄って、それを生かすわけですから。一生懸命するっていうのを見せてもらえましたね。学生さんたちも勉強になったんじゃないかな。映画公開されたら、天草を知らしゃせん人にちょっとでも知ってもらえたらうれしいね。風景も撮っておられるようですし、興味持ってもらえたらいいですね。

徳子)2年位前もともと知り合いだった小山コミッショナーが山本監督とロケ現場を探してらしてね、うちに相談に来られたんです。ぐるっと見て回られて、その場でこの家が撮影で使われれることが決まって。最初はとっても驚いて、恥ずかしいって思ったんだけどね。始まる前は、どんな人たちが来られるんかってドキドキ、ワクワクしていました。大学生で若者だから、たくさんおしゃれしてくるのかと思ってたけど、普通の格好で来られてて親しみを感じましたね。しっかり挨拶もしてくれて、笑顔も良かったしね。この映画撮影がきっかけで、同じ商店街の中にある山西楽器店(ロケ地協力)の山西さんとも前よりも親しくなって、よくお話するようになったんですよ。

 

杉原亜実さん(すぎはら あみ)
映画学科 俳優コース2019年3月卒業(当時3年生)
俳優部(堀川清ら役)

撮影を通して感じたことは、協力してくださったみなさんへの感謝の気持ちです。ロケ地だけでなく、待機場所、機材置き場、宿泊場所などを提供いただけるのは当たり前ではなく、多くの方のご協力があったから。そのように成り立つ映画製作で、自分がお芝居をできること自体に感謝の気持ちを忘れてはいけないと強く感じました。撮影現場ではメイクさんや衣装さんとの関わりが多く、学生の私にも役柄の髪型や、衣装・小道具についての相談をしてくださいました。「私もちゃんとこのメンバーの一員なんだな」と堀川清ら役として認識されていることがとても嬉しく、プロの方々と意見交換できる幸せをいつも噛み締めていました。ここでの出会いは私にとってかけがえのないもので、完成した映画を通して沢山の方々の想いに恩返しができたらいいなと思っています。

 

左から)小松秀雄さん(こまつ ひでお)、山本法光さん(やまもと のりみつ)
天草市宮地岳「かかし村」/ロケ地協力・エキストラ出演

小松)かかしを作る時は分業制なんです。力のいる胴体は男の人がつくって、服を着せるのは婦人部のお母さんたちがね。服は地域の人が「これ使ってくださいって」っても持ってこられるんです。やっぱり、女の人の方が服選ぶのは得意やね(笑)。宮地岳の体育館で撮影したときは、30〜40人くらいエキストラでおらしたな。この地区の人が主にエキストラにでて、私もかかしば作ってるところで映りました。映画に出たっていったら家族も「それは観にいかないとね」って(笑)。天草の映画館でもでやるんやね?楽しみやね。
山本)いつもは家を建てたり、リフォームの仕事をしたりしとります。碓井先生(かかし村 村長)から話もらって「かかし」づくりに参加するようになって。映画の撮影が宮地岳であったときは、かかしを積んだり運んだりしてお手伝いしたよ。それにエキストラ出演もしてね、セリフもあった。カットされてるかもしれんけどね(笑)。学生さんは優しいし言葉も柔らかくて、親しみやすかことも感じたね。天草が舞台なのはそりゃうれしいね、全国に出るんじゃけん、うれしいね。

 

天木皓太さん(あまき こうた)
映画学科 映画製作コース 3年生(当時1年生)
演出部(監督助手)

天草の方々には本当に多くのご協力をいただき、人と人が繋がり続けないと映画製作はできないのだと学びました。今回、監督助手として参加し、自分がいかに未熟なのかを痛感しました。でもその分、プロへの憧れや映画製作への熱意がさらに高まり、諦めたくないという気持ちも強まりました。映画を勉強し続けて自分もいつか監督として映画をつくるのだと決めました。監督の山本起也先生に出会わなければ、自分の力を過信したままだったと思います。常に監督のそばにいたので、学んだことも盗めたことも多いです。一度だけ監督の代わりに演技開始の合図「用意はい!」を任せてもらったこともあり、この一言に含まれる責任の重さと、そこに込められた製作陣の「想い」を知りました。失敗も全て受け入れながら前向きに進んでいきたいと思います。

 
髙松聖司さん(たかまつ せいじ)
まるきんユナイテッド株式会社/たいやき「まるきん」ロケ地協力

「まるきん」のお店も映画に登場しているんです。天草のたい焼きって昔から丸い形をしていてね、魚の形をしているのが逆にカルチャーショックで。「たい焼きは頭から?それとも尾っぽから?」っていう質問もピンとこないんです(笑)。僕はこの丸い形に誇りをもっていて、今回のように何かをとおして田舎の文化が伝えられることもあるんだなって思いました。それに天草には大学がないから大学生っていないんだよね。高校生とはまた違う、大人になりかけの学生さんたちは新鮮でした。映画製作中に、時に叱られながら一生懸命やっている姿をみて、僕にも20代の娘がいるけれど、あぁこんな風にやってるのかなって思ったりしてね。とても楽しませてもらいました。

映画の舞台となった熊本県天草市

『のさりの島』

熊本県天草市にて先行公開予定。以降、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開予定。

(新型コロナウイルス感染症の影響により公開時期が延期となる可能性がございます。最新情報は映画ホームページにてご確認ください。)

出演 藤原季節 原知佐子 杉原亜実 中田茉奈実 宮本伊織 西野光  小倉綾乃 酒井洋輔 kento fukaya 水上竜士 野呂圭介 外波山文明 吉澤健 柄本明
プロデューサー 小山薫堂
脚本・監督 山本起也
製作 北白川派
製作協力 熊本県天草市 京都芸術大学
上映時間 129分

https://www.nosarinoshima.com

(インタビュー撮影:松村理恵 )

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