2024年9月30日(月)〜10月4日(金)、自主活動グループ「Trunk」の関西国際空港(以下:KIX)とのコラボレーション企画の成果報告展が瓜生山キャンパスの人間館1階ラウンジで行われました。
学内は、名物授業「瓜生山ねぶた」の熱狂から落ち着きを取り戻す時期。使われなくなった廃材を利用して制作した飛行機のオブジェに興味を引かれ、展示物を詳しく見てみると……。
実はこちらのオブジェを制作したのは2023年度のマンデイプロジェクト(毎年4月〜9月にかけて行われる学科横断型の授業)に参加した学生たち。2023年度のテーマ『1mm』から発想し、飛行機の形の瓜生山ねぶたを制作したチームがKIXに「解体するのはもったいないので、ねぶたを置いてもらえませんか」とかけあったことが、プロジェクトのはじまりなのだそうです。なんて行動力……!
昨年度の瓜生山ねぶたの様子:未完の白い大器、輝く。 「瓜生山ねぶた2023」点灯式
結局、大きさや運送面の問題でねぶたは解体することになったものの、KIX職員の方から「せっかくだからコラボ企画をやりましょう」とご提案いただき、2024年9月14日(土)~16日(月)と21日(土)22(日)の5日間、KIXの展望ホールSky View4階にて共同企画が行われました。
イベントでは、使われなくなったもので制作した飛行機のオブジェの展示や、飛行機のまわりではたらくクルマをペーパークラフトで作るワークショップを実施。シルバーウィークの期間だったこともあり、展望ホールの来場者数はなんと9,000人! ワークショップには5日間で300人が参加し、大盛況でした。
今回の記事では、昨年度の9月から1年間、企画を引っ張ってきたリーダーの牧野莉玖さん(環境デザイン学科・2年)にお話をうかがいました。
子どもたちの憧れを廃材で
まず目を惹くのはやはり飛行機のオブジェです。タイトルは「Re:Fly」。芸大での制作やモノづくりの現場で出る廃材に着目し、その廃材を子どもたちの憧れである『飛行機』として昇華することでモノづくりの楽しさを感じてもらいたいと制作されました。
牧野さんは「空港に展示する企画を考えたとき、はじめは『旅の思い出を呼び起こす』をテーマにしていたんです。旅行の帰りに飛行機から降りて、思い出に浸る場所なのかなと。でも実際は、展望ホールは飛行機の滑走路や離着陸の様子が見られる場所なので、飛行機が好きで見にくる方が多いことを知って、『子どもの目をキラキラさせられるもの』を作ることにしました。プロジェクトが走り出したころは、企画をプレゼンしても、なかなか通らなかったんです。そのときにKIXの方に『本当に学生がやりたいことをやってほしい』と言っていただいたことで、大学でねぶたを展示しているときに訪れた小さな子どもが『この飛行機すごい!』と目を輝かせていた光景を思い出して。そこから、子どもの目をキラキラさせる企画をしたい、というプロジェクトの方向性が固まりました」と企画のテーマについて語ります。
オブジェには学内の有志プロジェクト「古着持ってけ屋」から提供された古着や、実際に学生が授業で制作を行うなかで出た廃材などが使われています。オブジェを展示する台の表面は滑走路の模様です。想像が膨らみますね。壁面にも、子どもの目線の高さに「探してみよう!」と書かれたパネルや、使用した廃材の紹介が貼られるなど、子どもの好奇心をくすぐる様々な仕掛けが施されています。
楽しみながら空港ではたらくクルマに親しむ
今回のプロジェクトには環境デザインやプロダクトデザイン、アートプロデュース、キャラクターデザインなど様々な学科から13人の学生が参加しました(7人は2024年4月から参加)。お互いの強みを生かし、オブジェ制作班、広報班、カフェ・ワークショップ班の3つの班にわかれて活動を進めたそう。
次はカフェ・ワークショップ班が取り組んだオリジナルドリンクステッカー制作とペーパークラフトワークショップを見ていきましょう。
展望ホール内のカフェで提供しているアイスドリンクのステッカーをデザインしました。デザインは名前と日付が書ける航空チケット、色鮮やかな空と飛行機、飛行機の窓から見える景色の3種類。空港や飛行機の中で感じるワクワクした気持ちをイラストで表現しました。
また、イベント期間中にカフェの看板をイベント特別仕様に変更。ポップでシンプルなイラストが目を惹きます。
こちらは、空港ではたらくクルマのペーパークラフトです。組み立てると空港で実際に働いている車のミニチュアができるペーパークラフトのキットを用意しました。組み立てる前の展開図に好きなイラストや模様を描くことで、オリジナルの模型が作れます。
ペーパークラフトの種類は4種類。燃料を飛行機のタンクに送るサービスカーや、旅客荷物を飛行機まで牽引するトーイングトラクターなど、普段目にすることのない空港で働く車もあります。モノづくりを楽しみながら、空港に親しむことのできるワークショップでした。様々な年代の子どもたちが参加し、保護者の方もペンをとって一緒に楽しんでいました。
ペーパークラフトは、展望ホール3階スカイミュージアム内の「72分の1のターミナルビル&旅客エプロン模型」で使用されているペーパークラフト模型をモデルに、学生がデザインしました。
ワークショップを実施する前には何度も試作したと牧野さんは言います。
「イベントの前には、京都芸術大学の中にある『認可保育園 こども芸術大学』の先生方や子どもたちに協力してもらい、ワークショップをお試しで行いました。子どもたちに『これは作るのが簡単で、こっちは難しいよ』と説明したら、みんな難易度が高いものを選ぶんですよ(笑) それぞれの車を組み立てる難易度を考えたり、改良したりするのに役に立ちました。園長先生にアドバイスをいただいてのりしろを大きくしたり、谷折り山折りをわかりやすくしたり。実際にワークショップをやってみて、予想以上に多くの方に来ていただけてすごくうれしかったです。子どもが『こんな風にできたよ』と見せにきてくれて、楽しんでもらえてよかったなと思いました」
社会の中で得られる学び
牧野さんはプロジェクトを振り返って、「KIXの方が『使える予算とか制作物の大きさとかは一旦考えなくていいよ』と言ってくださって、突拍子もないことを考えてた時期もあったんです。企画が進んでいくと現実的じゃないと諦めざるを得ないアイデアも、『この方向だったらできるよ、少し変えたらできるよ』と受け止めて返してくださって、それがすごく学びになりました。社会に出るとクリエイティブが制限されてしまうと思いがちですが、今回は逆に社会に出たからこそできることを教えていただきました。社会の中で得られる学びが新鮮で楽しかったです」と、KIXとのコラボレーション企画を行ったからこその学びがあったと話しました。
学生の熱意からはじまった今回のプロジェクト。学内で成果展が行われたことで、クリエイティブな刺激を受けた学生も多いのではないでしょうか。「Trunk」のみなさん、素敵なイベントをありがとうございました!
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。