REPORT2026.03.11

アートデザイン

宇宙時代の扉を開く、ヤノベケンジの「宇宙猫」を宇宙に還す「RE:VERSE」プロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

※冒頭画像 気球の打ち上げで成層圏に到達する「宇宙猫」のフィギュア

 

旅の守り神《SHIP’S CAT》から生命を地球にもたらす《BIG CAT BANG》へ

「宇宙猫」を宇宙に還すー。初めて知る人には何のことだかわからないプロジェクトが実施され、SNSを賑わせた。そこにはヘルメットを着用した猫のフィギュアが成層圏に浮かんでいた。

「宇宙猫」とは、ヤノベケンジ(美術工芸学科教授・ウルトラファクトリーディレクター)が2024年から2025年にかけて、GINZA SIXの中央吹き抜けで展示した巨大インスタレーション《BIG CAT BANG》に登場する猫のことである。もともと、古代オリエントからネズミ退治のために船に乗せられ、大交易時代には世界中を旅した「船乗り猫」をモチーフに、「旅の守り神」として2017年から制作を開始した猫の巨大彫刻《SHIP’S CAT》シリーズの世界観を発展させたものだ。

「船乗り猫」は、「SHIP’S CAT」と呼ばれるようになり、ネズミ退治をするだけではなく、船員と長い旅や苦楽を共にする心の友であり、愛らしいマスコットであり、天候などの危機を察知する守り神のような存在になっていった。最初は福岡に建てられた若者向けのホステル「WeBase福岡」のシンボルであると同時に、パブリックアートとして、宇宙旅行に行く未来を担う若者の旅を導くために、宇宙服や潜水服を思わせるヘルメットとスーツを着た猫の姿を制作したのだ。「旅の守り神」と称された《SHIP’S CAT》は、福岡を皮切りに、鎌倉・京都・香川・広島のホステルに加えて、パリ・上海・光州(韓国)・台湾などにも展示され、日本各地、世界各国を旅する作品に展開していった。

世界中の移動が制限されたコロナ禍を経た2024年、大阪・関西万博を翌年に控えて、GINZA SIXの中央吹き抜け空間の展示に、満を持して選ばれたのがヤノベケンジだった。GINZA SIXは2017年の開業に合わせて、草間彌生を皮切りに、ダニエル・ビュラン、塩田千春、名和晃平など国際的に活躍するアーティストが吹き抜けのインスタレーションを担ってきた。GINZA SIXは、銀座の一等地に位置し、ラグジュアリーブランドを多数擁する商業施設だが、内部に能楽堂もあり、文化発信も重視する文化複合施設としてアピールするためだ。

ヤノベケンジ《BIG CAT BANG》(2024-2025) GINZA SIXでの展示風景 撮影:Yasuyuki Takaki

ヤノベは、2023年5月の新型コロナの「5類」移行に伴い、本格的に国内外の移動が再開され、「大阪・関西万博」で多くの海外からの観光客が来日する際の目玉の展示を担うアーティストとして要請されたのだ。GINZA SIXは、1970年の大阪万博の象徴的存在である岡本太郎の《太陽の塔》との何らかのコラボレーションを期待した。なぜなら1965年生まれのヤノベは、大阪万博の会場跡地に近い茨木市に小学1年生の頃に引っ越しし、解体現場で遊んだ出来事を「未来の廃墟」と名付けて、創作の原点としており、そこに残っていた《太陽の塔》や磯崎新がデザインした演出ロボット《デメ》などを、モチーフにしてきたからだ。 

ただ、芸術界の巨人である岡本太郎の遺伝子を継承するだけではなく、対決しないと意味がない。かつて岡本太郎が、技術万能主義的な万博に異を唱え、全長120メートル、高さ30メートルの大屋根と対決し、それを突き破る70メートルの《太陽の塔》を構想したように、さらにそれを上回る世界観を構想しなければならない。《太陽の塔》は原生生物からクロマニョン人に至る生物模型を取り付けた「生命の樹」を内包し、過去を表す地下空間には、生命誕生の起源が導入となっていた。そして地下空間には当時の先端の研究成果であるDNAの3次元模型も展示されていた。

ヤノベケンジ《BIG CAT BANG》(2024-2025) GINZA SIXでの展示風景  撮影:Yasuyuki Takaki
岡本太郎《太陽の塔》の模型 撮影:Yasuyuki Takaki

当時の研究では、地球の中にため込まれた大気中のガスと雷などとの衝突によって生命が生まれたと考えられていた。しかし、近年の宇宙研究では、宇宙から「生命の種」ともいえるアミノ酸がもたらされた可能性もあると考えられている。例えば、隕石からは多数のアミノ酸が発見されているし、2020年には「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルから、20種類以上のアミノ酸が検出された。それは「パスペルミア説(宇宙汎種説)」と称され、SF的な空想と思われていた時期もあったが、事実の確立も十分あるという。つまり、「生命の樹」を辿ると、宇宙に行きつくというわけである。

ヤノベは岡本太郎が起点においた生命が誕生したとされる約38億年~40億年前から、地球誕生の約46億年前、宇宙が誕生した約138億年前の「BIG BANG」にまで遡り、すべての創造のはじまりに「爆発」があると考えた。そして、それは「芸術は爆発だ!」と語った岡本太郎の言葉と共鳴している。

《太陽の塔》を模した宇宙船《LUCA号》 撮影:広報課
底部にジェットエンジン。登頂には猫耳がついており、内部から大量の「宇宙猫」が四方八方に飛び立っている。

そこにヤノベの《SHIP’S CAT》のストーリーをつなぎ合わせ、生命を運んできた宇宙船がいて、そこから「宇宙猫」が地球に降り立って、「生命の種」を撒いたことが、生命の始まりであるという新たな創生神話を紡いだのである。「宇宙猫」は生命の誕生と成長を育み、「ビッグファイブ」と言われる5度の大量絶滅の危機も助けて、人類の誕生まで見届ける。しかし、そこで力尽きて昇天していく。しかし、地球に降り立った「宇宙船」は、猫耳がとれて《太陽の塔》になり、今生きている猫たちは、その子孫かもしれないー。そうして、現在の人類や猫を接続したのである。

そして、GINZA SIXの吹き抜け空間には、《太陽の塔》に猫耳をつけたような宇宙船《LUCA号》から大量の「宇宙猫」が飛翔し、地球に降り立とうとする瞬間を「BIG CAT BANG」と命名し、巨大なインスタレーションとして展開した。「LUCA」とは、 Last Universal Common Ancestorの略であり、全生物の共通祖先のことを指している。つまり、「生命の種」を運ぶ船である。

中央には全長9メートルに及ぶバルーン製の宇宙船《LUCA号》とその上に乗る巨大な「宇宙猫」、さらに四方に飛び立つ「宇宙猫」と約400体に及ぶフィギュアが吊られ、いまだかつてない生命創生に至る瞬間を一大叙事詩として3次元空間に生み出したのだった。

「宇宙猫」が宇宙へ帰るもう一つのエンディングをクラウドファンディングで実現

この展示は、そのようなヤノベがつくり上げた空想のストーリーを知らなくても、多くの人たちの心を揺さぶることになった。《太陽の塔》に似た猫耳を持つ宇宙船に乗っている猫たちが、大量に吊り下げられている。まさに奇想天外ともいえる展示であるが、多くの観客は何か重要な意味が隠されているかもしれないと感じとった。そして、その設定を解説したアニメーション映像を見て、多くの猫愛好者も、自分たちの猫が使命を受けて生命を運んできた「宇宙猫」の子孫かもしれないと、思いを託すようになったりした。

「宇宙猫」を成層圏まで打ち上げる「RE:VERSE」プロジェクト
わずか1時間程度で限定100体の支援が集まった。

そのような熱狂の中、立ち上がったのが「宇宙猫」を宇宙に還す「RE:VERSE」プロジェクトである。もともと株式会社ゆめみが、ヤノベにNFTチップとフィギュアを組み合せた特注品を持ちかけたところから始まる。しかし、すでに三木道三とコラボレーションした絵本『SPACE SHIP'S CAT Zitto & Gatito』でNFTを使用した作品を制作しており、NFTをフィギュアに付与しただけでは、ファンに訴求するのは難しいと思われた。そこでヤノベは、自身が創作し、GINZA SIXで全面展開した《BIG CAT BANG》のストーリーに別の結末を与えることを提案する。

すなわち「宇宙猫」が力尽きて天に召されたのではなく、宇宙に還ったというエンディングである。それは宇宙を旅する時代の若者たちへ向けた《SHIP'S CAT》の世界観の実現でもある。しかし、実際どうやって宇宙に還すのか。それでヤノベは、近年、バルーンで宇宙に打ち上げて、映像を撮影するサービスがあることを知り、そこに《SHIP‘S CAT》のフィギュアを乗せて宇宙に還すことを思いつく。

つまり、NFT付きのフィギュアとして売り出すのではなく、「宇宙猫」を宇宙に還す「RE:VERSE」プロジェクトのためのクラウドファンディングのリターンとして、NFT付きのフィギュアを提供しようというわけである。株式会社ゆめみは、このプロジェクトが実現可能かリサーチし、茨城県にあるスペース・バルーン株式会社が、民間からの依頼でさまざまなものを気球で成層圏まで打ち上げて映像を撮影するというサービスを行っていることを知り依頼することになった。大気圏は、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏の4層に分かれているが、一般的には熱圏の途中で大気がほとんどなくなる100kmからを宇宙としている。気球によって、成層圏の約20㎞、つまり「宇宙の入り口」までいこうというわけである。

そして、困難な状況からの生存と再生を象徴する《SHIP’S CAT》を再び宇宙に送り出すことで、人類の再生と未来への希望を表現し、宇宙へ「RE:VERSE(新たな誕生)」させるものとして「RE:VERSE」プロジェクトと命名された。

クラウドファンディングとして企画された「RE:VERSE」プロジェクトは、《SHIP‘S CAT》のフィギュアをヤノベ自身が、特別仕様のコスモレッドに塗装し、直筆サインをして限定100体と製作し、返礼品として用意された。さらに、宇宙打ち上げの現地立ち会い参加、記念映像、サイン入り記念ポスター、特設サイトへの記名など豪華なもので2024年11月6日に告知され、13日から開始されたクラウドファンディングは、わずか1時間で売り切れる好評ぶりであった。

気候変動の試練を超えて帰還する「宇宙猫」の打ち上げ

ヤノベは2024年から2025年の年末年始にかけて100体のフィギュアを、特製のコスモレッド色に塗装し、さらにすべてにサインとイラストを描いた。クラウドファンディングの支援額は、1体66,000円であったが、これだけでも相当な価値があるだろう。言わばヤノベが手作りをした100体のエディション付きのマルチプル作品といってもよい。

しかし、昔から自身のプロジェクトのために、支援してくれる人たちに対して、対価以上のお礼をするのがヤノベの流儀である。その後、行われた《BIG CAT BANG》の巨大バルーンである《LUCA号》を、大阪の大型アート収蔵庫MASK[MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA] に移送するクラウドファンディングプロジェクト「LUCA : THE LANDING」に関しても、裁断された800枚分のバルーンの断片に対して、すべてイラスト入りのサインを描いている。

ヤノベケンジ「LUCA : THE LANDING」MASK [MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA] での展示風景 
提供:おおさか創造千島財団  撮影:仲川あい

そして、宇宙の打ち上げは、《BIG CAT BANG》の展示が終了した後の8月末に決行されることになった。毎年、春から秋にかけて、梅雨のシーズンを除いて、打ち上げが行われるという。しかし、8月末に実施予定であった打ち上げは、延期を余儀なくされる。理由は西風の勢いが強かったからである。

打ち上げは、日本の東端付近の霞ヶ浦のほとり、茨城県稲敷郡美浦村にある週末カフェから、フィギュアやカメラ、GPSの入ったペイロード(機体)を、ヘリウムガスを入れた気球を高度30km付近まで打ち上げる。その後、気球は気圧の低下によって破裂した後、パラシュートに切り替わり、海に着水する。そして、着水したペイロードをGPSで観測して、沖から漁船で回収しにいくことになる。しかし、沖合100kmでも回収に3時間、漁港に帰るのに3時間、合計6時間かかり、それ以上になると、遭難の危険性もあるため、海上保安庁から許可が下りない。 また、波も2m以上の高さになると、危険な上、ペイロードを見失うため回収できないのだ。

ヤノベはそのような詳細な背景は把握してなかったが、繰り返し延期の知らせが届くことになる。クラウドファンディングの返礼品として、打ち上げの現地立ち会いがついていたので、何度もサポーターに延期を告げることになった。多くの人が参加する都合上、土日に限定していた点も、打ち上げできる天候を逃していたところもあるかもしれない。

ヤノベケンジ「LUCA : THE LANDING」 トークイベントでの様子 撮影:広報課

しかし、すでに10月になり、ヤノベもサポーターも疑心暗鬼になってきていた。そこでMASKでのオープニングイベントに際して、サポーターを招待し、スペース・バルーン株式会社の青木隆義氏も呼んで、経緯を説明してもらうこととなった。青木によると、今年は気候変動による偏西風の蛇行の影響を受け、西風が収まらず、100kmを超えてしまうこと、毎日、天候予想と落下地点のシミュレーションを繰り返しているが、打ち上げられる日がないことなど、詳細な説明が行われた。そこで青木は10月末までには打ち上げられることを確約したのだった。

しかし、10月を過ぎても、11月を過ぎても打ち上げられない。ついに年を超えた時点で、4月から大阪中之島美術館で開催される展覧会「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。— 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ —」に帰還したフィギュアと映像を組み込んだ作品を出品する予定もあったため、ヤノベ自身が動き出す。そしてスペース・バルーン株式会社と調整しながら、平日でも少しでも状況がよければ、失敗してもかまわないので打ち上げることを条件に、日程を確定していった。そして、スペース・バルーン株式会社から2026年2月15日(日)の条件が最もよさそうである、という報告を受ける。ヤノベも茨城県の打ち上げ場に向かい、当日の状況を判断して、打ち上げが決行された。成層圏は、飛行機が飛び交う空域なので、ジェット気流によって、バルーンが大きく流される可能性があるが、日曜日で運行が少ないことも幸いした。

2体の「宇宙猫」を吊って、打ち上げられた気球。みるみるうちに上空に舞い上がる。

雲一つない空の下、ヤノベは、気球につられた2体の「宇宙猫」とカメラやバッテリー、GPSを入れたペイロードを持ち、その手が離される。一瞬にして地上からはるか宇宙へ向けて、気球が舞い上がる。その前に、GPSで確認しながら、落下地点を予測した青木が、漁船に乗って回収に向かう。当日も85km近くで着水したので、往復6時間近い船旅である。

沖合85km近くで着水しているペイロードを発見するが、2体の「宇宙猫」は、アクリル板から離脱していた。

そして約6時間後、青木が漁船から戻る。しかし、ペイロードの両端のアクリル板についていた2体の「宇宙猫」は失われていた。離陸か着陸のどこかで、接着していたアクリル版から外れ、海へ落ちてしまったのだろう。記録されていた映像を見ると、みるみるうちに離陸し、眼下に茨城県の大地と海が見える。そして、20kmに到達し、成層圏の中で、最初にイメージしたような、まさに宇宙にいるような「宇宙猫」の映像がしっかり撮れていた。しかし、「宇宙猫」はどこに行ったのか?

気球が割れた後、パラシュートが膨らむ衝撃で、2体の「宇宙猫」は飛ばされていったのだ。ヘルメットが曇って顔が判別できないことをさけるため、1体はヘルメットを外した「宇宙猫」で、もう1体はヘルメットをした「宇宙猫」だったが両方吹き飛んだ瞬間が映像にとらえられている。しかし、ヘルメットをしていない方は海に向かって落ちているが、ヘルメットをしている方は宇宙に向かって飛んでいるという、象徴的な映像になっていた。

記録されていた映像には、空中に飛び上がる「宇宙猫」と海に落下する「宇宙猫」が映されていた。

ヤノベはその映像を漁港で確認し、「宇宙猫」が地球に戻ってこなかったことは残念だったが、そもそも「宇宙猫」を宇宙に還すというコンセプトのプロジェクトだったため、宇宙に還ったというストーリーに沿っているかもしれないと、思い直した。そして、猫という存在が、そもそも気まぐれで、人間の思い通りにいかない神秘的な存在であることからも、新たなストーリーが生まれたのではないかと思い立つ。そして、もし「宇宙猫」が見つかったときには、その足跡がぴったりはまるように、アクリル板に「宇宙猫」がつけられていた形を描いて、照合できるようにしたのだった。

宇宙への帰還と宇宙への旅の始まり

ヤノベは帰阪する際、Xに打ち上げの成功の報告と同時に、猫が脱走したこと、もし沿岸部で発見した場合は、連絡がほしいことを訴え、神秘的で衝撃的な映像と、その顛末の面白さから多くの人の話題となった。

東京と京都で開催された報告会。京都会場

そして、翌週の週末に、東京と京都でサポーターに対する報告会を行う。ヤノベはこれまでの経緯を包み隠さず話し、初めて公開する記録映像を上映した。京都の報告会には、スペース・バルーン株式会社の青木も参加して対談形式で、プロジェクトを振り返った。

ヤノベは最初の頃は理由がわからず、詐欺かもしれないと疑心暗鬼に陥っていたが、直接やりとりをするようになって、本気で打ち上げる意志とノウハウがあることがわかってきたこと。スペース・バルーン株式会社が打ち上げるためには、かなり高い条件を課しており、そのために、ヤノベが成功よりも打ち上げることを優先することを伝えないと、冬を超えるまでプロジェクトが実施されなかったことなどを語った。

打ち上げまでの経緯と当日の状況を語るスペース・バルーン株式会社の青木隆義(左)とヤノベケンジ

青木は、打ち上げるだけではなく、鮮明な映像や運んだオブジェが帰還することを絶対条件としていたので、今までの天候では成功にはならないと判断していたこと。実際、昨年は1件も打ち上げられておらず、冬に打ち上げるのは初めてのことで、打ち上げる際も気流の乱れでかなり回転しており、必ずしもベストな映像ではないこと。さらに、運んだフィギュアが1体約300gと今までのものよりもはるかに大きく、重く、途中で落下したり、ネジなどで強く固定することで、胴体だけが吹き飛ぶような映像になったりすることを避けようとしたことなどが語られた。

 

数多くの技術者の尽力によって打ち上げられる気球

当日の打ち上げを判断と具体的な計画は、何年も宇宙の打ち上げに従事しているスペース・バルーン株式会社の狩野が担当、 低軌道衛星ネットワークの「Starlink(スターリンク)」や、低消費電力で長距離通信が可能な「LoRa(ローラ)」と通信し、高度や位置を予測する作業は、宇宙ビジネスのコンサルティングやエンジニアリングを行う専門集団である株式会社アークエッジ・スペースの松本健と藤野延竹が担当するなど、プロフェッショナルな専門家が参加している。強力なボンドで長時間かけて止めたが飛んで回収できなかったことについては残念であったが、ヤノベはここで終わるのではなく、そのような偶然性によってこのストーリーが終わらず、次のプロジェクトにつながっていくことを感謝していると述べた。

30人ほど集まったサポーターは、それらの話を熱心に聞き、質疑応答では、なぜフィギュアにGPSをつけなかったのかなどの質問が出たが、重量的にぎりぎりで、それ以上になると法律が変わってしまうなどの問題があり、確実に探査できる映像のユニットの方を優先したことなどの回答があった。

サポーターが持参した「宇宙猫」のフィギュア

サポーターはそれぞれ自身のフィギュアを持ってきており、それらを持ってきて日本各地の「飼い主」の持つ「宇宙猫」が一堂に集まる貴重な機会となった。サポーターの中には、すでに宇宙ビジネスを行っている人などもおり、宇宙への人々の関心が高まっていることをうかがわせた。ヤノベも、宇宙を旅する時代の若者たちへ向けた《SHIP’ S CAT》が、確実に現実化していることに手応えを感じた。ヤノベの語るように、このプロジェクトは完結しておらず、まだ始まりかもしれない。アーティストが宇宙プロジェクトに関わることは、今後ますます多くなっていくだろう。まさにそれを打ち上げる狼煙となったのではないか。
(文:三木 学)

 

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