REPORT2026.03.12

京都ファッション

京都芸術大学空間演出デザイン学科×叡山電鉄 KUA Collection 2025「Rush」開催! 雪の中で“十人十色のサスティナビリティ”を表現

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  • 京都芸術大学 広報課

2026年1月25日(土)、空間演出デザイン学科ファッションデザインコースの学生と叡山電鉄とのコラボレーションによるファッションショー「KUA  Collection 2025『Rush』」が開催されました。

テーマは「サスティナビリティ」

ショーに参加した全29ブランドが、それぞれの視点と発想で「サスティナビリティ」を解釈し、ファッションデザインで表現。‟未来へつながるアプローチ“を体現する作品の数々が披露されました。
叡山電鉄は京都市の北東部「洛北」に2つの路線を持つ鉄道会社です。出町柳駅を起点に北上し、途中の宝ケ池駅で二手に分かれ、東は八瀬比叡山口駅へ、西は貴船口駅や鞍馬駅に続いています。
本学と叡山電鉄株式会社は2023年4月に包括連携協定を結び、大学の最寄り駅である茶山駅を『茶山・京都芸術大学駅』に改名。駅舎ホームにて現代美術作家のヤノベケンジらによるアーティスト作品の展示を行うなど、本学のクリエイターとの協働によって駅舎や叡山電車沿線地域の魅力を向上するための取り組みを行ってきました。
叡山電車の車内で学生が作ったブランドのファッションショーを行う取り組みは今年で3年目を迎えます。
空間演出デザイン演出学科ファッションデザインコースの3年生の学生たちが作品、モデル、モデル手配、空間づくり、音響、演出、ポスターなど、デザインから運営まで、一から携わり作り上げたファッションショー「Rush」の当日の様子をご紹介します。

 

(cap)“再生・持続性”の象徴として洗濯機の写真を使用した広報ビジュアル

絡み合う想いが新しい価値を洗い出す

――KUA  Collection 2025 「Rush」
「サスティナビリティ」はひとつの型にとどまることなく、多彩なアプローチ、素材・デザイン・背景といった、異なる視点から生まれる小さな選択の積み重ねによってつくられます。絶えず動き続ける、忙しない渦のような社会で、毎日がぐるぐると回っていく。その絶え間ない渦の、混ざり合う力そのものが未来を更新する原動力になる――「Rush」はその確かな変化を可視化し、小さくとも確かな「持続可能」を提案する試みです。
(パンフレットより)

列車を舞台とするこのファッションショー「Rush」。列車の中で見られる日常風景としての「通勤ラッシュ」から、着想を得たのだそう。そして、同時に存在する多様な正解が混ざり合う様を、洗濯機というモチーフで表現。一つに定めることのできない「サスティナブル」を形にする全29のブランドが共存するショーとなるよう、学生たちの思いが混ざり合うテーマです。

13:30 受付開始
「Rush」の出発地点は叡山電鉄出町柳駅。改札前に受付ブースが設置され、学生たち自らが受付を行います。その裏では、車両内の準備も進められ、学生たちが教員と協力しながら、設営、最終確認と忙しなく動き続けていました。

雪が舞う、厳しい寒さにも関わらず、幅広い世代の観客が訪れ、会場となる列車へと乗車していきます。

(cap)ファッションショーの舞台となった「展望列車『舞』」

今回、ファッションショーの会場となったのが、新しい観光車両の「展望列車『舞』」。叡山電鉄では、1987年に導入されて以来、30年以上使用されてきた700系の更新を順次進めてきました。同社の開業100周年にあたる昨年にリニューアルが完了した「舞」は、「着物をまとって旅をする」をコンセプトに、京都洛北にゆかりのある四季を伝統文様として現代的にデザイン。移動時間を「旅そのもの」へと高める特別な車両です。今と昔が混ざり合い、進化を遂げた新しい700系車両。今回のファッションショーのテーマ「サスティナビリティ」にぴったりです。

13:50 「Rush」会場、「展望列車『舞』」に乗車
受付を済ませ、観客は会場となる貸し切りの「展望列車『舞』」に乗車。事前の申し込みでは、早々に満席となる人気ぶりを見せました。入場を済ませると、観客は2両編成の2号車で出発を待ちます。車内にはモニターが設置され、ドア横には「Rush」のメインビジュアル、窓上には、参加するブランド名のポスターが並びます。すっかり「Rush」の装いとなった車両で、小さな子供から大人まで、幅広い世代の観客がパンフレットや車内を眺め、出発を待ちます。

14:04 いよいよ出発!
車両の扉が閉まり、いよいよ叡山電鉄出町柳駅から、新たな会場である叡山電鉄八瀬比叡山口駅へと出発します。過去には走行中の車内でランウェイショーを行ったこともありましたが、安全面に配慮し、昨年度からはプロジェクターを車内に設置して観客は簡易スクリーンに投影された映像を楽しむ形に。
車内では、「Rush」のイベントイメージ映像と共に、参加するブランドの紹介映像がモニターに映し出されます。「ぐるぐると渦巻き混ざり合う未来を更新する原動力」を、洗濯機のなかで回る様々な物で表現したプロモーション映像に観客は見入っていました。

映像が終わると、学生による車内アナウンスで、テーマ「サスティナビリティ」と「Rush」のコンセプトが紹介されます。観客は、車窓から見える雪の舞う左京区の町並みを眺めながら、八瀬比叡山口駅を目指します。

14:25 叡山電鉄八瀬比叡山口に到着
叡山電鉄八瀬比叡山口駅に到着。豊かな自然に囲まれた八瀬比叡山口駅では、大粒の雪が降るなか、駅のホームにも観客が待ち構えています。
(八瀬比叡山口での観客の様子。ショーの準備写真など)

14:30 KUA Collection 2025  「Rush」スタート‼
セッティングが終わると、会場にランドリーのスイッチ音や稼働音とともに音楽が流れ、いよいよファッションショーが始まります。トップバッターを務めるブランドは「GESHTINANNA」です。里山の農業文化とモードを融合させ、育苗シートなどの余剰資材を活用した衣装で、自然と共生する持続可能な美を提案します。
駅のホームから車内へ。ロングシートの間の通路がランウェイとなり、衣装を身にまとい、稲穂を手に堂々と歩くモデル姿に、観客たちも目を奪われます。

「GESHINANNA」を皮切りに、ショーが進行。衣服だけでなくアクセサリー、小物、工芸品など、全29のブランドそれぞれの「サスティナビリティ」が駅のホームから車両内へと繋がるランウェイで惜しみなく披露されます。

作品の見せ方の工夫も、ブランドによって様々です。
「子ども服×ロングライフデザイン」をテーマにするブランド「tene.」。着られなくなった子ども服がほんのひと手間で、ポーチや巾着に変身します。お母さんの記憶や感情をそっと包み、日常の中の「思い出のスイッチ」のような存在を目指すブランドです。NOW DESIGN AWARD 2025で、2位という結果を収めたブランドでもあります。

ショーでは、ランウェイの途中で立ち止まり、子ども服からポーチや巾着へと変身する様子を実演で披露していました。かわいらしい子ども服があっという間にポーチになり驚く観客も。学生たち独自のテーマへの切り口が観客の視線をくぎ付けにします。

同じ「サスティナビリティ」を表現した十人十色のファッションショー。同じものはひとつもありません。次々と入れ替わり、未来の可能性への学生たちの挑戦的な姿勢が披露された「Rush」。ショーの最後には、全29ブランドがランウェイを颯爽と歩きます。

15:15 ファッションショー終了、展示会へ
メインショーが終わると、2両の車両がつなげられ、作品の展示会へと移ります。ここでは、間近で作品を見ることができるほか、それぞれのブランドの詳細なコンセプトを知ったり、制作者と交流したりすることができます。モデルを務めた学生たちと制作者や、制作者と観客が写真撮影する姿も見られました。

電車内という特殊な空間に並ぶ様々な作品。座席やつり革と、展示空間にも工夫が凝らされ、学生たちのこだわりの詰まった作品を引き立てていました。
こちらは日本茜で染めた素材とシルバーを用いたジュエリーです。手がけたブランドは「赤の根」。NOW DESIGN AWARD2025で、見事1位となったブランドです。失われつつある茜色の文化を現代へ根付かせることをコンセプトに、制作されています。やさしく温かい茜色に、繊細なデザインが特徴的なジュエリーです。

披露されたブランドの中から、ふたつのブランドの学生に、その制作背景やこだわりについて話してもらいました。

「my bran」

廃棄されがちな米ぬかをネックレスやブレスレットなど、ジュエリーに生まれ変わらせるブランド。暮らしに寄り添う、素朴であたたかな輝きを届けます。

制作者の吉村海津希さんは、普段は捨てられてしまう米ぬかが、意外にも身近な素材であるという気づきから、米ぬかをジュエリーにすることで、テーマ「サスティナビリティ」を表現しました。樹脂と米ぬかを混ぜ、固めて、それをチェーンでつなげてジュエリーへと変身させます。
制作する工程のなかで、こだわったポイントをお聞きしました。

(cap)「my bran」制作者の吉村さん(写真右)

吉村さん「米ぬかが多すぎると固まりづらくなってしまったり、逆に樹脂が多すぎると米ぬかが薄くて見えなくなってしまったり。結果、展示したブレスレットで使用した米ぬかは、0.1グラムと0.3グラムを使いましたが、そのバランスを試行錯誤しながら見つけました」
米ぬかを使用した新しいジュエリーには、どこか懐かしさを感じるあたたかな色合いや質感があります。

「HANA PLUS」

廃棄される花を叩き染めで再生し、一点もののクロスで毎日に“花”とやさしさを添えるブランド。NOW DESIGN AWARD2025では、sastainable賞を受賞しました。
ショーでは、モデルがさまざまな形でクロスを身にまとい、作品を披露しました。

「HANA PLUS」のこだわりは花選びと黒の叩き染めという手法。
制作者の清水花音さんは、実家の生花店で目にした、枯れてしまった花やアレンジのために使用されず破棄されてしまった茎など、当たり前に捨てられてしまう花々の「フラワーロス」に焦点をあて、破棄される花を使用して「サスティナビリティ」を表現しました。
黒を使った珍しい叩き染めの手法のこだわりについても、詳しく話してもらいました。

(cap)「HANA PLUS」制作者の清水さん

清水さん「叩き染めで黒を使う例がほとんどないということに気がつき、あえて黒のインクを使用しました。お花の水分を使う『叩き染め』という手法は保ちつつ、そこに黒のインクを垂らす一工夫を加えることで、今までにない、未来へつなぐことのできるデザインを考えて、発信しました」
作品の制作に用いる素材、またその手法も未来へ繋げるひとつの形として、新たな切り口が美しい模様として現れています。

16:00 イベント終了
イベントが終わると、華やかなランウェイだった車両、叡山電鉄八瀬比叡山口駅が、また日常へと戻っていきます。観客たちもそれぞれに出町柳駅行きの電車に乗り、帰路につきました。

3年生後期の課題であるこのファッションショー。3年生前期に学生たちが制作したブランドをまとめ、9月末から当日まで、準備に励みました。テーマ、形式の決定から、広報、運営、空間づくりと、それぞれのグループで活動。ショーの2日前に行われたリハーサルでは、列車を使うことができないため、体育館で何度も当日の動きを確認しました。
ファッションショーの企画から当日の進行まで、リーダーとしてまとめ上げた後藤さんから話を聞きました。
「私自身も初めての経験だったので、リーダーとして多種多様なブランドや、それぞれの学生の動きをまとめるのはとても大変でした。リハーサルから当日のハプニングまで、支えてくれる仲間それぞれの得意分野を生かしながら乗り切ることができたと思っています」
リーダーとして誰よりも動き、学生をまとめつつも、一人で背負いすぎることなく全体のチームワークを高められるよう心がけ、進行した後藤さん。企画の立ち上げから当日まで、たくさんの特別な経験があったようです。
「テーマが決まり、列車内の空間づくりが決まって、リハーサルでこのファッションショーの完成が見えてきたときはとてもテンションが上がりました。正直なところ、大変なことの方が多かった気もしますが、そういう困難があったからこそ、成功の喜びは大きかったです。当日、雪が降るなかかじかんだ手で準備をし、観客の皆さんを乗せた列車とホームでファッションショーを成功させられたことは、自分にとっても仲間にとっても、今後の人生でも味わうことはないであろう素敵な経験になりました」

最後に、来年度の観客となる方へ、メッセージをいただきました。
「2025年度のショーにお越しくださった方、本当にありがとうございました。2023年度の先輩方の提案で始まった列車でのファッションショー。私たちの代で3回目になりました。これまでのショーが全く違う色であったように、これからのショーも私たちのショーとはまた違うものができ上がると思います。そのときの学生にできる“精一杯”を一生懸命形にし、ショーに詰め込んでいます。来年度も寒い時期の開催になると思いますが、また見に来ていただけると私たちも嬉しいです」

KUA Collection 2025を一から作り上げた学生たちがショー、展示会で披露した、多彩な「サスティナブル」。そして鋭い視線で切り取る素材、手法で提案される「未来につながるデザイン」は、私たちの日常の延長にある未来の多様な在り方へと、観客の視線を誘いました。

次はどんな「サスティナブル」への切り口を提案するのか。来年のファッションショーも目が離せません。

(文=文芸表現学科4年 愛知はな、撮影=Oto Hanada)

 

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