京都造形芸術大学映画学科が、プロの映画製作スタッフと学生の混成チームで劇場公開映画を製作する【北白川派】プロジェクト。
北白川派プロジェクトではこれまで『カミハテ商店』『正しく生きる』『嵐電』(2019年5月公開)ほか、6本の劇場公開映画を製作してまいりました。第6弾の『嵐電』は、いよいよ公開です。よろしくお願いいたします。
さて、北白川派第7弾の映画『のさりの島』の製作に向けて、2019年2月24日より熊本県天草市で全編ロケを行っています。
本映画の製作は、少子化・高齢化や社会構造の変化にともなう様々な課題を抱える地方都市で、その課題を考える契機に映画製作が寄与できればという想いを込めて取り組んでいます。そのため、全編ロケを天草で行うのみならず、同時に天草の魅力をまとめた映像資料の製作やガイドブックの製作も、映画学科の枠を越えて大学全体で連携しながら進めています。
この映画の舞台は熊本県天草市。
かつて、高度経済成長を迎えた日本では、全国の各地にアーケードの商店街が作られ、地域の人々が集まり活気に満ちあふれていました。
天草市・本渡中央商店街「銀天街アーケード」は昭和47年・1972年に誕生
しかし、少子化・高齢化が進む現代の日本では、商店街の空き店舗化が進み、店舗数が減少した結果、アーケードの維持・修繕費を賄えなくなって、アーケードが消滅の危機に陥っている商店街が多数存在しています(いわゆる「シャッター商店街」現象)。
映画学科の山本起也学科長は、全国各地にあるこの「アーケード型商店街」を舞台に、「誰もが、何かを信じたい」という人間の「希望」を描く映画を作りたいと、ここ数年ずっとその構想を温めてきました。
そして、本映画のプロデューサーでもある小山薫堂副学長とともに、天草市のリサーチや地域のみなさんとの対話の時間を多数設け、この天草を映画の舞台にすることを決めました。
監督の山本起也映画学科長(右)、プロデューサーの小山薫堂副学長(左)、ガイドブック製作・出演の空間演出デザイン学科 酒井洋輔准教授(中)
映画のロケに入る一年以上前に、「もしこの天草で映画を作るとしたら、何を描くか」という対話を天草で開催しました。
通常、地方都市で開催される「地域課題解決型」のワークショップでは、ネガティブな意見や文字通り「課題」ばかりが出されることがほとんどです。しかし、上記の「映画で天草の何を描くか」という対話の中では、「天草のここを描いてほしい」「天草の人の魅力」が、天草のみなさんが持つそれぞれの物語の中で語られました。その対話の中で出された数々のエピソードが、この映画の脚本に反映されています。
映画『のさりの島』では、こうした日本の地方が現在抱える課題と未だ後を絶たない「オレオレ詐欺」をモチーフに、「誰もが、何かを信じたい」という人間の「希望」を描きます。
天草生まれの作家石牟礼道子さんは、自分の郷土の姿を「ここには虚無的捨身ともおもえる優しさが生きていました」と描写しています。
潜伏キリシタンという特異な文化的背景が、「他を受け入れる」「他を許す」という天草人の性質に影響を与えているのかもしれません。もちろん島原の乱などの戦乱はあったものの、島原の乱以降、天草の人々は「抵抗せず」「争わず」深く潜伏して時代が変わるのを待ちました。
「潜伏キリシタン」の集落が2018年6月世界遺産に登録される
このような天草の「異なるものを受け入れてきた」歴史的背景なども絡めながら、この殺伐とした時代に、人を受け入れること、信じることの強さを持った映画を、京都造形芸術大学の学生や天草のみなさんとともに世界に発信したいと考え、この映画の構想は練られました。
■映画『のさりの島』ストーリー
群れから離れるように一人「オレオレ詐欺」の旅を続ける若い男。都会から遠く離れた熊本の天草で、彼の電話に一人の老女が出た。受け子として金を受け取りに行った男を、老女は「孫」と思い込み、そのまま奇妙な同居生活が始まる。そこでの時間は、これまで彼が経験したことのない「自分の人生から抜け落ちていた」穏やかな時間だった……古びた街の映画館で「昔の8ミリ上映会」を企画する若者グループとの関わりなども絡みながら、彼の嘘は、いつしか本当へと変わってゆく。
・撮影 2019年2月~3月
・発信 2019年冬〜 国際映画祭へ
・公開 2020年夏全国公開を予定
■京都造形芸術大学北白川派プロジェクト
映画『のさりの島』
製作 株式会社北白川派
製作協力 天草市
京都造形芸術大学
プロデューサー 小山薫堂(京都造形芸術大学副学長)
脚本・監督 山本起也(京都造形芸術大学映画学科長)
出演 藤原季節
原知佐子
杉原亜実(京都造形芸術大学映画学科俳優コース)
柄本明 ほか
2月24日からスタートした天草市でのロケは、日々変化する天候に撮影スケジュールが左右されながらも、天草のみなさんの温かいご協力をいただきながら順調に進んでおります。
朝の5時から、深夜まで連日撮影は続いています。
撮影場所や宿舎には、天草のみなさんから毎日たくさんの差し入れをいただいています。
こうして、天草のみなさんの温かい思いに支えられ、映画を作れていることに感謝しながら、撮影を進めてまいります。
この映画『のさりの島』では、こうした一連の取り組みを国内や世界の舞台に向けて発信する活動の強化に向けて、MAKUAKEにてクラウドファンディングを実施しております。
おかげさまで、すでに目標金額に到達しており、ご支援いただいたみなさまに本当に感謝いたします。
さらなる発信や活動の強化に向けて、ご支援いただければ幸いです。
今回の活動にご支援くださいました皆様には、ぜひとも一緒に映画を作る仲間として、映画の公開まで歩みをともにさせていただきたいと思います。
ご支援いただいた皆様には撮影終了後の5月から、皆様には短編の映像を「限定公開」させていただきます。映画の進捗や撮影の様子などを、映画の公開まで毎月お届けできればと思います。
よろしくお願いいたします。
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