車、椅子、コップ、文房具、スマホ、玩具など「モノ」に特化したデザインのスペシャリストを育てるプロダクトデザイン学科では、さまざまな企業とのコラボレーションによる産学連携授業があります。
昨年、「株式会社良品計画 無印良品 京都山科」との連携授業の様子をお届けしましたが、今回は所謂「100円均一ショップ」で有名な株式会社大創産業との取り組みをご紹介します。
くらしの道具 in MUJI YAMASHINA ― プロダクトデザインがもたらす「豊かなくらし」
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/684
商品化を前提としたプロジェクト
株式会社大創産業とのプロジェクトには、2~3年生16人が参加。新商品の開発を学び、テーマに沿ってアイデアを提出、学内選考を経た71案について、2021年8月4日に学内で最終選考のプレゼンテーションを行いました。選ばれた作品は、同年12月からDAISO(ダイソー)にて販売予定です。株式会社大創産業では、2021年2月現在、世界25の国と地域に5,892店舗を構えています。全世界で販売される商品を開発するとは(商品にもよるとは思いますが)、とてもスケールの大きなプロジェクトです。
次代を担う学生への実践的な学びの機会の提供とダイソーの新商品の開発を目的にした産学連携授業は、2017年にも行われ、その際はなんと学生の提案した作品が「7点」も商品化。中でも「お助け本棚」は120万個を売り上げるヒット商品になりました。4つのパーツを組み合わせることで、前後あるいは上下の収納用本棚になるというもの。前後に収納する場合なら、奥の背表紙が見えて読みたい本が探しやすく、上下の場合なら、本棚上部の空きスペースを有効活用できるという商品です。
大創産業としてはバイヤーによる受け身の商品開発から、社内の企画力を上げて商品提案をできる体制にすることが課題となっており、その起爆剤としてプロジェクトを活用したいとのこと。
また、プロダクトデザイン学科の卒業生が2014年度に2名、2016年度に2名が就職しており、全員デザイナーや店舗責任者として活躍しています。そこで、卒業生のデザイナー3名がそれぞれチューターとして学生チームに伴走して、アイデアを一緒に商品化まで持っていく形でプロジェクトが推進されました。
今年のプロジェクトでは「新生活様式に活躍する新常識グッズ」、「知らない間にサスティナブル・減らすプロダクト」「形状の根本から考えるプロダクト」の3つのテーマが提示され、デザイン検討が始まりました。
加えて、担当の北條崇先生からは、「ダイソーらしさのある商品」であること、「製品としての魅力」「(ダイソーの)製品として成立している」ことの3つの観点が示されました。
まずは現状のリサーチです。4月、京都市内の店舗を見学をし、商品を売るための工夫やデザインがどのようになされているのかなど、社員として働く卒業生よりレクチャー。また、すでに販売されている既存商品の改良アイデアを出すために商品の観察を行いました。
既存商品の改良アイデア提案の後、商品化を目指したアイデア出し、ラピッドモデルの制作へと進みます。適宜オンラインで卒業生を中心とした大創産業の方々にフィードバックをいただきながら、最終モデルを検討し、プレゼンテーションに挑みました。
学生16人による71案が最終選考に
2021年8月4日、当初は株式会社大創産業東京本部を訪れての最終選考を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、学内で行うことになりました。その選考には、商品本部バイヤー、デザイン課社員などの他、なんと代表取締役社長の矢野靖二氏も参加。テーマに沿っているか、学生らしい視点があるか、既存品になくダイソーの商品として販売できるか、100円で販売可能か、などの視点で選考いただだきました。
途中、代表取締役社長の矢野靖二氏が「すごいな。参った。合格レベルが続出で、いまのところ不合格がない」と語るほど、洗練されたデザイン提案の数々に驚かされます。提案されたデザインが、そのままスッと商品化されるのは難しいかもしれませんが、学生ならではの視点のアイデアが端緒となり、商品化に生かされる案も数多くあるのでしょう。
選考に参加した3年生の林さんは「100円で販売するという大前提があり、コスト調整が大変でした。商品として流通されることを考えると製造のしやすさ等も視野に入れなければいけない点が難しかったです」。
同じく3年生の辻山さんも「普段の製作では “自分の作りたいもの” を作って提出していたのですが、“市場に出す” ことを前提として考えていくプロセスが良い経験になりました」と話しました。
「100円」で、お客様の想像を超える価値を提供するために
大創産業デザイン課の柳原樹氏は「100円という売価でお客様の想像を超える価値を提供するために、素材の量、パーツ数、着色等の製造工程や配送コストも含めた考え方を学生に伝えました。「どうしたいか?」「何をしたいか?」と学生にヒアリングしながら認識を合わせていくコミュニケーションの重要性を改めて学べるプロジェクトとなりました」と感想を述べました。
今後、大創産業社内で作品選考を重ね、試作、安全性の確認、マーケティングを行ったのち、全国のダイソーで順次販売予定だそう。
プロジェクトを担当したプロダクトデザイン学科教授の北條崇先生は、「本学は “芸術教育の社会実装” を掲げ多くの企業などと産学連携授業を取り組んでいます。その中でもこの度の授業は、商品化を前提としたデザイン提案が求められる難易度の高いものとなりました。学生達は今まで学んだ経験や知識をフルに活かして授業に取り組みましたが、本学卒業生の社員の方を中心に手厚いサポートがあったおかげで、高いモチベーションを維持して粘り強く授業を進めることができました。その結果、学生のフレッシュな視点を活かした具体的なデザイン提案ができました」と語りました。
デザインが商品に与える付加価値について再認識した今回のプロジェクト。果たして商品化され、店頭に並ぶ作品は出るのでしょうか。続報をお待ちください。
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