REPORT2022.10.25

デザイン教育

ゴミが商品に!?無印良品 京都山科・Good Job! センター香芝・プロダクトデザイン学科 - アップサイクルプロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

プロダクトデザイン学科と無印良品 京都山科との産学連携は2020年度に続き2回目。今回は店舗から出る廃棄物に注目し、社会福祉法人わたぼうしの会 Good Job! センター香芝ではたらく障害のある人たちが同センターの設備で制作できる、魅力的なアップサイクル商品の考案に挑戦しました。

Good Job! センター香芝は​、社会福祉法人わたぼうしの会が運営しており「誰もがはたらく喜びを実感でき、主体性をもって暮らせる社会へ」を理念い掲げ、障害のある人とともに、アート・デザイン・ビジネスの分野をこえ、社会に新しい仕事をつくりだすことを目指しています。障がいのある人が働く作業所で作れる商品はどのようなものなのか。学生たちは、実際にGood Job! センター香芝を訪れてリサーチを開始。障害のある人の特性を理解してどんな作業が得意なのかを調査し、運用可能な加工法を確認しました。

 

4月22日 Good Job! センター香芝を訪れてのリサーチ
Good Job! センター香芝のリサーチレポート


無印良品 京都山科は、“食”の大型専門売り場を備えた、地元の方々との協業をテーマとする無印良品の店舗。無印良品の考え方に共感してくださる企業と共に協業し山科地区を盛り上げることを目指しています。そんな無印良品 京都山科の考え方や思想を学んだ学生たちは、店舗でストックヤードを丁寧に観察。アップサイクル可能な素材の選定や送品の配送から陳列などの流れもリサーチを行いました。

 

5月6日 無印良品 京都山科のバックヤードで廃品素材の確認をする学生たち
無印良品 京都山科のリサーチレポート


学生は各自2~3点のアイデアをまとめ、中間検討会において無印良品 京都山科とGood Job! センター香芝のみなさまよりフィードバックをいただきました。そして、より洗練された商品へとブラッシュアップ。最終プレゼンでは、無印良品 京都山科において2年生4名と3年生12名の合わせて16人の学生がそれぞれのプロダクトを発表しました。

 


発表会の最後には、無印良品 京都山科やGood Job! センター香芝のみなさんの審査を経て各賞が発表されました。まず、無印良品 京都山科のみなさんが評価者となった「無印良品 最優秀賞」に宇野淑乃さん、「無印良品賞」に濱口夏実さんと和田千代子さんが選ばれました。

 

「無印良品 最優秀賞」受賞の宇野淑乃さん

私は元々アップサイクル商品について興味を持っていたのですが、今回の提案では"見たことがない加工方法を施して目新しい商品を作ろう"と試みました。例えば割れボタンシャツという作品のボタンの研磨方法では、"ペットボトルにボタンを入れて300回ほど振ると誰でも簡単に研磨できる"という提案をしました。講評者の方には「300回も振って加工方法を実験する粘り強さがデザイナーには必要だ」と課題に取り組む姿勢についてお褒めいただきました。他2商品についても、「新しい加工方法を見出すという独自のテーマに取り組んでいるのが良かった」と評価をいただきました。

本当に売り出すことができる商品としてはまだまだで、製品としての見た目やGoodJob!センター香芝で働く方々が施しやすい加工の仕方等を検討し直しブラッシュアップする必要性があると考えています。

身近な買い物をする場で発生する廃棄資材でも、デザインや思考を凝らせばすごく魅力的な商品を生み出すことができることを、他の学生の提案含めたくさん目の当たりにすることができ、とてもやりがいがあり楽しいプロジェクトでした。
 

  • 磁器のボタンシャツ
  • ゆらゆらプラ花ピアス
  • ぎゅっとプラピアス


「無印良品賞」受賞の濱口夏実さん

私が今回の課題で工夫した点は、同じ資材を使って展開したことと、作り方を同じにしたことです。店舗から出るダンボールが同じ作り方で違うものへの展開ができると良いのではないかと考えました。

講評では、主に治具(じぐ)作りと作ったものを提供する場についての言葉を頂きました。リサーチでGood Job! センター香芝さんへ行った際に、治具を取り入れることで同じ品質でものを作ることができる点や誰でも作れる点が魅力だと感じ、制作過程で治具を使うことを取り入れました。

アップサイクルしたものを生活者に届けるのではなく、店舗で利用することによってより商品が魅力的に見えるのではないかと思い、店舗で利用できるようにアップサイクルしました。

 

  •  
    ダンボールの名札
  • ダンボールの値札・POP
  • ダンボールの付箋ケース


「無印良品賞」受賞の和田千代子さん

ビニールを主に使った作品について、無印良品で売っていてもおかしくなさそうな見た目のデザインを意識して商品の提案をしました。まず、多く廃棄されている材料を使いたいという気持ちから、題材にビニールや緩衝材を選びましたが、その透明さや素材そのものの形状、アイロンで熱されて少しクシャッとなった独特の感じが混ざり合い、プロダクトとしての良さを演出していると思います。もう一つの作品は、パルプモールドという果物などを運ぶ紙でできた緩衝材から、便箋に生まれ変わり新たな役割を持つというストーリー性を含んでいます。自宅にある材料で紙漉きをしたのが大変でしたが、普通の紙とは違う魅力のある手触りになりました。

講評者のみなさまからは、全体的に完成度が高く問題の着眼点も良いとのコメントをいただきました。講評の際、作品を手に取ってじっくり見ていただけたのが嬉しかったです。「自分だったらどういう商品が欲しいか」を強く考えて取り組んだので、賞をいただくという形で結果を出せて良かったです。最終プレゼンでは、他の人の発表を聞いて特に加工方法に驚くばかりでした。自分の頭の中には無い発想だらけで面白かったです。

無印良品で出る廃材は、普段家でも捨てるようなビニールやダンボールが多くを占めています。今回、そんな廃材に改めて向き合い、普段思っているよりもっと色々な用途、物に生まれ変わることができる可能性を感じました。この課題を通して、材料を見る目が鍛えられたと感じています。この経験を今後の制作に活かしたいです。

 

  • ポリエステル ペンケース
  • ポリエステル サコッシュ
  • 果実のレターセット


次に、GoodJob!センター香芝のみなさんが評価者となった「GoodJob!センター香芝 最優秀賞」に塚本安紀さん、「GoodJob!センター香芝 」に河野明都さんと小田真菜美さんが選ばれました。


「GoodJob!センター香芝 最優秀賞」受賞の塚本安紀さん

「段ボール漉きはがき」と「張り子マラカスおもちゃ」については、Good Job! センター 香芝さんのもともとある技術をいかしつつ新たな素材やアイデアを加えることを意識して、新たな商品を生み出すようにしました。そして、無印良品さんの“「これがいい」ではなく「これでいい」”の考え方や、無印良品 京都山科さんをリサーチして感じ取った特徴や良さなどを提案する商品に取り入れようと考えました。

「段ボール漉きはがき」については無印良品さんからは無印良品らしさをうまく掴んでいると評価していただき、自分なりに工夫していたところを認められてとても嬉しかったです。

今回の産学連携授業は、廃材を使ってブランドのイメージを考えつつ商品を作る難しさを知ると同時に、廃材の良さを見出して新たな商品にアップサイクルすることの楽しさを感じることができ、いい経験になりました。

 

  • 段ボール漉きはがき
  • 張り子マラカスおもちゃ
  • フォーカスフォトスタンド


「GoodJob!センター香芝」受賞の河野明都さん

廃材であるダンボールをどう扱えば商品として成り立つのかが難しく、何度も試行錯誤を重ねました。講評者の方からは、まだまだ商品として製造工程を最適化できる部分があるのではないかとご助言をいただきました。その点を改善しつつ、どうしてこのプロダクトを作ろうと思ったのか、もっと明確なストーリーまでデザイン出来れば良かったなと感じています。今回の授業を通して得た「実際の商品を想定してデザインする」という視点を今後の自分のデザインにも活かしていきたいです。

 

  • 段ボールゴミ箱 曲面タイプ
  • 段ボールゴミ箱 平面タイプ
  • 鳥の巣小物置き


「GoodJob!センター香芝」受賞の小田真菜美さん

「GoodJob!センター香芝 」を受賞することができ、とても嬉しく思っています。
今回の課題はデジタルファブリケーションの機材なども使いつつも、基本的にGoodJob!センター香芝さんで障害のある人に手作りしてもらう想定だったため、3作品共通の自己テーマとして、作りやすさを重視して制作しました。
作業を簡略化、効率化するための道具や手順などを考えることに力を入れていたため、GoodJob!センター香芝さんから賞をいただけてとても嬉しかったです。

 

  • ミニダンボール
  • ReMUJI でつくる防災ずきん
  • PP バンドでつくるモザイクアートキット

 

指導教員の北條崇教授より

無印良品 京都山科との産学連携は2020年度に続き2回目となります。今回は、店舗からどうしても出る廃棄物に注目しました。
ものづくりに関するESG(環境/社会/ガバナンス)の取り組みとして廃棄物に関わる3R(削減(Reduce)、再利用(Reuse)、リサイクル(Recycle)が挙げられます。そのため川上である多くのメーカーや生産現場では活発に3R活動が行われています。ただ、実際の消費する環境においては、個人の意識による部分が多く、まだまだ発展の余地があるのが現状です。
今回の課題では、ものづくりの川下である店舗の事象にフォーカスをあて、循環のデザインを考えました。流通過程で生まれて店舗で廃棄となる梱包材や副資材、店頭商品の破損品、期間限定のPOP等、やむを得なく発生する廃棄物に対して、改めて資材という概念で見つめ直しました。
製造については、地元関西のGoodJob!センター香芝のデジタルファブリケーションと手仕事を組み合わせたノウハウと、利用メンバーのユーモアのある表現を活用した新しいものづくりで再生、加工する事で実現可能な商品を提案します。

 

 

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