REPORT2024.07.04

京都教育

日本の伝統文化を肌で体感 ― 京都文化日本語学校の「文化デー」2024

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  • 京都芸術大学 広報課

京都文化日本語学校では学期毎の行事として、年2回「文化デー」という体験授業を開催しています。 “言語を学習する”だけではなく、“言語で文化や歴史など様々なことを学習する”ことを教育理念とする京都文化日本語学校にとって、「文化デー」はまさにそれを特徴づけるイベントです。
昨年度からコロナ禍前のコース数に戻り、「清水焼、華道、友禅染、漆器、日本舞踊、和菓子、茶道、和太鼓、畳」といった充実した10つのラインナップで開催が実現しました。この日を待ちわびていた留学生たちにとって、今年はどんな一日になったのでしょうか?それぞれのクラスの様子を覗いてみました!

清水焼

清水焼のクラスでは、40名の学生が清水焼の湯呑絵付け体験と登り窯工房の見学をしました。

今回お世話になった藤平陶芸は古くから京都五条坂で陶器製造にたずさわっている老舗で、参加している学生も熱心に話を聞いていました。

今回の体験授業が初めてという学生もいれば、前回うまくできなかったリベンジで2回目の参加という学生もいました。

絵付けの説明を受け、まずは鉛筆で下絵を描きました。描く姿は真剣そのもの。引率いただいた先生から「こんな真剣な学生たちの表情は見たことがない…」と聞こえてきました。

下絵書きが終わると次は色付けにうつります。色付けには、呉須(ごす)という焼き物に色を付けるための顔料を使います。今は灰色ですが、焼くと鮮やかな青色になるとのこと。
細かい部分を書きたいけれど、筆ではうまく書けないという学生に藤平陶芸の方から「細かいところは削るといい」とアドバイス。

そして、完成した作品がこちら。

 

 

描いた絵について日本語でプレゼンをしていただきました。

 

 

描いたものは窯で焼き上げ、3週間後に完成するのだそう。完成がとても楽しみですね。
絵付け体験のあとは、登り窯工房に移動し、見学をしました。

工房見学では、登り窯の歴史や構造についても学びました。この登り窯は明治42年に建造されたもので、戦前から戦後にかけて多くの焼き物が製造されました。戦時下においては、金属製に代わる陶製の手榴弾なども生産されるなど、普段聞けない話を聞くことができました。
昭和43年の大気汚染防止法、昭和46年の京都府公害防止条例の施行により、今では実際に使われることはありませんが、藤平陶芸の登り窯は、貴重な文化遺産として保存されています。学生たちはこの貴重な体験を通じて、日本の伝統工芸の歴史の深さや美しい技術に触れ満足している様子でした。

漆器

漆器コースは西陣織会館で金箔貼りの体験をしました。

漆は1万年程前から存在し、日本では「漆部司」という漆塗りに関する事をつかさどる役所が律令制で制定されていたといわれています。約二千年の間に伝統工芸として磨かれた技術は、現在、半導体の技術として新しい時代を創っていっているそうです。
漆というと黒や赤の光沢がある塗料のイメージがあるかもしれませんが、接着剤として金や貝を貼り付ける役割があります。今回体験する「金箔貼り」の中でも一番有名な作品は、観光名所としても有名な鹿苑寺「金閣寺」だそうです。

みなさんがワークショップをする前に、手順の説明と実演をスタッフの方がしてくださいました。「金を漆に貼るだけ」と、まるで魔法のように一瞬で作品が完成しましたが、日本語学校のみなさんは上手にできるのでしょうか?!

まずは図面を選び、シールに転写していきます。あらかじめ自分で描いた図案を持ってきた学生さんも半数ほどいました。

次はカッターで図案をくりぬいていきます。複雑な図案を選んだ学生は「難しい…」とこぼしながらももくもくと作業を進めていました。約40名が同じ部屋の中で作業しているとは思えないほど静まり返り、みなさんが集中していることが伺えます。

形が決まったら漆器に張り付けて、上から漆を塗布していきます。

そしてお待ちかねの金箔貼り!鼻息で飛んでいってしまうほど薄くて軽い金箔は、指や金属で触るとくっついてしまうので、専用の竹箸を使用してつまんで漆の上に乗せます。スタッフの方からの手ほどきを受けながら皆さん上手に金を貼ることが出来ました。

失敗が許されない緊張の一瞬

刷毛で金を圧着しつつ、余分な金を払い落し、図案のシールをはがすと完成です。

集中力を切らさず、時間いっぱいまで粘って作品をつくる方が多く、妥協を許さずに理想の作品を追い求める姿は職人さながらでした。

1番早く作業を終えた台湾からの学生、ロ・ガクヨさんにお話しを聞いてみました。(写真左)
「漆器のコースを選んだのは、漆を初めて見たのと、楽しそうだと思ったからです。実際にやってみても楽しくて、出来上がりに満足しています。猫が好きなので、この図案を選びました。簡単な図案だったので一番早く完成できたのではないでしょうか。」

最後に自分が作った作品と一緒にみんなで記念撮影。いい作品ができましたね!ぜひおうちでたくさん使ってください。

日本舞踊

続いては日本舞踊体験のご紹介。日本舞踊体験には約20名の学生が参加を希望し、事前学習を受けてこの日を迎えました。基礎的な知識や動きや礼儀作法などをしっかりと学んでからの参加です。

大学の近く、銀閣寺へ向かう途中にある哲学の道を通ると、日本舞踊教室「ハウスデラッセ」にたどり着きます。さっそく中に入り、本格的な着物に着替えいざ、体験教室会場へ。会場は本当に素晴らしい環境で、みなさん驚いていました。

「こんな本格的なところで踊るの?」と驚き&心配になりつつも、みんなで「すごーい」と声を上げ、記念写真をパシャリ。着物もバシッと着こなし、みなさんとても素敵でした。

踊りの前に扇子を選びます。先生からは扇子の模様に込められた意味が説明され、みなさん興味深く聞いていました。

さっそく指導が始まります。
姿勢や目線など先生の具体的な指導。「左足は前を向き、右足の方向は後ろの部屋の角」などに従おうとするも、なかなか思い通りにいかない学生たち。それでも、先生の動きを真似しながら一生懸命に取り組みました。

予行練習を終えると、先生から「では曲に合わせて踊りましょう!」とのこと。なんども練習したとはいえ、「これでいきなり踊れる?」と驚きを隠せないでいましたが、先生の指導によってちゃんと様になっていました。

一通り踊り終えると、みなさんお互いを称えて拍手!

日本の伝統や文化に触れる素晴らしい時間となりました。自国にいた時から日本舞踊を知っていた学生も多く、自分自身が体験することになるとは思っていなかったため、貴重な機会だと感じていました!

毎年行われる「文化デー」は、京都文化日本語学校の大きな魅力の一つです。日本の伝統文化を体験することで、学生たちは日本語学習の枠を超え、日本の文化や歴史をより深く理解することができます。
特に京都ならではの文化や芸術に触れることができるのは、京都文化日本語学校ならではの特徴です。また、京都文化日本語学校は、京都芸術大学が近くにあり、芸術的な体験を得られる環境があります。
このような環境で学ぶことにより、学生たちは言語だけでなく、豊かな文化や芸術に触れる貴重な体験を得ることで、日本への興味をさらに深め、自国に戻った後も日本と外国をつなぐ架け橋的な存在となれる可能性を秘めています。
ぜひ京都文化日本語学校で学んだ学生が、この貴重な体験を通じて得た知識や感動を、世界中で広めてほしいと願っています。
日本語学習の枠を超えた豊かな文化体験が待っている京都文化日本語学校で、あなたも新しい一歩を踏み出してみませんか?皆様の学びたい気持ちを叶えられるよう全力でサポートいたします。

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