REPORT2021.11.24

デザイン

情報デザイン学科の学生たちが農林水産省主催イベントに登壇!― 「食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT FES.」

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  • 京都芸術大学 広報課

農林水産省が主催し、日本の食が抱える課題や目指す未来について考えるきっかけとなるイベント「食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT FES.」が、東京・六本木ヒルズアリーナにて10/29(金)30(土)の2日間開催され、情報デザイン学科の学生たちが招待されました。授業課題として取り組んだ「賞味期限2050 食とデザイン展 @六本木」が展示されるとともに、トークセッションにも登壇。その様子が生中継されました。

「食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT FES.」とは、持続的な食料の確保が世界的な共通課題となる中、農林漁業者や食品事業者と消費者が出会い、収穫の秋を楽しみながら、日本の食について一緒に考えようという企画。未来を担う大学生たちと食や農に関わるさまざまな立場の人が意見交換するトークセッションや、展示・体験ブース、農産物や加工品を購入できるマーケットも出店されていました。

https://nippon-food-shift.maff.go.jp/fes/

 

会場となった東京・六本木ヒルズアリーナ


キックオフトークでは、南海キャンディーズの山里亮太さんや “なつみかん” の愛称で知られ、TikTokで200万人フォロワーを持つ東菜摘さんらが登壇し、有機農業や循環型農業といった、これからの日本の農業についてパネリストたちと話し合いました。

 

情報デザイン学科の学生たちによる「賞味期限2050 食とデザイン展 @六本木」


情報デザイン学科の学生たちは「賞味期限2050 食とデザイン展 @六本木」を会場内に展示。こちらは元々3年生の授業課題で、7月に学内でも展示されていたものです。食料難に陥る未来を見据え「私たち」がどう行動すべきか、考えるきっかけとなることを目的とした課題。学内での展示後、さらにブラッシュアップしたものを学園祭の作品展でも展示しました。


私たちに与えられた「賞味期限2050」 ― 情報デザイン学科 食とデザイン展2021
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/861

 

こうした取り組みが、農林水産省が今年から初めた「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」につながるものと評価され、本学は10/27(水)に近畿農政局と包括的連携協力に関する協定を締結しました。相互の人的・知的交流によって、広範囲な教育・研究面の向上や、食・農業に関する理解と発信、地域社会への貢献を目的とした包括的な連携協力協定です。全国の農政局で芸術大学と連携協定を締結するのは初めてのことになります。

協定書を持つ、近畿農政局の大坪正人局長と本学の吉川左紀子学長。


近畿農政局の大坪正人局長は「『賞味期限2050』を拝見させていただき、食に係るさまざまな分野をテーマに、学生が生産者などへの取材を行った上で、食や農業に関する課題や解決方法など自ら考え制作されておられ、まさにニッポンフードシフトの運動につながるものであると感じました」と述べ、その意義について「『賞味期限2050』で行われた展示のように、若い世代を中心に幅広い方々が “食” を考えて行動するきっかけになるなど、新たな展開が期待されます」と挨拶されました。

 

そして10月に招待された農林水産省主催「食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT FES.」では、『賞味期限2050』の展示に加え、これからの未来を担う大学生たちと食や農に関わる様々な立場の方が意見を交わす「トークセクション」に学生たちが登壇。『賞味期限2050』の発表を行うとともに、学生を中心としたZ世代コミュニティ「チームdot」の方たちとのクロストークを行い、その様子がYouTubeでライブ配信されました。

 

 

リーダーの2名のほかは、Zoomで参加。
六本木ヒルズで発表をしたリーダーの松田優多さんと山下珠希さん。


学生たちは「農地・漁業・畜産・娯楽・食卓」の5つのチームに分かれ、それぞれの “期限” について取り組みました。では、各チームの展示の様子をご紹介します。


農地の期限


約60年間で四国に匹敵する面積(18,800㎡)の耕作放棄地が生まれたのだそう。農地減少の影響は、野菜の高騰などの「食」だけにとどまらず、水質や大気汚染、洪水位の危険性、気温の上昇、生態系の変化など、私たちの生活を取り巻く、さまざまなものに及ぶと言います。

そこで提案するのは「農地バンク(農地中間管理機構)」。農地を借りたい人と貸したい人を仲介する公的機関です。農業からのリタイヤや分散した農地をまとめたいとき、新規に農地を借りたいときなど、農地を借り受け、貸し付ける仲介をする機構です。

(担当:加藤紗貴子、阪上可弥乃、鍋嶋優美、日隈美穂、前田千桜子)

 

 

漁業の期限


日本の漁獲量は最盛期だった1984年に比べ、2019年には約1/3にまで減少しています。その要因は「蘭乱獲」や「地球温暖化」など。一人あたりの魚の年間消費量は、ここ30年間で「-16.3kg」と減少傾向にあります。若い人を中心としたアンケートでは「扱いにくそう」「レパートリーが少ない」「保存がきかない」などの理由から買わなくなっているのだそう。また、例えば回転寿司の人気のネタ上位5位のうち8割は外国産であることが示すとおり、多くの魚を輸入に頼っているのだと言います。

国産魚を食べることで、長期的な日本の漁業の活性化を図るため、「食べない」をデザインで解決する提案をしました。「ごはんの肴」は、SNS世代の若者をターゲットにした、国産魚を手軽に食べるための真空パックキット。「手軽さ」や「インパクト」が重視される現代に合わせたもので、国産魚をより身近なものにし普及を目指すというもの。小分けされた真空パックで無駄がなく、裏側には漁師秘伝レシピが掲載されています。

(担当:笠置七都望、久松亜咲季、深山海音、松田優多、光岡怜伊子)

 

 

畜産の期限


世界人口の増加と比例した食肉の需要の高まりとその影響への問題提起。地球が持つ水資源のうち畜産には約27%使用されるなど、未来の水不足などにも影響があるのだそう。また、諸説ありますが、畜産による地球温暖化への影響や森林破壊などにも影響があります。

そこで「ソイミート」など植物性食品を中心とした、より持続可能性のある消費スタイルを提案しました。

(担当:沖綾乃、笠原美由、城臺茉莉子、鈴木優芽、山下珠希)

 

 

娯楽の期限


「赤いリンゴが美味しい」と思ってしまいがちですが、色むらのない真っ赤なリンゴを生産するには、落下防止や袋掛けなどのさまざまな手間と努力が必要なのだそう。手間がかかることもあり、全国のリンゴ栽培農家も減少傾向にあります。そのような、農家を追い込む「美しさ」の需要への問題。「美しさ」ではなく、食べられることに意味を感じなければならない、という問題提起です。

(担当:上田ちひろ、小谷仁美、竹原空、三橋美紀)

 

 

食卓の期限


現在、日本の食料自給率は約38%で、約62%を輸入に頼っています。高齢化によって国内の生産量が低下すると推測される2050年、世界では人口が増加し、輸入が困難になる可能性があります。結果、日本の食が効率化され、手軽な完全栄養食に依存する生活になるのでは?と言います。

「料理をする・食卓を囲む・食事を楽しむ」ことが社会を生きる人間の基礎となるとし、一食でもみんなで食卓を囲みたくなる2つのプロダクトを提案しました。

「長すぎるあ〜ん箸」は、料理を取り分ける際に使用。向かいに座る人に対して「あ〜ん」できる箸です。
「いただきますライト」は、食卓を囲み「いただきます」の合図で頭上のライトが料理が美味しく見えるいろに調光されるというもの。

 

(担当:永坂紀子、平田香穂、眞弓藍子、山本来夢)

 

 

六本木ヒルズヒルズアリーナの会場では、リーダーの松田優多さんと山下珠希さんが登壇し、他のメンバーは、京都からZoomを使ってプレゼンに参加。冒頭、京都にいる学生たちの音声が聞こえないなどのトラブルがあったものの、会場の2人がとても落ち着いて対応していたのが印象的でした。

「プレゼンを終えて、何よりも『一安心』という感じです。生中継ということもあって、始まる前からずっと緊張していました。でも、打ち合わせも事前にしっかりしていましたし、できることはやって臨んだつもりです」。

事前打ち合わせの様子。


「普段の授業でのプレゼンは、先生や同じ学生が相手。やっぱり大勢の人が見守るステージの上で照明を浴びて、しかも生中継されているとなると違いますね。とても貴重な経験になりました。会場での展示も美しくできていましたし、学内での展示は外部の方々に見ていただくことができなかったので、今回いろいろな人にみていただけてよかったです。感想が楽しみです」。

 

今回、情報デザイン学科による授業課題は、研究の軸を “realise &design” に据えた「C領域」のもの。課題解決のための提案というよりも、むしろ、既に見えている未来に対して「私たち」がどう考え、どう動くか、“スペキュラティブ” な問題提起を行うという趣旨です。『賞味期限2050』は2050年の「食」をテーマにしていましたが、現実世界(あるいは未来)に存在するさまざまな課題に向き合い、自分自身とデザインの可能性を模索しています。

「賞味期限2050」食とデザイン展(食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT FES.)

日程 2021年10月29日(金)〜10月30日(土)
場所 六本木ヒルズアリーナ
主催 農林水産省
参加学生 農地の期限
加藤紗貴子、阪上可弥乃、鍋嶋優美、日隈美穂、前田千桜子

漁業の期限
笠置七都望、久松亜咲季、深山海音、松田優多、光岡怜伊子

畜産の期限
沖綾乃、笠原美由、城臺茉莉子、鈴木優芽、山下珠希

娯楽の期限
上田ちひろ、小谷仁美、竹原空、三橋美紀

三食の期限
永坂紀子、平田香穂、眞弓藍子、山本来夢
教員 丸井栄二

https://nippon-food-shift.maff.go.jp/fes/

 

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