国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)において、芸術大学が果たすべき役割について考える特別講義が1月17日、京都造形芸術大学で開催されました。SDGs文化推進委員会委員長で本学SDGs推進室の田中朋清室長と、信州大特任教授で地域活性学会会長を務める本学の中嶋聞多客員教授が登壇し、SDGsに向けた取り組みを行う意義や地方活性化に寄与するための考え方などを話しました。
まずあいさつに立った尾池和夫学長は「今日の目的は二つ。SDGsとは何かを説明できるようになることと、自分ができるSDGsとは何かを考えられるようになること。17の項目一つ一つについて考えながら聴いてほしい」と特別講義の意義を強調しました。
石清水八幡宮権宮司も務める田中室長は日本人の精神性について「外国のものを受け入れる文化的な寛容な精神と自然との共生、生かされていると感謝しながら過ごす死生観を持ちあわせている」と説明。その上で、日本人が忘れかけている知恵と、知恵の結集である文化を活用することでSDGsを実現させることの重要性を訴えました。
また、各目標の中でも環境問題ばかりに目を向けがちになることから、経済成長と社会的包摂の重要性にも触れ、「SDGsを達成するためにはすべての人の努力が求められ、1~17の全てにおける取り組みが必要」と「普遍」「不可分」という二つのキーワードを挙げて呼び掛けました。
その不可分と関連し、産官学民の垣根をなくして知恵を出し合うことが必要だと指摘。「たくさんの先人たちが育んてきた知恵には持続可能性が秘められている。世界中に持続可能な知恵が埋もれており、その知恵を共有し教育に落とし込む。ここに、人々が感動を分かち合う力となる文化・芸術の存在が必須。SDGsという世界共通の目標だからこそ、私たちも先人が紡いできた世界中の知恵を結集し、共有し、グレードアップし、教育に落とし込んで次代につないでいかなければならない」と結びました。
続いて登壇した中嶋客員教授は「SDGs×地方創生にアート・デザインは必要か」というテーマで話を展開。前提として「SDGsの”Development”は”(外発的な)開発”ではなく”(内発的な)発展”と解すること」、「2030年までに到達すべき目標となっているが、2030年はあくまで通過点」と説明し、「グローバルな話で他人事のように感じるかも知れないが、皆さん一人一人が自分事としてとらえ、解決策を考えなければならない」と述べました。
「デザインは問題に対する解決策であり、アートは問題に対して問いかけること」と述べた世界的グラフィックデザイナーのジョン・マエダさんの言葉を紹介し、地方創生に取り組む際にはアーティストやデザイナーとコラボすることが多いという自身の経験を踏まえ「(SDGsに取り組む上で)皆さんのスキルを必要としている」と呼びかけました。
最後に、未来を描くための方法として「望ましい未来の姿を描き、そこに到達する手段を考える」「過去の生活を知った上で未来を考える」ことの大切さを話しました。
京都造形芸術大学SDGs推進室は、SDGsへの理解と浸透を図るため、2019年4月に設置しました。学内では、使い捨てコンタクトレンズの空容器の回収ボックスを設けるなどの活動を行っており、引き続き、世代や人種、国境、分野、領域を越えて心あるすべての人々と共に、目標の達成に向けて行動を続けてまいります。
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