REPORT2022.03.08

プロデュース

スケートリンク「ビバスクエア京都」をみんなの“冬の遊び場”に。VIVAプロジェクト2021

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  • 京都芸術大学 広報課

スケートで滑るだけでなく、氷上(Rink)で人との繋がり(Link)を生み出したい、そんな想いを込めて京都芸術大学の学生が京都市内唯一の屋外型スケートリンク「ビバスクエア京都」をプロデュースしたプロジェクト。「Link on Rink」と題し、2021年12月から1月にかけて開催されたイベントは連日盛況で、本学学生同士、あるいは他大学の学生、そして入学予定の高校3年生などのさままざな繋がり(Link)が生まれていました。

VIVAプロジェクトとは

京都芸術大学では、企業や自治体が抱える課題をアート・デザインの力で解決するプログラムが実施されています。「クライアントのニーズをとらえ、課題を発見し、リサーチする」という一連の流れの中で、企画提案やものづくりを実践。多様なプロジェクトに学科や学年を越えたチームで取り組みます。このVIVAプロジェクトは、季節を問わず楽しめる京都市内唯一の屋外型スケートリンク「ビバスクエア京都」を、より一層と盛り上げていくということを目的としたプロジェクトです。京都芸術大学の1年生から3年生までの学生25人が参加。
クライアントであるビバスクエア京都の方々へのヒアリングや本プレゼンを経て、「ビバスクエア京都をたくさんの人が何度も遊びに来れるような場所」にするためのプロモーション内容として、イベントや動画、その他広報活動などの企画から運営までを学生が主体となって行いました。

https://vivaproject2021.wixsite.com/fuyunoasoviva

彼らを代表して、学生を補佐するLA(ラーニング・アシスタント)※の澤山圭佑さん、亀井燎さん、土倉知沙さんのほか、西村幸奈さん、堀江亜美佳さん、的場友希さん、隠居かりんさん、川口源太さんの8名と、プロジェクトを率いる森岡厚次先生、原田悠輔先生からもお話を伺いました。本文では、皆さんからのコメントをあわせて編集しています。

※LA(ラーニング・アシスタント):メンバーをサポートする学生。リアルワーク・プロジェクトの場合、過去にプロジェクトに参加したことのある学生がLAになり、参加した経験を生かしてプロジェクトを支える。

 

スケートで滑るだけでなく、氷上(Rink)で人との繋がり(Link)を生み出したい

― どうしてVIVAプロジェクトに応募を?

プロジェクトの中でもVIVAプロジェクトを選んだ理由としては、説明会を受けたときに「あ、これだったら自分でも参加できそう」と感じたことです。私は映画学科なので、機材を扱うライセンスとかを持っていなかったですし、インパクトなどの機材を使ったりするのはちょっと難しいかなと。VIVAは、そんな自分でもできることもいろいろとあって、自分でも活躍できそうな場所かなって思い、選びました。

私はプロジェクトの内容がデザインだけじゃなく「企画」もできるということ、「コトづくり」ができることにすごく興味があって参加しました。情報デザイン学科なので、企画と情報を集めてリサーチして企画を作ったり、それに合う誌面をデザインしたりっていう学科の学びの内容ともすごく合っていたので、「ここしかない!」と思って選ばせてもらいました。

私は前期はどのプロジェクトにも参加していなかったのですが、同じ学科の友だちで前期のVIVAプロジェクトに参加している子がいて、とても楽しそうに活動している姿を見ていたんです。あと、プロジェクトの説明会の時に話をしていたLAさんたちがすごくかっこよく見えて「この人たちと一緒にプロジェクトをやりたいな」と思って選びました。

 

― テーマ「Link on Rink」に込めた想いは?


コロナ禍で「出会いや新たなつながり」が少なくなってしまっている学生が多いと感じていました。そこで、何かVIVAプロジェクトを通じて、他大学も含め、学生同士が交流できる場を用意することはできないだろうかと考え、提案することにしました。

今回は「フユノアソビバ(冬の遊び場)」と銘打ち、スケートを滑るだけではなく人とのつながりが生まれたり、その思い出をつくれるような場所としてVIVAスクエア京都を選んでほしい、みんなにとっての「冬の遊び場」になってほしいっていうような、そんな想いを「フユノアソビバ(冬の遊び場)」という言葉に込めました。

 

― イベント当日までのプロジェクトの進め方は?

当初の予定では、25名が4つの班に分かれて企画を練り、各班ごとにプレゼンし、いずれかひとつの案が採用され、それをベースに進めていく形でした。でも実際、それぞれの班のリサーチ状況などを見ていると、それぞれが尖ったコンテンツになっていたんです。そこで、ひとつの班を選ぶのではなく、各4班のコンテンツを集めて一つの「パッケージ」のような案にしてVIVAスクエア京都さんに提案させていただきました。オイシイとこ取りというか、それぞれの班が苦労しながら考えたアイデアをバランス良く盛り込んでいった形です。

案が決まったあとは、「イベント部門、動画部門、広報部門」の3部門に分かれてチーム編成を組みました。また、各部門もかなり細分化されていて、例えば「広報部門」ならWebサイト、SNS、デザインに分かれています。

現地でのシミュレーションの様子。

 

「モノ」ではなく、コミュニケーションを生み出す「コト」づくり

― 「コトづくり」が特徴とのことだったのですが、イベントの内容は?

「Link on Rink」のイベントではさまざまなゲームがあります。その内容は、何か「モノ」に頼るのではなくて、人との対話やコミュニケーションを通して楽しく遊べるゲームを中心に考えました。
例えば「コール・マイ・バースデイ」というゲームは、誕生日の早い順に参加者が1月から12月まで順番に並んでもらうというもの。シンプルですが、周りの参加者と「誕生日はいつ?」などと話をしないとゲームが成立しないので、会話になるきっかけになるんです。また、その他「相方みっけ」や「ぐるぐるリレー」など、ペアでゲームをクリアしていくゲームをしたのですが、いずれも参加者同士が親密になれるようなものを意識しています。

「コール・マイ・バースデイ」参加者が周りの人と話しながら、誕生日の早い順に並ぶゲーム。
「相方みっけ」ペアを作ってリンクの対岸に分かれ、「相方みっけ」という掛け声を発する間に少しずつ近づき合流するゲーム。
「ぐるぐるリレー」各チーム背の順に並び、背の高い人と背の低い人が端からペアを作ってリレーをするゲーム。

 

イベント当日は、スタッフはあくまでもサポートの立場で、参加者の皆さんたちの対話やコミュニケーションが円滑になるよう意識しました。滑るのが難しそうな人がいたらスタッフが助けるよりも他の参加者に「手伝ってあげてくださいますか」など、そういうことを心がけて運営できるように意識しました。

 

私はこれまでプロジェクトに参加したり、こういうスタッフをすることも初めてだったので、不安も多かったのですが、最初は全然滑れなかった参加者が「滑れるようになった!」と言って、楽しそうに帰ってもらえたのが、すごく嬉しかったです。

「コツを教えて貰って滑れるようになってよかった!」「初対面の人と喋れて楽しかったです!」
「久々に滑るので最初はできなかったけど滑れるようになってよかったです!」「緊張していたけど基礎から教えてもらえて楽しかったです!!」

 

― 「VIVAスクエア京都からは「プロモーション活動」に力を入れてほしいと依頼されたそうですね。

TwitterやInstagramなどのSNSを活用して、メンバーの紹介だったり、プロジェクトの「中身」を押し出していくような広報を心がけました。動画コンテンツも用意したのですが、動画では主に「スケートの楽しさ」を伝えることが目的で、YouTubeに1本、instagramのリールに1本公開しています。YouTubeの動画は「ポジティブへの変換」を意識したもの。スケートに行くのが嫌な人たちは、特に「転ぶこと」がネックになっているのではないかなと。そこで「転ぶ」っていうのをポジティブに変換しようと考え「転ぶことが楽しいんだよ」みたいな。「転んでも楽しいんだスケートって」という部分を伝えるために動画を制作しました。

Twitterでは特に来年入学予定の「0年生」に向けての情報発信を意識しました。入試に合格したあと、すぐに大学用のアカウントを作って同じ学科コースや先輩方と交流してる様子をよく見ていたんですね。そこで0年生にも参加してもらおうと働きかけたんです。結果、特に最終回では多くの0年生が参加してくれて、その点では成功したといえるかなと思っています。

 

2月にはTwitterで「技紹介の動画」も投稿。転び方や立方、止まり方など、スケートの基礎を紹介しています。

 

私はフライヤーという、宣伝のために使う小さいカードみたいなものを担当しました。それをメンバーたちが自分の友だちやクラスメイトに手渡しで配ったりすることで、VIVAプロジェクトの認知度がものすごく上がったなと感じています。私のクラスは恐らく全員フライヤー持ってるみたいなレベルで(笑)。そういう、情報を広めやすい広報ツールを用意することで、メンバーたちが直接動いて広報をすることに役立ち、その点はとても成功したなって感じています。

 

授業の課題とは違って、自分のためではなく完全に「人のためのデザイン」なんですね。ポスターやフライヤー、イベント内で使うネームカード、チームを分けるためのカードなど、その要素ごとに合わせたデザインを考えるっていうのがすごく難しいなと感じました。それぞれの媒体にはどんな情報が必要なのだろうかとか、どういうデザインがその媒体には合うのか考えるのがとても難しくもあり、すごく成長できた部分だなと感じました。

 

― プロジェクトを終えて、今の心境は?

私は人前に立つことが得意じゃなくて、今までプロジェクトなどの活動を避けてきていたんですけど、「こんな機会はもうない」と思って参加させていただきました。いろいろと自分から前に出るように意識して動いてみて、自分もスキルアップできたし、周りのみんなとひとつのことに向かって全力で活動していくことが、しんどいときもあったけれど、その楽しさを身に染みて体験できることができて、すごく良かったです。

LAの立場としてプロジェクトを振り返ると、各4班の企画案のいずれもVIVAスクエア京都さんから高評価をいただき、結果コンテンツを集めて一つの「パッケージ」するという、これまでにない企画提案になったわけです。それは、コロナ禍という社会状況を踏まえ、実施形態を検討し、メンバーたちがリサーチや現地での実験などを緻密に行って、時間を費やしてきた努力の賜物だと思うんです。初年度からVIVAプロジェクトに参加している一人としては、募る思いがありました。

メンバーたち、決して成功体験ばかりではなかったと思うんです。でも一生懸命に悩んで、もがいて話し合ってきた過程というのは、無駄な時間にならないですし、むしろそこで、どう感じてどう動いて考えていけるかが大事だと思うので、そういうところがメンバーの方たちにはうまく伝わっていたらいいなと思います。

 

― 指導教員の森岡厚次先生、原田悠輔先生より

原田悠輔先生:ものづくりではなく「コトづくり」というプロジェクト。作り終わって、完成して終わりではないんですね。だからLAやメンバーの学生たちはずっと「これが果たして成功なのか?正解なのか?」という不安をずっと背負ってたっていうのはと思います。また、動員の目標も「1,000人」と据えていて、数字を到達できるかどうか、動画再生回数が増えるかいう不安。それを踏ん張って、頑張って踏みしめながら一歩一歩進んできた彼らは、明らかに顔つきが変わるくらい成長してるなと、近くで見ていて感じました。


森岡厚次先生:「イベントの成功の先に何があるのか」が各々見えてきたというのは、非常に大きかったかなと感じます。クライアントが求めてる大きな目標に対してそれぞれが自分自身の役割をしっかりと理解しながら、自分なりのやり方でアプローチして、それが大きな成功に結びつくっていうような。このような実践的な学びは、きっと後々社会でどのように使っていけるのだろうかと、プロジェクトを通して学べたのではないかなと思ってます。
ひとつのプロジェクトを様々な部門に分かれて進めていたわけですが、完全に別れているわけじゃない。それぞれが互いに助け合いながら、いろいろな部門にちょっとずつ関わりながら一つのVIVAプロジェクトを作り出すことができたように感じます。SNSはSNSの苦労があるし、動画作るには動画の苦労があるし、イベントをまわすにはまわす苦労があるし。そしてそれらを束ねるために動くLAさんの苦労もあるし、それぞれの苦労があるんですよね。学生たちがそれぞれの苦労を分かち合い、助け合う姿、その頑張りを噛み締めながら眺めていました。ぜひ次のステップに役立ててほしいなと思いますし、学科での学びとプロジェクトでの学びとをうまくつなげていくことができれば、自分たちの学んだことが本当に社会で役に立つと実感できる時が来るんじゃないかなと思います。

VIVAプロジェクト 2021

アイススケートリンク「VIVAスクエア京都」を企画・製作等で盛り上げていくリアルワークプロジェクト。

https://vivaproject2021.wixsite.com/fuyunoasoviva

 

 

 

 

 

 

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