REPORT2020.09.21

デザイン

くらしの道具 in MUJI YAMASHINA ― プロダクトデザインがもたらす「豊かなくらし」

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  • 京都芸術大学 広報課

多くのメーカーと産学連携授業を行っているプロダクトデザイン学科。今回は「株式会社良品計画 無印良品 京都山科」との連携授業の様子をお届けします。

9/18(金)無印良品 京都山科 にて行われたプレゼンテーションの様子。

テーマは「くらしの道具 in MUJI YAMASHINA」。

「無印良品 京都山科」では、日々のくらしの中でも「食」にフォーカスし、毎日来たくなる無印良品を目指しています。そのため、スーパーも運営するなど、他の店舗とは一線を画す店作りとなっています。

無印良品 京都山科店でのリサーチの様子。
B1Fにある「食」のエリア。京都近郊の生産者さんを中心につながる野菜や季節を味わう旬の果物などが揃います。

今回の課題は、“毎日来たくなる無印良品山科店” を丁寧にリサーチすることで、今までにはない「くらしの道具」を発見・デザインするというもの。

「くらしの道具」の定義は自由。箸やはさみ、弁当箱、ベッド、持ち帰り袋といったように多種多様に渡ります。大学生の等身大の視点から、仮説と検証を繰り返し、本当に役に立つくらしに必要な道具を考えていきました。

指導するのは、無印良品の企画デザイン担当デザイナーで本学非常勤教員を務める小山裕介先生と本学教授の北條崇先生。

連携授業は「WEB講義」と「対面の集中授業」の大きく2つのフェーズに分かれます。
6月から始まったWEB講義では、4つの課題に取り組むことで、無印良品のフィロソフィを理解したり、身の回りの問題を観察・推察し、ラフモック(実際の形やサイズ感などを確認するためのモデル)を制作。

My MUJI Good & Worst 10:無印を知る
知っているようで知らない無印良品をリサーチする課題。自分の好きなアイテムと嫌いなアイテムをそれぞれ10点ずつ発表。

Observation In My House:家のことを知る・アイデアの探し方
家庭内にある問題点を探し、改善案を提案。

My Found MUJI:自分やその周りのことを知る
永く、すたれることなく活かされてきた日用品を、世界中から探し出し、それを生活や文化、習慣の変化に合わせて少しだけ改良し、適性な価格で販売する活動「Found MUJI(見出されたMUJI)」。その概念を理解したうえでのデザイン提案。

Supermarket + MUJI:スーパーの現状を知る
近隣のスーパーマーケットでオブザベーションを行い現状の問題点を探し、改善案を提案する。もしくは「Found MUJI」の視点で商品を考える。

Observation In My House
My Found MUJI

8/31から始まった集中授業では、実際に京都山科店に赴き、従業員の方々にお話を聞くなど、“毎日来たくなる無印良品山科店” をテーマに、今までにはない「くらしの道具」を発見・デザインしていきます。

その後、プロトタイプ(試作)、モック制作、学内でのプレゼンテーションへと進みます。


そして9/18(金)、無印良品 京都山科店でのプレゼンテーションの日がやってきました。
会場となるのは、ワークショップやトークイベントを行う、地域の方々との交流の場「Open MUJI」。

無印良品 京都山科 1F にある「Open MUJI」
無印良品の方々へ、ひとり数分間のプレゼンテーション。

プレゼンに臨んだのは、プロダクトデザイン学科3年生の14名。
学内でのプレゼンでは、まだ企画がぼやけていたり、言葉に自信がなかったり、おぼつかない学生も多かったのですが、その後に何度もブラッシュアップを重ねたのでしょう。学生ならではの着眼点と軽やかな思考、コンセプトも明確で素晴らしいプレゼンの数々。審査員から「感動した」という意見もでるほど、皆さんともにクオリティが格段に上がっていました。

モックアップを見せながらのプレゼン。
審査員を努めた無印良品の方々。

京都山科店は、「食」の大型専門売場を備え、地域の方々との協業をテーマとしていることもあり、「食」に関わるプロダクト提案をする学生も多かったように感じます。


審査員による審査を経て、見事その名も「山科賞」に選ばれたのは、山田菜那さんによる提案「お皿に移しやすい形の惣菜トレー」。

スーパーなどで売られているお惣菜を「トレーのまま」食べるのではなく、お皿に移し替えて食べることで、豊かな食事の時間を過ごしてもらいたいと考えたそう。

山田菜那さんによる提案「お皿に移しやすい形の惣菜トレー」。

「食べるって、ただお腹を満たすということだけじゃないと思うんです。売られているトレーのまま食べるのではなくお皿に移すことで、そのままトレーで食べるときには感じられなかった、食材のおいしさを感じたり、作っている人の背景が見えたりとか、そういうことが食べることによって見えてくるんじゃないかなと。それが “食” という本当の価値の発見につながる。今まで見えていなかった部分が見えてくるのでは?と思いました」

底面が反っていることで、お皿に移しやすくなっている。汁気があるものは、左側のトレーのようにRが大きくついている。

今回の授業は「くらしの道具」というプロダクト開発でしたが、今まで見過ごしてきた「小さなこと」に気づくことが、その先にある “豊かなくらし” につながると山田さんは話します。


「無印良品って、くらしの中にある本質的な良さを伝えようとしているように私は思います。それはすぐにパッと気がつくことではないですし、私が今回考えた提案も、それほど大きなできごとではないと思うんです。
でも、目の前にある小さなこと、ごく普通の日常生活で気づいたそういう小さなことが、良いモノの価値を見出す “はじめの一歩” になって、それが “豊かなくらし” につながるんじゃないかなと感じました」


今回のテーマは「くらしの道具」でしたが、人は商品としてのモノが欲しいのではなく、そのモノによってもたらされる新たな価値の発見や “豊かなくらし” そのものを求めているのでは?と感じさせられるデザイン提案の数々でした。


プレゼンに臨んだ、プロダクトデザイン学科3年生 14名の皆さん。

無印良品は商品開発から店舗運営に至るまで高いフィロソフィを持つ会社で、常に「無印良品とはどうあるべきか?」を問い続けている会社です。学生達は、自分なりにその答えを模索しお店の方々にぶつけることが出来ました。
小山先生をはじめ、無印良品 京都山科のお店の皆さんが熱意をもって学生に接して頂き、その熱意が学生にも伝播して最後のプレゼンテーションはたいへん盛り上がりました。本当にありがとうございました。

プロダクトデザイン学科 教授 北條崇


今回のテーマである「くらしの道具」は、なるべく自分たちの等身大の視点で物事を考えてほしいとお願いしました。それは無印良品の商品開発やデザインの根底にある “生活者視点” に必ず繋がるからです。
本当に人が欲しい物は誰にもわかりません、それを探す行為としてオブザベーションやFOUNDといった手法をうまく活用することで、良いアイデアを発見できたと思います。展示で提案してくれたものは各々説得力を持っています。それは学生たちが本当に “自分事” として、物事を深掘りし考えた結果のデザインだからです。
特殊な環境の中、最後まで諦めずに課題に取り組んでくれた学生たちに賛辞を送りたいと思います。 そして大学関係者皆様、京都山科店の皆様、あたたかい目で応援していただき本当にありがとうございました。

株式会社良品計画 生活雑貨部 企画デザイン担当/ 非常勤講師 小山裕介

「くらしの道具展 in MUJI YAMASHINA」は、10/2(金)まで開催。学生の皆さんによる「くらしの道具」、そしてその先にある “豊かなくらし” のデザイン提案の数々。ぜひご覧ください。

くらしの道具展 in MUJI YAMASHINA

住所 京都府京都市山科区竹鼻竹ノ街道町91
ラクト山科ショッピングセンターB1~2F
期間 9/18(金)〜10/2(金)
営業時間 10:00~20:00

https://shop.muji.com/jp/kyoto-yamasina/

(撮影:高橋保世、広報課)

 

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