REPORT2021.07.13

デザイン

私たちに与えられた「賞味期限2050」 ― 情報デザイン学科 食とデザイン展2021

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  • 京都芸術大学 広報課

賞味期限2050

私たちは沢山ある食の選択肢から
好きに選ぶことのできる「美味しい」生活を送っている。
しかし、その「美味しく」食べられる期限は刻一刻と迫っている。
2050年、これは私たちに与えられた賞味期限だ。

京都・瓜生山キャンパス 望天館1Fに展示されている「食とデザイン展2021 ― 賞味期限2050」。吹き抜けの空間をうまく生かした展示空間に、その強いメッセージが目にとまります。

本展示は、情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコース「C領域※」の授業課題です。

※情報デザイン学科のビジュアルコミュニケーションデザインコースでは、応用・展開的なデザインスタディのフェーズとして、A領域「グラフィックス」、B領域「エンターテイン」、C領域「リアライズ」というテーマを軸に情報デザインを探究・実践する、3つの領域に分かれて学修します。


前期前半の課題では、「印刷の可能性※」をリサーチし、その成果を展示しましたが、前期後半の課題は「食」について。

※(参考)デジタルネイティブな私たちの考えをここに印す。― 情報デザイン学科「印」展
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/841


「食」について考えるきっかけとなったのは、指導担当教員の丸井栄二教授による“日本の新型コロナウイルスワクチンの接種率が低いのはなぜだろう?”という問いかけから。
国民のワクチンの接種率が低い理由の一つとして、日本では現時点で自国でワクチンを開発できておらず、海外からの輸入に頼るしかない状況にあることが挙げられます。このことから、自国でワクチンの生産・供給ができていないこの状況は、日本の食料状況と同じことが言えるのではないか。「ワクチン」と「食」は違った問題に見えて、実は同じ問題を抱えているのではないか、ということに気が付きました。

諸外国と比較しても食料自給率がかなり低い水準にある日本。人口増加により、2050年には世界人口が約100億人に到達します。日本が海外から食料を輸入することは困難になり、食料が満足に手に入らない未来は想像に難くありません。


C領域の研究の軸は、“realise &design”。課題解決のための提案というよりも、むしろ、既に見えている未来に対して「私たち」がどう考え、どう動くか、“スペキュラティブ”な問題提起を行うもの。
本展の目的は、食糧難に陥る未来を見据えて、これから直面する未来について発信し、そして「私たち」がどう行動すべきか考えるきっかけをつくることにあります。

今回の食とデザイン展2021のテーマ「賞味期限2050」には、私たちが生きているであろう、リアリティのある近未来として“2050年”を設定し、それを“賞味期限”として表現することで、差し迫る問題を自分ごと化して考えてもらおうとする意図があります。

 

今回の展示では、4~5人編成の5チームにランダムに分かれて、未来の「食」の可能性について考えました。畜産や農地、漁業、娯楽、食事など、アプローチはチームによって多種多様。5チームの成果をそれぞれ紹介します。
 


 

畜産の期限


2050年、肉の生産をし続けることで、温室効果ガスが全世界の半分を占めることになる。
地球温暖化を進行させないためにも私たちは、肉を生産せずソイミートを出荷することを提案する。

 

農地の期限


高い食料自給率を誇る農作物だが、その影には、後継者不足、農家の高齢化などの問題がある。
大量の耕作放棄地が生まれ、農地は減少している。
2050年、自らで食料を生産できる未来を残すために農地を守ることは、未来の食を守ることだ。

 

漁業の期限


長年に渡る魚の乱獲により、海から魚がいなくなることが懸念される2050年。
漁獲量の減少は養殖業を反映へと導いたが、エサに使用されているのもまた海の魚だ。
海の資源の回復を目的とし、私たちは、新しい試みで養殖業のメジャー化を図る。


 

娯楽の期限


娯楽として広まった果実は、より美しいものへとデザインされてきた。
しかし2050年には、農家の人で不足や消費量の減少により、一つのりんごにかけられる時間は短縮され、品種改良された黄色いりんごが出回るだろう。
私たちは「果実=美しい」という考えから脱却しなければならない。


 

三食の期限


私たちの食卓は様々な食料で成り立っている。
しかし、2050年にはその食料は減少し、一日一食の生活が当たり前になることが考えられる。
そこで、限られた食事をより幸せに過ごし、満足感を得るための食卓をデザインする。

食とデザイン展2021「賞味期限2050」

情報デザイン学科 3年生 C領域

期間 2021年7月7日(水)~7月21日(水)
※会期が延長になりました。
場所 望天館 吹き抜け

※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、一般の方は瓜生山キャンパスに入構いただくことができません。何卒ご了承ください。

 

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    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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