REPORT2018.05.18

舞台

感動、受け取る側から届ける側へ。―『キャッツ』プロジェクト/ 学生レポート#1

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  • 京都芸術大学 広報課

 2018年3月より、京都造形芸術大学の学内工房「ウルトラファクトリー」では、劇団四季ミュージカル『キャッツ』の舞台美術に学生が挑戦するプロジェクトが進行中。『キャッツ』舞台美術の最大の特徴は、劇場内の至るところに飾られたゴミのオブジェです。空き缶、ブーツ、おもちゃなど、あらゆるゴミのオブジェが、「猫から見た目線」をコンセプトに通常の約3倍の大きさで製作され、舞台上はもちろん、客席にまで広がっています。

 2018年3月~4月にかけて、22名の学生が小型・中型ゴミのオブジェを製作。その内12名が4月より大型ゴミのオブジェの製作に挑戦しています。学生が製作したゴミのオブジェは、2018年8月に開幕する『キャッツ』東京公演の劇場「キャッツ・シアター」に実際に飾られ、多くの観客を迎えます。プロが製作する舞台美術と同様、劇場内に設置されるため、学生といえどもクオリティの高い作品が求められます。

 瓜生通信WEBマガジンでは、『キャッツ』プロジェクトに参加している学生のレポートを紹介します。製作現場の様子や、作業への意気込み、戸惑いなど、それぞれの学生の挑戦にご注目ください。

 今回のレポーターは、情報デザイン学科 4年生の河本悠花さん。「劇団四季の舞台でいつも感動をもらっていた。今度はその感動を届ける側になりたい」とこのプロジェクトに挑戦した学生です。

今年4年生になった河本さん。進路や卒業制作への不安もあったが、憧れの劇団四季に関われるチャンス、とプロジェクトへの応募を決意
プロのアドバイスを受ける河本さん。(右)劇団四季スタッフ 山路裕美子さん

「ゴミ」にひそむストーリーを具現化、『キャッツ』ならではのクリエイティブ。

― 情報デザイン学科 イラストレーションコース 4年生:河本 悠花

【製作物】
小型ゴミ:歯ブラシ
中型ゴミ:かき氷機(主に氷を削るハンドルを製作を担当)
大型ゴミ:オートバイ(後輪・前輪製作を担当)

 小学生の頃から劇団四季さんの舞台が好きで、舞台美術の仕事にも興味がありました。そのためプロジェクトの発表があったときは、本当に驚き、嬉しく思いました。

 しかし、普段の授業では、パソコンで進める課題が多く、今回のような製作作業に関してはほどんど初心者。選考に実技試験があると聞いた時、それで落ちてしまったら……と不安でしたが、挑戦したい気持ちが勝り応募を決意しました。実技試験中には、指導に来てくださった四季の小道具スタッフの方よりいただいアドバイスをもとに、自分なりに考え、工夫を凝らし、作業終了ギリギリまで粘ってクオリティを高められるよう努力しました。

 選考結果を待つ間、落ちたのではないかとヒヤヒヤ。小型ゴミ製作だけでなく、中型・大型ゴミの製作まで関われるAチームでの参加が決定した時は、実感が湧かず「嘘やろ?(笑)」と思いました。

 個人製作の「小型ゴミ」では、私は歯ブラシを担当。実技試験で作ったボルトに比べて、曲線が多いフォルムで、使用する素材も異なったので形をとるところから大苦戦です。
四季のスタッフさんより、「『キャッツ』のゴミのコンセプトは、”ただのゴミではない”ということ。人の思い出の中にあったものや、捨てるつもりはなかったけど落としたまま忘れられてしまったものなど、ひとつひとつに背景がある。」と教えていただいたので、自分なりに「歯ブラシとして普通に使われた後に、掃除道具として使われたゴミ」というストーリーを作りました。それに沿うよう製作時には、ブラシの毛先をバサバサにさせたり、その根元に汚れが固まっているように見せたりと、さまざまな工夫をしました。

「大切につかわれた」を表現。 (中央)河本さんが製作
ウルトラファクトリー製作現場の様子

 次に、4人1チームで製作する「中型ゴミ」に取り掛かりました。私は「かき氷機」チームで、氷を削るハンドル部分を担当。このパーツだけでも、私の身長の半分以上の大きさがあり、素材の削り出しなど、一つ一つの作業に体力を使いました。また、ペイントも本物に見えるようにするため、製作見本としてご用意いただいた、使い古され錆びついた本物のかき氷機を注意深く観察しました。塗料の剥がれ具合など、リアルに表現することはとても難しいかったです。

 製作中に、四季のスタッフさんからいただいたアドバイスで、特に印象的なものがあります。「凹凸のある部分は、影の色をはっきりつけて、立体感をしっかり出してほしい。客席は暗いので、凹凸の主張が少ないと、せっかく作ったのに平面的に見えてしまう」ということ。なるほど!と、とても勉強になりました。

 中型ゴミでは、個々のパーツに分かれて製作を進めていたので、いざすべてのパーツを組み合わせた時には、自分の身長よりもはるかに大きいものが出来上がりました。自分の担当したハンドル部分の存在感の大きさにも感動。

全長2.6メートル。組み立ては脚立での作業
河本さんの担当は左後方のハンドル部分

 現在は「大型ゴミ」として、オートバイを3倍の大きさにしたオブジェの製作が始まっています。
 今回は、12人が役割分担をして1つの作品を作るので、他のパーツとぴったり組み合わさるよう、採寸をするときは細心の注意を払っています。自分たちで考えなければいけないことも増えたため、各パーツの担当に分かれていても、全員で一丸となって助け合いながら頑張っていきたいです!

 

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