REPORT2018.07.30

舞台

”情熱”を注ぐ―『キャッツ』プロジェクト/ 学生レポート#3

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  • 京都芸術大学 広報課

瓜生通信WEBマガジンでは、学内工房ウルトラファクトリーで製作が進む、『キャッツ』プロジェクトに参加している学生のレポートを4回にわたり紹介しています。

「猫からの目線」をコンセプトとして、通常の約3倍サイズで製作されるゴミのオブジェ。学生の作品は、8月11日(土・祝)より開幕する『キャッツ』東京公演の劇場「キャッツ・シアター」に実際に飾られ、多くの観客を迎えます。

2018年3月から、22名の学生で小型・中型ゴミのオブジェの製作がスタートし、4月からは、その内12名の学生が大型ゴミのオブジェ「オートバイ」製作に着手。劇場への最終搬出日は7月6日(金)。約3か月間の製作期間を経て、先日ついにその日を迎えました。製作を行った学生に見送られながら「オートバイ」はウルトラファクトリーを出発し東京へ。8月上旬には学生自身が上京し、東京「キャッツ・シアター」でこれまで作った作品の一部の飾り込み作業を行う予定です。

3回目となる今回のレポーターは、舞台芸術学科 3年生の沼口りずむ君。大型ゴミのオブジェ製作では、学生リーダーとして積極的に製作に携わりました。製作現場の様子や、作業への意気込み、戸惑いなど、それぞれの学生の挑戦にご注目ください。

 

リーダーとしての自覚。プロジェクトを通して新たなステージへ。

 舞台芸術学科 舞台デザインコース 3年生:沼口りずむ

【製作物】
小型ゴミ:歯ブラシ
中型ゴミ:かき氷機(主に本体骨組みと正面「鯛のプレート」を担当)
大型ゴミ:オートバイ(学生リーダー。図面製作、本体骨組みと本体スチロール成型を担当)

 

僕が『キャッツ』プロジェクトへ参加した理由は、新しい技術や知識を得ることでステップアップするため。そしてプロの技術スタッフの方とともに製作を行うことで、自分自身が完全燃焼したいと思ったからです。

僕は、舞台芸術学科に在籍しているので、普段の授業から舞台道具や衣装の制作を行うことが多くあります。授業での限られた時間や予算、そして僕たちの持ち得る技術の範囲では、舞台美術の作品が満足のいくクオリティに仕上がらずモヤモヤとする気持ちになることも。そのような時に出会ったのが、このプロジェクトです。参加にあたっては不安もありましたが、それを上回っていたのが「ワクワク」する気持ち。新しい環境に飛び込み、今自分が持ち得る知識、技術、そして情熱の全てをこのプロジェクトへぶつけ、成長しようと決意しました。

通常の3倍の大きさで「歯ブラシ」を製作
「軽量化」と「リアルさ」が求められる、ゴミのオブジェ製作

今年の3月より「キャッツ」プロジェクトの製作がスタートしてからは、劇団四季小道具スタッフの方に、技術面でたくさん指導していただきました。素材の切り出しから、成型、塗装と一連の作業が進むなかで、僕が特に難しいと感じたのは「汚れ」を表現する塗装作業。この作業は、単純に作品を汚せばいいのではなく、「捨てられるまでの経緯」「捨てられてから、どれほどの月日が経ったのか」など、ゴミのオブジェが持つストーリーを表現することが求められます。塗装の技術だけでなく、ストーリーをもとに劣化状態をイメージする「想像力」、製作サンプルから汚れ具合を正確に捉える「観察力」、そして観客からの目線を考える「客観性」など、様々な能力が必要とされます。とても奥深く、難しい作業。だからこそ、一番楽しい作業でもありました。

大型ゴミのオブジェ製作を始める前に、製作チームの学生と劇団四季スタッフの方とともに、製作物を決めるミーティングをおこないました。そこで僕が提案したのが「オートバイ」。まさか自分の意見が採用されるとは夢にも思っていませんでした。「本当につくれるの?」「これで大丈夫なの?」と次から次に溢れ出る不安。しかし、他の学生も「一緒につくりたい!」と推してくれ、また劇団四季の方も「難しいけれど、完成するとかっこいいし、存在感があるね」と仰ってくださり、やる気と自信が湧いてきました。

沼口君作成:「オートバイ」手書き図面
「汚し」作業は、いったん新品同様に塗装を施してからおこなう

製作物の発案者として責任を持って取り組みたいと考え、図面の作成と、製作リーダーを申し出ました。12人で1つの作品をつくる作業は、個人製作とは違い、全員が周りの作業を意識しながら進める必要があります。他の学生よりも、全体の進捗に意識を置きながら自分の製作をしなければならない。「より効率的に進めるためには?」とリーダーとしての役割に思い悩むこともありました。しかし、このリーダーとしての経験は新たな気づきにもつながりました。「メンバーそれぞれの動きを観察し、効率のよい方法を先回りして考える」ということや、「自分が出来ないと思った時には、他のメンバーに助けを求める」ということ。とても大切なことに気づくことができました。

劇団四季技術スタッフの方とも積極的に打ち合わせ
「オートバイ」が東京へ向け出発

「本気でプロから技術を盗む」と意気込み、挑戦したこのプロジェクト。振り返ってみると、この4か月間はあっという間に過ぎ去り、「まだ何も盗めていない」という気持ちすら覚えます。未熟さゆえ、目の前の製作だけで精一杯という状況でした。しかし一方で、得られたこともたくさんあります。製作をスムーズに行うためには、作業の前日から次の日の段取りを考えるなど「当たり前のことを、当たり前に行う」ということ。日々の積み重ねが、いい製作に結びつくのだと感じます。このことを忘れることなく、次につなげていこうと思います。

7月5日(木)、「オートバイ」の製作最終日を迎えました。しめきりの直前まで作業を行いましたが、「オートバイ」を作品として完璧な状態にまで仕上げることが出来ませんでした。しかし、これで終わりではありません。8月に東京で飾り込みをするまでがこのプロジェクト。作品の精度をさらに高めるために、東京での作業直前まで、ウルトラファクトリーで引き続き細かなパーツの製作を行います。プロジェクトで完全燃焼するために、まだまだ頑張ります!

 

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